データマネジメントは「コスト」から「投資」へ、ROIの明確化と基盤の再構築が次なる焦点に:第3回
2026年6月1日(月)杉田 悟(IT Leaders編集部)
生成AIの爆発的な普及は、企業におけるデータの在り方を根本から変えようとしている。本連載の第1回では生成AI活用の進展と非構造化データ整備の重要性を、第2回では分散化するデータに対応するための次世代アーキテクチャの動向を解説してきた。しかし、いかに優れた技術や設計図があっても、それを支える「組織の実行力」と「継続的な投資」がなければ、データマネジメントは絵に描いた餅に終わってしまう。連載の締めくくりとなる第3回では、日本企業のデータマネジメントの取り組みが現在どの程度の習熟度にあり、どのような期待を背負って予算が投じられているのか。最新のアンケート結果から、その「投資」と「効果」の実態、そして未来への展望を見ていく。

取り組みが「十分」と言える企業は1割未満
データマネジメントの重要性が叫ばれて久しいが、生成AIの登場によってその機運はより一層高まっている。これまではIT部門の「守り」の業務と捉えられがちだったデータ整備が、今やビジネスの競争力を左右する「攻め」の基盤へと進化を遂げつつある。では、実際の現場において、その取り組みはどこまで浸透しているのだろうか。
まず、企業におけるデータマネジメントの全体的な取り組みの状況を見てみる。「十分に取り組めている」と回答した企業は7.5%に留まる一方、「ある程度は取り組めている」は56.1%に達した(図1)。6割以上の企業が、何らかの形でデータマネジメントの実践に踏み出していることが分かる。
図1:データマネジメントの取組状況(出典:インプレス『生成AI時代のデータマネジメント調査報告書2026』)拡大画像表示
しかし、第1回・第2回で見てきたとおり、非構造化データの整備やデータアーキテクチャの策定といった各論では依然として課題が多い。土台作りは進んでいるものの、ビジネス価値に直結するレベルで「十分」と胸を張れる企業はまだ一握りであるのが現実だ。
期待する効果は「効率化」から「意思決定」「AI活用」へ拡大
企業がデータマネジメントに何を期待しているのか、その目的の変化に注目してみる。2025年調査では「業務の効率化・生産性の向上」(75.5%)が圧倒的1位であり、前年(68.4%)からさらにその期待値が高まっている。
特筆すべきは、2024年調査では項目になかった「AI活用の推進」が30.2%を占め、さらに「データドリブン経営の実践」も27.3%から35.9%へと大きく伸びている点だ(図2)。単なる守りの「コスト削減(効率化)」だけでなく、AI活用や迅速な経営判断といった「攻め」の文脈でデータマネジメントが捉え直されていることが鮮明になっている。
図2:データマネジメントに期待する効果(出典:インプレス『生成AI時代のデータマネジメント調査報告書2026』)拡大画像表示
IT予算の「10%以上」を割く層が増加
投資規模についても変化の兆しがある。IT投資全体に占めるデータマネジメント関連予算の割合は「5%未満」が37.7%と最多だが、「10%以上20%未満」と回答した層が2024年の8.5%から12.7%へと拡大している(図3)。「わからない」という回答が31.6%から13.2%へと減少しており、予算管理がより厳密に行われるようになっていることがうかがえる。
図3:IT投資予算に占めるデータマネジメントに関わる投資(出典:インプレス『生成AI時代のデータマネジメント調査報告書2026』)拡大画像表示
ROI(投資対効果)の明確化についても、2024年には半数以上(53.4%)が「明確化していない」と回答していたが、2025年調査では32.0%まで減少した。代わりに「ある程度は明確である」(26.4%)、「今後明確化したい」(33.9%)が増加している(図4)。「データマネジメントは効果が見えにくい」という長年の課題に対し、多くの企業が真剣に向き合い始めている。
図4:データマネジメントに関わる投資の効果の明確化(出典:インプレス『生成AI時代のデータマネジメント調査報告書2026』)拡大画像表示
●Next:AI活用を前提に、データ統合基盤への投資意向が高まる
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