[市場動向]

日立、既存の物体検知AIを再学習なしで補正する技術を開発、誤検知と見逃しを低減

API経由のブラックボックス型AIにも“後付け”可能

2026年6月8日(月)日川 佳三、河原 潤(IT Leaders編集部)

日立製作所は2026年6月5日、製造現場や社会インフラなどの分野に向けて、既存の物体検知AIの検知結果を再学習なしで補正するAI技術を発表した。画像全体の状況を示す情報と細かい領域ごとの特徴を統合的に分析することで、AIの再学習や改修をすることなく検知精度を向上させる。最新の物体検知モデルにおいて最大50%以上の精度改善を確認しており、追加の処理時間も画像1枚あたり0.1秒程度に抑えた。API経由で利用するブラックボックス型のAIにも“後付け”で適用できる。

 日立製作所は、製造現場や社会インフラなどにおける安全確保や業務効率化に向けて、既存の物体検知AIの出力を高精度に補正するAI技術を発表した。

 技術開発の背景を次のように説明する。「製造現場での製品検査や設備保守、インフラ監視などの分野で、物体検知AIの活用が広がっている。品質保証や安全確保に直結するため高い信頼性が求められる一方で、未知の物体や類似した物体が多数存在する環境、込み入った背景情報などにより、誤検知や見逃しが発生するリスクがある」。

 その対策として検知結果を補正する手法が用いられてきたが、従来は画像全体の情報と検知領域ごとの詳細な情報の相互関係を捉えた高精度な補正が難しく、既存のAIの再学習や改修が必要になる場合があったという課題があるという。

 今回開発した技術では、画像全体の特徴と細かい領域ごとの特徴を同時に考慮することで、誤検知の抑制と見逃しの低減を両立しながら既存の物体検知AIの出力を補正する(図1)。

図1:物体検知AIの検知結果を後付けで補正する技術の概要(出典:日立製作所)
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 仕組みとして、まず特徴抽出モジュールにより、画像全体の特徴と細かい領域ごとの特徴を取得する。次にこれらを特徴統合モジュールに入力し、関係性を互いに分析させながら、画像全体が何であるかの予測と、検知領域が何であるかの予測の両方を出せるように学習させる。最後に、これらの予測結果を元の検知結果と組み合わせることで、より正確な補正を実現する。

 また、同技術は特定のAIに依存しないモデル非依存型の設計を採用している。入力情報として画像と物体検知AIの出力結果(予測されたラベル情報と座標情報)のみを利用するため、AIモデルの内部構造や学習済みパラメータに依存しないという特徴がある。

 こうした仕組みにより、コードが公開されている通常の物体検知AIだけでなく、内部にアクセスできずAPI経由で利用する生成AIサービスなどのブラックボックス型AIにも“後付け”で適用できる。ユーザーは、既存の画像認識システムをそのまま生かしながら精度を高められる。

 日立が複数の公開ベンチマークで検証した結果、「Grounding DINO」や「LLMDet」といった任意の対象をテキストで指定できる最新の物体検知モデルにおいて、最大50%以上の検知精度改善を達成した。各モデルに同技術を適用した場合の追加の処理時間は、一般向けPC環境で画像1枚あたり0.1秒程度であり、精度向上と処理効率を両立している。

 日立は今後、同技術を「Lumada 3.0」を支える技術の1つとして位置づけ、製造や設備保守、インフラ監視、空撮画像解析などの幅広い分野へ展開し、現場の安全確保や業務効率化の支援を目指す。

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