社会を持続可能にするデジタルガバメントの実像(仮)

官公庁、地方自治体などパブリックセクター(公的機関)は今、大きな変革を迫られている。少子高齢化に伴う人口減少や気候変動といった要因により、既存の施策や社会制度、行政の仕組みなどの持続困難性が増しているからである。変革の鍵になるのはデジタルガバメントに向けた取り組みだが、それは一体、どのようなものか。デジタルガバメントのサポートに注力する富士通に実像を聞く。

Pickup

新しいシステムやサービスに適するアジャイル開発が
パブリックセクターに多くの利点をもたらす
ニーズや技術が目まぐるしく変わる中、要件を事前に決められないシステムが増えている。コロナ禍におけるパンデミック対応のためのシステムや、最近ではAIを活用するシステムがそれに当たる。そんなシステムの開発に適するのが重要な機能をまず実装し、利用しながら使い勝手を改善したり機能を追加したりする「アジャイル開発」だ。常にサービスの改良を求められるネット企業では主流のやり方だが、まだ事例の少ない官公庁などパブリックセクターにも多くのメリットがあるという。デジタル庁が進める「レジストリカタログ」構築に、アジャイル方式を採用した富士通の専門家に、実際のところを聞いた。……続きを読む
ITインフラの見直しと刷新は待ったなし
“クラウドスマート”を基準に最適解を導く
公共サービスの提供に欠かせない情報システムの持続可能性を担保するには、それらを稼働させるITインフラのあり方を見直す必要がある。日々の運用に要する負担や、保守・機能拡張にかかるコスト、セキュリティの強化、災害時のビジネス継続など、考慮すべき事柄は多い。クラウドコンピューティングを利用するのが現実解に思えるが、専門家はどう見ているか? 官民問わず数々のプロジェクトに関わってきた富士通の責任者に聞いた。「重要なのは状況に合った最適を探ること。目的に応じた適材適所がカギだ」という。……続きを読む
RPAやAIによる単純な自動化は無意味
人が介在してこそ成果を最大化できる
県庁や市役所などの役所の仕事には、紙が付いて回るのが通例だ。電子化も進んではいるが、法律で決まっているので紙の書類をなくせない側面もある。職員を増やせない一方で業務量が減らない中、そうした書類を整える仕事が重荷の1つになっており、効率化や自動化への期待は大きい。では、それを具現化するITやデジタル、もっと具体的に言えばRPA(Robotic Process Automation)やAI(人工知能)の活用はどうなっているのか。事情に詳しい富士通Japan株式会社の小林司氏に話を聞く。……続きを読む
公共サービス改革の“一丁目一番地”は
データマネジメントの高度化にあり
公共サービスをスマートかつ持続可能にするには、様々な情報システムで管理しているデータを連携したり、統合したりすることが欠かせない。そうしたデータの連携や処理は、今日のデジタル技術を活用すれば簡単にできると思われるが、実際には違う。パブリックセクターが扱う家族や個人、土地や家屋に関わるデータには、新旧の字体や外字に起因する問題、読み仮名やカタカナ表記に起因する問題などが複雑に絡み合い、事を難しくしているのだ。一方でデジタル庁や情報処理推進機構などが音頭をとって、解決の道筋を形成されつつあるという。データにまつわる最新事情を、前線に立つ富士通の専門家に話を聞いた。……続きを読む
健康・医療を持続可能かつスマートにする!
それに向け進むデジタル変革の実際とは?
市民や住民一人ひとりの健康を増進し、必要に応じて適切な医療を受けられるようサポートしていくことは、パブリックセクターの極めて重要な役割のはずである。しかし5年前や10年前と比べ、大幅に何かが良くなっているという印象はあまりない。保険証こそマイナンバーカードに切り替わりつつあるとはいえ、例えば薬を入手するために紙の処方箋を薬局に持参する必要があるし、この冬には一部でインフルエンザによる医療逼迫や医薬不足が生じた。デジタル技術で改善できるはずのことが、なぜ今もできていないのか?あるいはできているが、知られていないだけなのだろうか?現状と今後の展望を、ヘルスケア領域を担う富士通の専門家に話を聞いた。……続きを読む
見えないものは改善できない!
実世界の写像から課題解決に挑む「デジタルツイン」の価値
都市運営や交通管制、あるいは災害時の対応やパンデミックにおける医療サービスの適正化などに役立つとして期待が高まっている技術に、「デジタルツイン(デジタルの双子)」がある。うまく実装すれば、今どこで何が起きているのかを画面を見るだけで俯瞰的に把握でき、さらにこれから起こりそうな事象をシミュレーションしたり、ある手を打ったらどんな結果になるかを事前に検証したりすることもできるという。実際にデジタルツインとはどんなテクノロジーなのか、国内外でどのような実践例があるのだろうか。今回はデジタルツインについて、富士通の専門家に聞いた。……続きを読む
少子高齢化の加速が行政の機能不全を招く
2040年問題に向けて対応を急げ!
少子高齢化がグローバルに進行し、それが著しく加速しているのが日本だ。気候変動や自然災害の激甚化といった要因も絡み合う中で、行政サービスは幾多の課題に直面している。打開の方向性や糸口とは? デジタルテクノロジーが果たし得る役割とは? そこに想いを巡らせることは公的機関のみならず民間企業にも多くの示唆を与えてくれることだろう。富士通の新井伸介氏(パブリック事業本部 デジタルビジネスデザイン統括部長)に、テクノロジー企業としての展望や責務について話を伺った。……続きを読む

