[イベントレポート]
パートナー戦略、ターゲット顧客、オープン性―Viyaがもたらす「SAS自身の変化」
2018年5月1日(火)五味 明子(ITジャーナリスト/IT Leaders編集委員)
「AIプラットフォーム『SAS Viya』はSASにとってパラダイムシフトとなる製品」――これは米SAS Instituteの年次コンファレンス「SAS Global Forum 2018」でユーザーセッションを担当したテプコシステムズの大友翔一氏の言だ。本稿では、Viyaが導くSASのパラダイムシフト=同社自身さまざまな変化について、数々の“証言”を集めて考察してみたい。
前稿ではSASの新世代AIプラットフォームViyaの特徴や最新動向を紹介した(参考記事:進化を続けるAIプラットフォーム「SAS Viya」、現時点でのユーザー評価は?)
ITベンダーの製品・サービスの中には、例えばSAPの「HANA」やAWSの「Redshift」のように、自社の戦略上大きなターニングポイントとなるものがある。その企業だけでなく、ユーザーやパートナー、競合をも巻き込みながら、その分野・業界を劇的に変えてしまうようなパワーを持つ製品・サービスが時折登場する。
SASにとってのViyaはまさしくそうした存在で、前稿で紹介したテプコシステムズ(東京電力ホールディングスグループ)の大友氏の言葉を借りれば、SASにパラダイムシフトをもたらす製品として進化を続けている。特に、パートナーアライアンスに象徴されるエコシステムに、その変化が顕著に表れている。本稿では、SAS Global Forum 2018でのパートナー取材を中心に、ViyaによるSASの変化の方向性を俯瞰してみたい。
SASがパートナーエコシステムに注力する理由
SAS Global Forumでは、2年前からコンファレンス本編の前日、全世界のSASパートナー企業を対象にしたパートナーフォーラムが開催されるようになったが、これがちょうどViyaのファーストリリースとほぼ時期を同じくする。
それまでのSASは基本的にダイレクトセールスが中心で、リセラーネットワークを形成してこなかった。「だが、今と、私がSASに入社した15年前とでは世界が変わっている。多様化した顧客の要望に応えていくためには、パートナーの力が欠かせないと我々は強く認識している」――SASのグロース&ビジネスオペレーション担当シニアバイスプレジデント、ラス・コブ(Russ Cobb)氏(写真1)は筆者との単独インタビューの席において、SASのパートナー戦略の変化についてこう語っている。コブ氏はSASのグローバルにおける戦略策定を統括し、パートナー戦略に関しても最終責任を負う人物だ。
現在、SASは、大きく3つのタイプにパートナーを分類している。アクセンチュア(Accenture)やデロイト(Deloitte)などに代表されるグローバルコンサルティングファーム/SIer、オラクル(Oracle)やテラデータ(Teradata)、SAPなどのテクノロジーパートナー、そしてリセラー/ディストリビューターの3タイプだ。
もっとも、リセラープログラムを提供し始めたのは3年ほど前で歴史は浅い。コブ氏が言うように、基本的にダイレクトセールスがこれまでのSASの“常識”で、リセラーを拡充する方向には向かなかった。その常識もViyaが変えつつあるわけだ。
前稿でも述べたように、SASの戦略から遠いところにあったオープンアーキテクチャをViyaは前面に掲げている。昨今の爆発的なAIブームの影響もあって、これまでSAS製品とは接点がなかったユーザーにまでリーチを伸ばし、ユースケースも広がりを見せている。
今までリーチできなかった顧客にアプローチするには、今までとは異なるセールスやサポート体制の構築が必要だ。逆に言えば、リセラーを含むパートナーの存在なしではViyaはその価値を正しく市場に届けることができないことになる。
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