[技術解説]
NRIの業界特化LLM、国交省のデータ自動構造化─国内組織が挑む生成AIのネクストレベル
2025年7月7日(月)五味 明子(ITジャーナリスト/IT Leaders編集委員)
アマゾン ウェブ サービス ジャパン(AWSジャパン)は、2023年度より国内企業の生成AI活用を支援する「AWSジャパン生成AI実用化推進プログラム」を実施している。その2024年度の成果発表会が2025年4月16日に行われ、「モデル開発者」と「モデル利用者」の2タイプのユーザーを支援する形で、150社以上の国内企業/組織が参加した。本稿では、説明会に登壇した野村総合研究所(NRI)と、国土交通省の取り組みの概要を紹介する。これらから、「生成AIの実用化」がどの段階にあるのかを考察してみたい。
2023年度実施の「AWS LLM開発支援プログラム」を発展させる形で2024年7月より開始した2024年度の「AWSジャパン生成AI実用化推進プログラム」。企業や研究機関、官公庁などから「AWSの生成AIを試してみたい、利用を始めたい」という参加者を募り、生成AIの導入、独自開発などに技術面、費用面での支援を行う研究開発サポートプログラムである(関連記事:日本発の生成AI/LLMでイノベーションを!─先進企業が「AWS LLM開発支援プログラム」の成果を発表)。
今回は、カスタムモデルの開発・改良に取り組む「モデル開発者」が約30社、生成AIでプロダクトのイノベーションに挑戦する「モデル利用者」が約120社、合計150社以上が参加した(図1)。

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野村総合研究所(NRI)
高精度かつコストを抑えた業界特化型LLM
AWS最上級パートナーの称号である「プレミアティアサービスパートナー」である野村総合研究所(NRI)。同社は2024年3月に国内初となる「Generative AI Competencyパートナー」にも選ばれており、生成AIに関しても卓越した専門スキルを有していることをグローバルに示している。
NRIは、今回のAWSジャパン生成AI実用化推進プログラムを活用し、GPT-4oなどの汎用モデルとは異なる、特定の業界・業務・タスクを理解した比較的低コストな特化型LLMの構築手法を開発、保険業界の営業コンプライアンスチェックに適用した結果を公開している(プレスリリース)。

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取り組みの内容は、営業担当者と顧客の会話から、担当者のNG発言を特化型LLMが検出するというもの。人力でチェックするとなると膨大な手間と時間がかかる保険営業会話の分析を、専門知識を基に構築された特化型LLMが高精度・低コストで実施する。

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●Next:用途特化なら80億パラメータの小規模モデルでも十分な性能を実現
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