Focus

横浜国立大学と富士通、「富岳」で台風時の竜巻発生を高速に予測する気象シミュレーションに成功
横浜国立大学(本部:神奈川県横浜市)と富士通は2025年2月12日、台風に伴って発生する竜巻を実時間以上の速度で予測する気象シミュレーションに成功したと発表した。スーパーコンピュータ「富岳」で気象シミュレータシステムを実行し、台風全体や進路を含む広範囲な領域を100m以下の高解像度でシミュレートしている。2024年8月に発生した台風10号において……続きを読む
富士通、レガシーマイグレーション計画を生成AIで支援する「Fujitsu 資産分析・可視化サービス」
富士通は2025年2月4日、システム移行支援サービス「Fujitsu 資産分析・可視化サービス」を同年2月から提供すると発表した。老朽化したメインフレームのアプリケーション資産を分析・可視化し、全体像を把握することで最適なモダナイゼーション/移行計画の策定を支援する。ブラックボックス化しているアプリケーションを可視化し……続きを読む
2023年度の国内メタバース市場規模は前年比35.3%増、AIがコンテンツ開発を加速─矢野経済研究所
矢野経済研究所は2024年12月9日、日本国内のメタバース市場の概況と事業者の動向を発表した。2023年度の同市場規模は、前年度比35.3%増の1863億円だった。今後、XRデバイスの普及に加え、AIによるコンテンツ開発の効率化・高度化が進み、2028年度には市場規模が1兆8700億円に達すると予測している。……続きを読む
富士通、自治体の施策立案を支援するデジタルツイン技術「Policy Twin」を開発
富士通は2024年11月26日、自治体施策のデジタルツイン技術「Policy Twin」を発表した。自治体の施策をデジタルツイン上で再現し、施策による社会への影響をシミュレーションする。まずは、自治体の予防医療事業におけるサービス提供の効率化を支援する技術を、ポータルサイト「Fujitsu Research Portal」を通して同年12月6日に公開する。……続きを読む
最近の選挙から民主主義とデジタル社会を考察する
2024年10月~11月に行われた衆議院選挙、米大統領選挙、兵庫県知事選は、既存メディアやSNSの影響力が問われた選挙となった。いずれの選挙結果にもSNSをはじめとするインターネットの影響力が顕著に現れ、特に若年層は情報収集をネットに頼っている。……続きを読む
富士通、ITサービス提供におけるAWSとの協業を全業種に拡大
富士通は2024年12月2日、米Amazon Web Services(AWS)とのモビリティ、金融、小売分野における協業を全業種へと拡大すると発表した。各業種に向けたITシステムをAWS上で開発して提供する。システムエンジニアに対する人材育成も強化し、AWS認定資格保有数を3年間で現状の約7000件から1万2000件規模へと拡大する。……続きを読む
「地方創生」と言ったらこれしかない!COGに学ぶ「市民参加+オープンデータ」の活かし方
読者の皆さんは、「チャレンジ!!オープンガバナンス(COG)」をご存じだろうか。COGは、自治体と市民・学生が協力し、データに基づいて地域課題の解決に取り組むアイデアコンテストだ。2016年から毎年開催され、行政機関が気づかない課題を市民が発見し、ITを活用して解決する事例が多く生まれている。……続きを読む
ガバメントクラウドによる自治体の基幹システム標準化は2025年度に集中─矢野経済研究所
矢野経済研究所は2024年5月23日、国内の自治体向けIT製品・サービス市場の調査結果を発表した。2022年度は売上高ベースで前年度比4.4%増の7595億1000万円と推計している。新型コロナウイルス感染症に関連する給付金事業の需要が市場を押し上げたという。2023年度は横ばいで推移し、前年度比1.8%増の7733億7000万円と予測する。……続きを読む
富士通など産学9組織、ネットの偽情報を判定するシステムを2025年度末までに構築
富士通など産学9組織は2024年10月16日、インターネット上の情報の真偽を判別するシステム「偽情報対策プラットフォーム」の開発に着手したと発表した。2025年度末までに構築し、クラウドサービスとして提供する。真偽不明の情報をシステムに入力すると、判別結果を根拠の説明と共に提示する。富士通が開発プロジェクトのプライム事業者となり、再委託先となる企業・大学など富士通を含めた9組織で、2024年10月から共同研究開発を開始する。……続きを読む
国内IoT市場は2028年まで年8%増、建設、運輸、医療の需要が後押し─IDC
IDC Japanは2024年10月17日、国内IoT市場に関する予測のアップデートを発表した。2023年のユーザー支出額は実績ベースで6兆9189億円と算出。2023年~2028年は年間平均成長率(CAGR)8.0%で成長し、2028年には10兆1653億円に達すると予測している。……続きを読む
