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味の素グループの経理会社、経費承認をAIで判定、年1万時間削減へ

2026年4月24日(金)日川 佳三(IT Leaders編集部)

味の素フィナンシャル・ソリューションズ(本社:東京都中央区)は、経費精算の承認業務を自律的に判断する経理AIエージェントを2026年2月に稼働させたと発表した。経理業務に特化したAIスタートアップのファーストアカウンティングと共同開発した。月1万件規模の判断をAIで代替することで、年間約1万時間の削減を見込む。今後、他社への外販も予定している。

 味の素フィナンシャル・ソリューションズ(AFS)は、味の素グループ8社の財務・経理業務を受託している。経理業務の運用にあたっては、経費精算・請求書処理にかかる工数の大きさ、会計・税務知識を要する判断の属人化、ノウハウ継承の困難さという課題を抱えていた。BPO(業務アウトソーシング)を活用しても、品質維持と持続可能性には限界があった。

 こうした課題を解決するためAFSは、経理判断をAIで自動化することに目を向けた。経理業務に特化したAIを開発するファーストアカウンティングと連携し、単なるRPA(ロボットによる業務自動化)や汎用生成AIの転用ではなく、「会計判断そのものを担うAI」を目指した「経理AIエージェント」の共同開発を進めてきた(図1)。

図1:経理業務に特化した「経理AIエージェント」の概要(出典:ファーストアカウンティング、味の素フィナンシャル・ソリューションズ)
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 今回、経理AIエージェントを活用した事例の第一弾として、AFSの経費精算における承認と差し戻しの判断を自動化し、2026年2月に稼働させた(図2)。申請者がシステムにログインして申請データと領収書を登録すると、経理AIエージェントがこれを取得して分析し、勘定科目を判定し、承認と差し戻しを判断する。

図2:味の素フィナンシャル・ソリューションズにおける経理AIエージェントの適用事例。経費精算における承認と差し戻しの判断を自動化した(出典:ファーストアカウンティング、味の素フィナンシャル・ソリューションズ)
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 味の素フィナンシャル・ソリューションズ 経営企画部 DXOE推進グループ長の木田啓太氏(写真1)は、経費精算の承認判断を選定した理由について「BPOに委託している業務の大半は経費精算や請求書の処理で、これらの大部分を承認業務が占めていた。経費精算の承認判断はグループ各社で業務フローの共通化が進んでおり、参照すべき規程やルールも明確であることから、AIの適用に向くと考えた」と説明する。

写真1:味の素フィナンシャル・ソリューションズ 経営企画部 DXOE推進グループ長の木田啓太氏
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 これまで、承認の判断には経理担当者が1件あたり約5分を要していた。処理件数は月1万件規模になる。これをAIが代替することで、年間約1万時間の削減効果が期待できる計算になる。また、判断品質の均一化とスピードの向上も同時に実現する。従来は、差し戻しの連絡が翌日以降になることもあった。AIにより、申請から約5分で結果が返るようになった。

 開発した経理AIエージェントは、経理・財務領域の業務ロジックを大規模言語モデル(LLM)と組み合わせて実現している。性能を検証するため、領収書必須項目の確認、インボイス制度への準拠チェック、税務上の交際費判定の3つの項目についてLLM単体と比較したところ、経理AIエージェントの正答率は93.3%で、LLM単体(53.3%)を40ポイント上回った(図3)。

図3:経理分野における経理AIエージェントの性能(出典:ファーストアカウンティング、味の素フィナンシャル・ソリューションズ)
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 経理AIエージェントのシステムは、ファーストアカウンティングがクラウドサービスとして提供する。今回AFSが先行導入したが、項目や参照ルールを変更するだけで各社の経理業務に適用可能である。ファーストアカウンティングは今後、他社への外販も予定している。ファーストアカウンティングの森啓太郎社長(写真2)は「日本企業では経理人材が慢性的に不足している。業務の多くを占めるデータ入力や申請の確認・承認はAIが代替できる」と指摘する。

写真2:ファーストアカウンティング 代表取締役社長の森啓太郎氏
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 経理AIエージェントが現時点で実現済みの機能は、経費精算の確認・承認、新リース会計基準への適否判定、支払業務の確認の3つ。今後は、起票、入金消込・債権管理、月次決算の集計・分析、固定資産管理・棚卸、税務申告書の作成なども対象に加えていく計画である。

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