マスターデータを全社的に整備している企業は4割強、システムの多さが着手を困難に―データマネジメントの現在地:第2回
2025年3月25日(火)杉田 悟(IT Leaders編集部)
デジタルトランスフォーメーション(DX)が加速する現代において、企業はデータに基づいた意思決定や新たな価値創造を求められている。そして今、生成AIの登場によってデータマネジメントは新たな局面を迎えている。2024年12月刊行の調査レポート『データマネジメントの実態と最新動向2025』(インプレス刊)では、データ品質やマスターデータ管理、データ連携/統合、推進体制/人材育成など、多様な観点から国内企業の取り組みの実態を明らかにした。本連載では、3回にわたって調査結果の一部を紹介し、データマネジメントの現在地を把握するとともに活動のあり方を考察する。
データの鮮度や精度、所在不明、重複が課題に
第1回:データマネジメントの優先順位は向上の兆しも、人材不足の課題は解消されず―データマネジメントの現在地では、データマネジメントをとりまく企業や組織の状況について分析した。今回は企業におけるデータ品質の維持・向上の活動状況、データ品質に関する課題、基幹情報であるマスターデータマネジメントの取り組み状況などを取り上げる。
近年、デジタルトランスフォーメーション(DX)の推進やAI技術の進化に伴い、組織におけるデータ活用の重要性が飛躍的に高まっている。特に、社会情勢や市場の変化が激しい現代において、常に最新かつ正確なデータを保持することは、企業競争力の維持・向上で欠かせない。その一方で、データの品質管理が追いついていない現場が多いというのが現状だ。
例えば、顧客ニーズの多様化やサプライチェーンの複雑化が進む中で、企業は迅速かつ的確な意思決定を行う必要がある。そのためには、精度の高い顧客データや製品データ、取引先データなどが不可欠だ。しかし、実際には多くの企業が、データの鮮度や精度の問題、データの所在不明、重複データの存在といった課題に直面している。
図1は、取引先や商品データの名寄せやクレンジングなど、必要なデータが常に正確かつ最新であるためのデータ品質の維持・向上に関する活動を、どの程度の規模で実施しているかを聞いた結果である。
データ品質を維持・向上する活動を行っている企業のうち、「必要に応じて、システム毎にデータの品質を維持・向上する活動を行っている」が37.1%と最も多く、「部門レベル」が22.1%、「全社レベル」が17.8%と続いた。前年調査との比較では、「必要に応じて、システム毎に」「全社レベル」が減少したのに対して、「部門レベル」が2.9ポイント増加している。

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次に、データ品質の維持・改善について、具体的にどのような取り組みを行っているか聞いたところ、「データ品質の維持・改善はシステム運用業務の中で行っている」が32.6%と最も多かった。「データ入力部門に対して、入力精度の改善を指導している」が25.1%、「IT部門以外のデータ利用部門とデータ入力部門が、データ品質について会話する機会がある」が16.5%あり、データの品質・維持について外部とコミュニケーションを取っているところも一部あることがわかった(図2)。

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データ品質に関する課題については、64.7%の企業が「鮮度や精度・粒度が適切でないデータがある」と回答したが、前年度調査の70.3%からは5.6ポイント減少した。そのほか、半分以上の企業において、「どこにどんなデータが存在するのかが明確でない」(59.4%)、「重複データがある」(50.9%)という課題を抱えていた(図3)。

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●Next:マスターデータマネジメントの優先度は高まるも、課題は山積
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