生成AIの活用は、人間を支援する段階から、AIエージェントが自律的に業務を遂行する時代へと突入した。しかし、事業横断でのAI活用を試みる多くの企業が「AIが期待通りに動いてくれない」という壁に直面しているのが実情ではないか。AIエージェントが正しい判断を下すためには、マスターデータ管理やメタデータ管理によって裏打ちされた「Trusted Context(信頼できるコンテキスト)」の整備が不可欠だ。
2026年3月11日に開催された「データマネジメント2026」(主催:日本データマネジメント・コンソーシアム〈JDMC〉、インプレス)のセッションに、2025年にセールスフォースの事業部門となったインフォマティカの森本卓也氏が登壇し、AIエージェント時代に不可欠なデータマネジメントのグローバル標準について解説を行った。
提供:株式会社セールスフォース・ジャパン
AIのための「本気のデータマネジメント」が必要な時代に
株式会社セールスフォース・ジャパン インフォマティカ事業部 ソリューションエンジニアリング本部 エヴァンジェリスト&アカウントソリューションエンジニア 森本 卓也 氏講演の冒頭、森本氏は来場者に「皆さんの企業では、どれだけ本気でデータマネジメントに取り組んでいますか」と問いかけた。森本氏は、MITのレポートを引用し、95%の企業のAIパイロットが本番稼働前に失敗しているという事実を提示する。
「確かにChatGPTといった汎用AIを議事録作成などに利用する段階では、多くのユーザーがその恩恵を享受しているだろう。しかし、自社独自のデータを用いた業務活用、すなわち“企業のAI”としての本番化を試みた途端に、多くの企業が苦戦を強いられている」(森本氏)
その大きな原因は、データにある。AIのアウトプットの根幹をなすデータの信頼性が障壁となっている企業は57%を超えており、「データ品質」「セキュリティ」「ガバナンスの欠如」といった問題が企業のAI活用を阻害しているのだ(図1)。
図1:データの信頼性がAI成功の主な障壁となっている企業の割合は57%拡大画像表示
森本氏は、「AIエージェントは、“超”が付くほど優秀な新入社員といえる。だが、自社特有の製品在庫や顧客との過去の経緯といった『企業独自のデータ』を入社後に与えてあげなければ、求められる回答を提示してくれない」と強調する。
つまり、AIエージェントが活躍できるかどうかは、ビジネス活用のためのデータ環境がいかに最適にマネジメントされているかにかかっているのだ。
「これまでのデータマネジメントは、人間がデータをビジネスに活用するために必要な取り組みとして行われてきた。しかし、現在では、データマネジメントはAIエージェントを活躍させるためのものになっている。つまり、AIエージェントのために、本気のデータマネジメントをする時代が到来したのだ(図2)」(森本氏)
図2:AIエージェントを活躍させるためにデータマネジメントをする拡大画像表示
「信頼できるコンテキスト」がAIの知性を支える
AIエージェントを真にインテリジェンスな存在にするためには、より多くのデータを与えるだけでなく、「コンテキスト(文脈)」が必要となる(図3)。コンテキストとは、AIが瞬時に判断や回答生成を行うために必要な、あらゆる背景情報を意味するものだ。
図3:AIエージェントに必要な要素:信頼できるコンテキスト拡大画像表示
例えば営業支援AIの場合、CRMの顧客情報だけでなく、Webログや業界動向、ERPの最新在庫状況までが繋がっている必要がある。これらが芋づる式に連携することで、AIは「この顧客に関心があり、現在は余剰在庫があるため、特別価格で提案できる」といった自律的な判断を自ら下せるようになるからだ。
このように各システムが連携し意味のある線で関連付けられることで、必要なコンテキストが得られるようになり、ひいてはAIを効果的に利用可能となる。
信頼できるコンテキストを獲得するには、あらゆる企業システムを対象にしたデータマネジメントが必要だ。そのためには、データ活用の範囲を広げると同時に、データマネジメントの「密度」を高めていかなければならない。
表の横軸は「データ統合」「品質管理」「マスターデータ管理」、そして「データカタログ」などのデータマネジメントの「活動領域」を表したものである。そして縦軸は、属人的な管理から、全社標準化、そしてAIによる「自律化」へと至る「成熟度」と、それに必要なケーパビリティを示している(表1)。
表1:信頼できるコンテキストに必要なデータ管理の密度拡大画像表示