異例のスピードで立ち上げた「子ども食費支援事業」─大阪府が取り組む行政のデジタルシフト
物価高騰が長期化する中で、大阪府が2023年3月から実施している「大阪府子ども食費支援事業」。家計に占める食費の割合が大きい子育て世代に米や食料品を給付する、府民約139万人を対象にした生活支援施策だ。施策決定から数カ月でシステムを構築してスタートさせたスピード感は、府が見据えるスマートシティ構想やデジタルトランスフォーメーションにも生かしていく考えだ。同事業を主導した大阪府 スマートシティ戦略部 行政DX推進課……続きを読む
2023年国内ITサービス市場の売上は、富士通、NTTデータ、NEC、日立、IBM、アクセンチュアの順─IDC
IDC Japanは2024年7月12日、2023年の国内ITサービス市場ベンダー売上ランキングを発表した。同市場の売上額ベースの規模は、前年比成長率6.0%の6兆4608億円だった。ベンダー売上上位6社は富士通、NTTデータ、NEC、日立製作所、IBM、アクセンチュアの順。前年とベンダーの構成は同じだが、前年4位のNECと前年3位の日立の順位が入れ替わった。……続きを読む
成長を続ける国内IoT市場、人手不足を背景に物流、建設、医療で導入が進む─IDC
IDC Japanは2024年5月13日、国内IoT製品・サービス市場の予測を発表した。2023年のユーザー支出額の実績は6兆4672億円だった。2023年~2028年の年間平均成長率(CAGR)は8.0%で、2028年には9兆4818億円に達すると予測している。物流、建設、医療分野でIoTの導入が進むと見ている。……続きを読む
次代を担うデータ基盤「データスペース」とそのテクノロジー
ビジネスの高度化はもちろん、社会運営にとってもデータ活用の重要性は論を俟たない。一方で、データがサイロ化しシステムや組織内で留まっていては、その真価は発揮されない。データを十全に生かすには、信頼性を担保しながら組織や国境を越えて共有・連携するためのプラットフォーム、すなわち「データスペース」が必要となる。連載の第1回となる今回は、東京大学大学院 情報学環 教授/一般社団法人データ社会推進協議会 会長の越塚登氏が、……続きを読む
IT人材不足問題を考える
2019年に経済産業省が「IT人材需給に関する調査」を公開し、「2030年に最大約80万人のIT人材が不足する」と指摘したことをご記憶の方も多いかもしれません。当時は「いくら何でも80万人も不足するというのは大げさでは?」といった意見もあったと思いますが、近年、多くの企業がIT化やデジタルトランスフォーメーション(DX)に取り組み、ITやデジタルを担う人材の需要が高まったことで人材不足に拍車がかかっています。……続きを読む
「消滅可能性自治体」の報道に思うこと
「消滅可能性自治体」が744に上るという報道があった。1729ある自治体の43%にあたる。その定義は、20~39歳の女性(若年女性)が2050年までに半分以下に減る自治体である。若年女性が半分以下になると、出生率が上昇しても人口維持が困難になることが分かっているらしい。……続きを読む
トヨタシステムズ、基幹システムのアップデート作業に生成AIを活用、作業時間を半分に
トヨタシステムズ(本社:愛知県名古屋市)は2024年10月24日、基幹業務システムのアップデート作業を生成AIで自動化する検証を行い、人手による作業と比較して作業時間を50%削減したと発表した。富士通の「Fujitsu Kozuchi Generative AI」を用いて、OS/プログラミング言語の非互換情報の調査、非互換箇所の抽出、プログラム修正を生成AIで自動化。2025年1月から実業務への適用を開始する。……続きを読む
Ridgelinez、企業の「アジャイル成熟度」を診断するコンサルティングを提供
Ridgelinezは2024年11月6日、企業・組織の「アジャイル成熟度」を診断するコンサルティングサービスを提供開始した。アジャイル開発・組織変革の専門コンサルタントが、同社開発のアジャイルフレームワークと生成AI基盤を用いて企業のアジャイル成熟度を診断。アジャイル組織の変革に向けて、組織文化や既存プロセスの見直し、アーキテクチャ刷新といった具体的な施策を支援する。……続きを読む
富士通、日本語能力を高めたLLM「Takane」を提供開始、業種特化のカスタマイズが可能
富士通は2024年9月30日、大規模言語モデル(LLM)「Takane(高嶺:タカネ)」を、PaaS型のデータ活用基盤「Fujitsu Data Intelligence PaaS(DI PaaS)」を通じてグローバルに提供開始した。Takaneは、カナダCohereのLLM「Command R+」をベースに日本語処理を強化したものであり、日本語言語理解ベンチマーク「JGLUE」の結果も公表している。……続きを読む
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