[市場動向]
「地方創生」と言ったらこれしかない!COGに学ぶ「市民参加+オープンデータ」の活かし方
2024年11月22日(金)佃 均(ITジャーナリスト)
読者の皆さんは、「チャレンジ!!オープンガバナンス(COG)」をご存じだろうか。COGは、自治体と市民・学生が協力し、データに基づいて地域課題の解決に取り組むアイデアコンテストだ。2016年から毎年開催され、行政機関が気づかない課題を市民が発見し、ITを活用して解決する事例が多く生まれている。行政主導では、国策やインフラ整備が優先されがちだが、市民目線では身近な生活課題の解決が重要となる。COGのような市民参加型の取り組みこそ、真の地方創生を実現するカギとなるはずだ。
衆議院解散総選挙の結果は周知のとおりだが、選挙前、石破茂首相は「日本創生解散」、目玉の政策に「地方創生2.0」を掲げていた(画面1)。苦し紛れのネーミングは、図らずも地域利権への誘導を想起させる。上級国民の世襲温存と金権隠しと批判され、選挙区の立候補者たちが訴えていたのは県政レベルのバラマキと耳に心地よい美辞麗句ばかりだった──。
──それはともかく「地方創生と言うなら、これっきゃないでしょ!」と思い当たったのは「COG」だった。
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COG─データを基に地域課題を解決するアイデアコンテスト
COGとは、「チャレンジ!!オープンガバナンス」のこと。2024年の開催で第9回となる(画面2)。
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ウィキペディアの説明には、「自治体と市民や学生が協力し、データに基づいて地域の課題の解決に取り組むアイデアのコンテスト」とある。下記3組織の共同主催で毎年開催されている。
- 東京大学公共政策大学院 科学技術イノベーション政策における「政策のための科学」教育・研究ユニット(STIG)
- 東京大学ソーシャルICTグローバル・クリエイティブリーダー育成プログラム(GCL)
- 一般社団法人オープンガバナンスネットワーク(OGN)
2016年、東京大学公共政策大学院の「情報通信技術と行政」研究プログラムとしてスタートしたCOG。表1は、過去8回の参加団体数の推移だが、それぞれの後ろ側には地方公共団体や当該地域に根ざした企業がバックアップ役として控えている。
開催年 | 応募対象自治体数 | 応募のあった対象自治体数 | 応募対象地域課題 | 応募のあった対象地域課題 |
2016年 | 31 | 28 | 53 | 40 |
2017年 | 29 | 24 | 48 | 30 |
2018年 | 37 | 30 | 55 | 40 |
2019年 | 41 | 32 | 51 | 32 |
2020年 | 31 | 23 | 43 | 26 |
2021年 | 31 | 23 | 45 | 31 |
2022年 | 36 | 25 | 67 | 30 |
2023年 | 36 | 19 | 51 | 23 |
2024年 | 46 |
表1:COG参加団体数の推移。自治体連合の場合は参加自治体を個別に勘定(出典:ウィキペディア)
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写真1からわかるように、参加者は背広にネクタイのビジネスマンもいれば、ラフな装いのフリーランサーもいる。年代は10代から60代まで幅広い。最近は高校生チームの参加が増え、スタートアップ企業が関心を示すなど、将来が楽しみだ。
筆者がCOGを取材したのは2017年の第2回と記憶していたが、調べるとその前段があった。その前年、奥村裕一氏(一般社団法人オープンガバナンスネットワーク代表理事、当時は同大学院特任教授)(写真2)から案内いただいた「仮想政府セミナー」(東大本郷キャンパス情報学環・福武ホール)を聴講していた。どうやらそれが、翌年のCOGを取材するきっかけになったようだ。
第2回の印象が強かったのは、山口県宇部市の「多目的トイレ一発検索システム」を知ったからだ。これがCOG、データは市民や地域の企業が行政に参加する有力な手がかり、と素直に納得できた事例だった。併せて考えさせられたのは、「市民」という単語は「日々の暮らし」を言い換えたもの、ということだった。
資料「協業による『多目的トイレ一発検索アプリ』開発」(図1)から分かるように、最初は車椅子利用者の取り組みだった。それがきっかけとなって市民グループが市の障害福祉課に働きかけ、ICT推進課が協力、そこに地域の大学、工業高等専門学校、地域のIT企業などが参加した。
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車椅子を体験して「自分ごと」とし、市民や学生が公設トイレの情報を集め、それを市のICT推進課がデータ化した。最後にはトイレの使用状況を検知する専用センサーまで作った。文字通りの官・学・産協働プロジェクトだ。
その後、このシステムがヒントとなって、「みんなで作ろう! 多目的トイレマップ」「別府・大分バリアフリーツアーセンター」「みんなのトイレマップ」(石巻市)などが登場している。またNAVITIMEやGoogleマップもサポートするようになっている。データが地域の暮らしを変えた事例だ。
●Next:そう言えば「デジタル全総」の「コミュニティ2.0構想」があった!
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