「もし、この表をチェックして、自社の取り組み状況が虫食い状態になっているのなら、信頼できるコンテキストを確保できない」と、森本氏は警鐘を鳴らす。
「また、管理対象を全社へと広げたとき、管理手法がアナログなままでは、運用は必ず破綻してしまう。管理コストを抑え、リスクを回避し、大規模なデータ活用を支えきるためには、『スケーラビリティ』の獲得が不可欠だ。企業のデータマネジメントの密度を、どこまで“色濃く”できるかが、信頼できるコンテキスト獲得の勝負の分かれ目となる」(森本氏)
信頼に値するコンテキストを生み出すための3つのバリューチェーン
森本氏は、信頼できるコンテキストを生み出すためのベストプラクティスとして、「解放」「信頼性の付加」「活用」の3フェーズからなるデータバリューチェーンを提示した(図4)。
図4:信頼できるコンテキストを生み出すデータバリューチェーン拡大画像表示
そして、これらを実現していくためのインフォマティカのソリューションについて紹介を行った。順を追って説明していこう。
フェーズ1:解放(Unlock)
これは、社内に散在するデータにAIが迅速にアクセスできるよう、接続性を確保する段階である。そのために、リアルタイムでのデータ連携やマルチクラウド横断のナレッジ統合を行うほか、さらにデータカタログ上でビジネス用語や計算ロジックなどの共通のセマンティックの「理解」を整えることによって、初めてデータを真の意味でAIに解放できるようになる(図5)。
図5:システムを横断するデータフローと透明性を解放拡大画像表示
これを実現するものとして、森本氏は、あらゆる企業データとシステムに接続可能なインフォマティカのデータ統合ソリューションを紹介した(図6)。
図6:あらゆるニーズに応えるデータ統合ソリューション拡大画像表示
フェーズ2:信頼性の付加(Trust)
これは、データを、正確で一貫性のある、安全性も担保した“唯一無二の真実”へと進化させる段階である(図7)。
図7:信頼できるデータに基づき確実な意思決定を支援拡大画像表示
ここで森本氏はインフォマティカの「データ品質マネジメント」や、重複を排除した唯一無二の情報源となる「ゴールデンレコード」を生成するための「マスターデータ管理(MDM)」等について紹介した(図8)。
図8:マルチドメイン対応マスターデータ管理(MDM)拡大画像表示
フェーズ3:活用(Activate)
そして、フェーズ3の段階で、整備された信頼性のあるデータを“活用”することにより、実際の価値に変換していく(図9)。
図9:データの活用を促進し、ビジネス成果を創出拡大画像表示
「インフォマティカが真実のデータを創り出した後、MuleSoftの『Agent Fabric』がAIエージェントを一元管理しオーケストレーションを促進する。さらに、セールスフォースの『Data 360』顧客を中心とした企業データの集合知を作成し、AIエージェントによる迅速な実行へ繋げる。これらのソリューションを組み合わせれば、データバリューチェーンの全ての活動を高いデータマネジメント密度で実現することができる。さらに、そのスコープをエンタープライズ規模に拡大し、真に企業が信頼できるコンテキストを生み出せるようになる(図10)」(森本氏)
図10:信頼できるコンテキスト拡大画像表示
講演の最後に森本氏は、改めて本セッションの要点として以下の3点を強調した(図11)。
- 全社の集合知として信頼できるコンテキストをゴールに見据える
- データマネジメントをエンタープライズ規模で展開する
- 信頼できるコンテキストから価値を創出するためにデータバリューチェーンを促進する
図11:AIエージェントのための本気のデータマネジメントを実践するために拡大画像表示
「AIエージェントという将来有望な新入社員は、すでに企業の門を叩いている。彼らをベテランのエキスパートへと成長させ、ビジネスに革新をもたらす存在にできるかどうかは、今日から取り組む本気のデータマネジメントにかかっている」と森本氏は訴え、セッションを閉幕した。
●お問い合わせ先

株式会社セールスフォース・ジャパン
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お問い合わせ:https://www.informatica.com/ja/contact-us.html
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