企業でのAI利用が広がる中、その力を引き出すために管理すべきデータも急速に増加し続けている。2025年3月7日に開催された「データマネジメント2025」(主催:日本データマネジメント・コンソーシアム〈JDMC〉、インプレス)のセッションにピュア・ストレージ・ジャパンの正見卓司氏が登壇し、データが急増する中で企業が直面するストレージに関する課題と、その解消のアプローチなどを解説した。
提供:ピュア・ストレージ・ジャパン株式会社

データ急増により直面するストレージの課題とは
イノベーションの新たな原動力として、企業における今後のAI活用の広がりは確実な状況だ。各種調査でも、2028年におけるAI市場規模はグローバルで2024年比4倍以上の1万690億ドル、国内でも同2倍以上の2500億円にまで拡大すると予想されている。
その中にあって2030年までに10倍増加すると予測されているのが、企業が扱う非構造化データだ。「このデータの急増により、企業はデータの管理先であるストレージに関して、新たな課題に直面すると見込まれています。しかも厄介なことに、その対応は一筋縄ではいきません」と警鐘を鳴らすのは、ピュア・ストレージ・ジャパン マーケティング本部 フィールドマーケティングマネージャーの正見卓司氏だ。
課題の1つが、「データをどう保有するか」だ。これほどの大量データを管理可能なストレージは現時点で極めて限られ、導入に少なからぬコスト負担が求められる。その対応の“策”となるのがクラウドでのデータ管理だが、「大量データの長期保有では、オンプレミスの方が費用対効果の面で明らかに優れます。一度社外に切り出したデータのオンプレミス回帰からも、そのことが理解できるはずです」(正見氏)
オンプレミスでの管理では、エネルギー価格の高騰を背景に電力コストが上昇し続けているのも悩ましい。一方で、DXの加速を背景に、大規模データの管理でも“スピード感”が求められるようになっている。そこで不可欠な高度な運用技術を備えた人材獲得も、技術者不足の中にあっては至難の業だ。
分散・サイロ化したデータを集約する“切り札”
この状況下において、オンプレミスからマルチクラウドまでの多様な形態でストレージを提供するピュア・ストレージが「企業に提供できる価値」として提示しているのが次の3つだ。
①応答速度が1秒未満で、99.9999%の可用性を誇る「高速・高性能なデータ基盤」
②圧縮・重複排除技術と、「Evergreenプログラム」(後述)による「スケーラビリティとコスト効率」
③Data as a Productのためのデータ管理の自動化・統合化や、AI向けデータパイプラインの高速化などの「データを『製品』として扱う新しい視点」
ピュア・ストレージの非構造化データ・ストレージ「FlashBlade」は、それらを具現化したオンプレミス領域の代表的な製品だという(図1)。

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AI活用に向けた“壁”の1つがデータの準備だ。企業は現状、大量のデータを保有するが、それらは「データアナリティクス」「ストリーミング分析」「バックアップ」など、目的別に整備され、“サイロ化”したシステム、さらに、システム要件ごとに選定された“サイロ化”したストレージで管理されている。異なる場所で、種類も違うストレージにより管理されたデータの迅速な集約や準備は実際問題として極めて困難だ。
対して、複数ワークロードにおけるNFSやSMB、S3プロトコル全体での高スループット/パフォーマンスや機能性を実現したFlashBladeは、この状況を打開する“切り札”だという。
正見氏は、「FlashBladeは様々な要件に対応する超高速フラッシュストレージです。FlashBladeを、あらゆる社内システムに対して要件を満たすストレージサービスを提供する『データハブ』として活用すれば、社内に分散していたデータをパフォーマンスが担保された状態で1つにまとめられ、ひいては、データ準備の手間の大幅削減が可能です。併せて、ストレージ統合により、ストレージの運用効率も抜本的に高められます」と力を込める。
「Evergreen」で性能や機能を持続的に向上
ピュア・ストレージは、FlashBladeを含めた同社のストレージ製品の管理性を高めるユニークな保守サービス「Evergreenプログラム」も用意する。Evergreenプログラムでは、3年に1度の最新コントローラへの無停止での交換や、5年に1度の新規ブレードへの上位互換などを定額制で継続的に実施。煩雑なデータ移行が伴うリプレースを抜きにした、ストレージ性能や機能の持続的な向上を実現する。
「Evergreenプログラムを活用すれば、最新技術の継続的な取り込みにより、ストレージを常に新しい状態に保てます。新技術の登場により、既存技術の急速な陳腐化も将来的にあり得ますが、その際にも新技術による当社のストレージ製品への無停止でのデータ移行を保証しています」(正見氏)
性能や容量、可用性のSLA(Service Level Agreement:サービス品質保証)を設定したStaaS(ストレージ・アズ・ア・サービス)の「Evergreen//One」のほか、ストレージ容量の将来的な増加に対応したプランなども用意しているという。
セキュリティ面はどうか。情報処理推進機構(IPA)は2021年以降、5年連続で組織のセキュリティ脅威の最上位にランサムウェアによる被害を挙げている。これに対し、正見氏は「バックアップによる対策も完璧ではなく、ランサムウェア被害直前の状態に戻せた企業の割合は8割ほどです」と解説する。
この厄介なランサムウェアへの対応支援に向けピュア・ストレージが用意しているのが、オンラインストレージ上に暗号化できないスナップショットを作成する機能「SafeModeスナップショット」だ。たとえランサムウェアの侵入を許し管理者権限を奪われても、スナップショットの暗号化被害は食い止められる(図2)。

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「DirectFlash」が省電力と大量データ管理を実現
被害後は、ピュア・ストレージのサポートへ連絡し、2人以上のキー認証をクリア後、データ復旧を依頼することで、ピュア・ストレージが復旧作業を実施する。「当社は機能的にオールフラッシュ・ストレージの『お化け』とも呼べる製品を扱っていることもあり、作業は極めて迅速です」と正見氏は笑顔で語る。SafeModeスナップショットでは、最長400日分のバックアップデータを保管できるという。さらに、ピュア・ストレージが提供する管理ツールでは、重複排除によるデータ削減率をモニタリングし、その値の異常からランサムウェアをAIで検知し、アラートを通知する機能も用意されている。
電力効率に目を転じれば、ピュア・ストレージのストレージ・ユニット「DirectFlash」は、その集約率の高さから消費電力が他のストレージより格段に抑えられている。
「DirectFlashを搭載した当社製品の採用を通じ、最大消費電力を1万4500Wから2030Wにまで削減させた企業もあります(図3)。1モジュールあたり150TBのデータを格納でき、現時において10Uの筐体で19PBの管理が可能です」(正見氏)
AI活用に端を発する「データ急増」による多様な課題に対応に向け、ピュア・ストレージのFlashBladeの今後の利用拡大に間違いはなさそうだ。

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