アスクル(本社:東京都江東区)は、基幹システムをSAP ERP(ECC 6.0)からSAP S/4HANAに刷新し、Amazon Web Services(AWS)に移行した。24時間365日稼働するECサイトを止めることなく、21時間で移行を完了した。移行を支援したBeeXが2026年5月11日に発表した。
アスクルは、事業所向け通販「ASKUL」と個人向け通販「LOHACO」を主力とするEC企業である。2009年に基幹システムをSAP ERP(ECC 6.0)で刷新して以来、約15年使い続けてきた。今回、2027年末のECC 6.0サポート終了を機に、SAP S/4HANAへ移行した(図1)。
図1:アスクルがSAP S/4HANAで刷新した基幹システムの構成(出典:BeeX)拡大画像表示
移行プロジェクトは2024年3月にキックオフ。PMO、インフラ/BASIS、アプリケーションの各領域をマルチベンダー体制で推進した。最大の課題は、24時間365日稼働するECサイトをダウンタイム最小限で切り替えることだった。この要件を満たすため、既存システムのデータをそのまま新システムに移し替える「ストレートコンバージョン方式」を採用した。
同社テクノロジー本部でビッグデータマネージャーを務める小森学氏は「基幹システムを止めると、社名の由来でもある『明日届ける』という顧客との約束が守れなくなる。24時間以内の移行を最優先とし、移行後のデータ品質の維持も必須条件とした」と振り返る。
移行期間を短縮するため、不要データの削除・対象外化によってデータ量を圧縮。ダウンタイム中に処理するデータを最小限に抑えるため、移行を2段階に分け、ダウンタイム前に発生済みデータの移行を先行して完了させた。この結果、当初20TBを超えていたデータ量をSAP S/4HANA移行直後には5TBまで削減した。
リハーサルは、PoCを含めて5回実施した。「データのみ」「データ+基盤」「本番同等環境」と段階的に条件を引き上げ、移行手順と所要時間を検証した。テスト環境はAWS上に本番相当の構成で構築し、20TBの試験データを用意してI/O性能も評価。本番移行時にはVPN回線速度を最大1Gbit/sまで引き上げ、データ取り込みを高速化した。
一連の取り組みにより、事業を停止することなく21時間のダウンタイムで移行を完了した。
今後はアドオン開発部分をSAP Business Technology Platform(SAP BTP)で外出しすることでSAP本体をクリーンな状態に保つとともに、業務へのAI活用を進める。蓄積データの利活用に向けた分析基盤の整備も計画している。「バッチ処理ではなくリアルタイムのデータ収集を通じ、迅速な意思決定につなげることを目指す」(小森氏)。
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