[市場動向]

フォーティネットが示すAI時代のセキュリティビジョン、自律型脅威の台頭と「能動的防御」へのシフト

AIの悪用で”圧倒的なスピード”を得た攻撃者への対抗策とは

2026年7月24日(金)神 幸葉(IT Leaders編集部)

フォーティネットジャパンは2026年7月10日、3年ぶりとなる年次カンファレンス「Fortinet Accelerate Japan 2026」を開催した。基調講演では、フォーティネットジャパンに加え、米Fortinetのリーダー陣が登壇し、自律型AIがもたらす脅威の現状から、次世代のネットワーク・セキュリティ統合戦略、転換期を迎えたサイバーリスクマネジメントのあり方まで、多角的な視点から次世代のビジョンを語った。

ネットワーキングとセキュリティの融合

 フォーティネットジャパン 社長執行役員の与沢和紀氏(写真1)は、サイバーセキュリティがAI技術の進展を受け、急激に変化していることを強調した。同氏は、ITインフラは、クラウド、モバイルへの移行を経て、現在はエッジへと回帰しつつあることに触れ、今後も特定の環境に一極集中することはないと予測。「インフラの分散化と複雑化が今後も進む」との見解を示した。

写真1:フォーティネットジャパン 社長執行役員の与沢和紀氏

 複雑化したインフラを保護するために不可欠な要素として、与沢氏が挙げたのがネットワークとセキュリティの融合だ。2026年にはセキュリティ関連の投資額がネットワーキングのコストを上回ると予測。こうした変化に対応するため、フォーティネットは「単一OS(FortiOS)」による一括統制を軸に、ベンダー統合やTCO(総所有コスト)低減、セキュリティ強化を重視しながら、AIエージェントのトラフィックまで包括的に保護していく方針を示した(図1)。

図1:ネットワークとセキュリティの融合を加速する(出典:フォーティネットジャパン)
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 さらに、AIエージェントの普及に伴うトラフィックの爆発的な増加に対し、「SASE(Secure Access Service Edge)」を強化する。同社はグローバルで数十拠点の自社データセンターを構築しており、データ主権や運用の独立性を重視する日本企業に対して、「データ主権へのニーズに対して、完全にソブリンなSASEの提供が可能な、数少ないベンダーの1社だ」(与沢氏)と自社の独自性をアピールした。

「悪意あるAI」がもたらす脅威

 米Fortinet 主席セキュリティストラテジスト 兼 脅威インテリジェンス担当グローバルバイスプレジデントのデレク・マンキー(Derek Manky)氏(写真2)は、同社の「グローバル脅威レポート2026」を基に、進化する驚異的な速度のサイバー犯罪の実態を報告した(図2)。

写真2:Fortinet 主席セキュリティストラテジスト 兼 脅威インテリジェンス担当グローバルバイスプレジデント デレク・マンキー氏
図2:グローバル脅威レポートで示されたトレンド(出典:フォーティネットジャパン)
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 現在防御側が直面している最大の課題は、攻撃までの時間の劇的な短縮だ。脆弱性が公開されてから、攻撃者がそれを悪用するまでの時間は、2年前には平均5日であったのに対し、現在は24~48時間以内にまで縮まっている。

 この恐るべきスピードを生み出している原因が、ダークウェブ上で流通する「悪意あるAI」や「CaaS(サービスとしての犯罪)」だ。「Fraud GPT」や「Worm GPT」といった悪意あるAIモデルにはガードレールが一切存在せず、これらのサブスクリプションサービスには年間1000米ドル未満で提供されているものもある。

 「攻撃者はこれらのサービスに登録するだけで自身の攻撃力を爆発的に高めることができるため、そのプロセスはもはや手動ではない。これが攻撃のタイムウィンドウを極小化させている大きな要因であり、現代の深刻な課題だ」(マンキー氏)

 もう1つの大きな変化は、攻撃の標的がデータからID(認証情報)へとシフトしている点だ。「脆弱性を突いてハッキングするよりも、他人のIDを乗っ取ってその人になりすます方が、確実かつ容易に社内へ侵入できる。IDの窃取は、現在非常に警戒すべき手口だ」(マンキー氏)

 さらに、攻撃対象領域はAIシステムそのものにも広がっている。フォーティネットはMITREと連携して手口をマッピングしており、現時点で175種類もの攻撃テクニックを特定しているという。

 例えば、大規模言語モデル(LLM)に揺さぶりをかけて個人情報やソースコード、機密データなどを意図的に流出させる「モデル反転(Model Inversion)」、モデルをリバースエンジニアリングして不正に操作する「モデル窃盗(Model Theft)」、プロンプトを工夫してモデルの安全対策をバイパスし、悪意ある出力を引き出す「モデル回避(Model Evasion)」や「プロンプト注入(プロンプトインジェクション)」、モデルに誤った情報を学習させて、精度を低下させる「モデル汚染(Model Poisoning)」などがある。

 システムに組み込まれたエージェントも新たな標的となっている。インストールされているエージェント自体が乗っ取られれば、それは攻撃者のC2サーバー(コマンド&コントロール・指令サーバー)として悪用されるためだ。

 「将来的にはエージェント間の通信を悪用した新たなサプライチェーン攻撃の増加が予測される。ダークウェブ上で悪意あるAIエージェントのフレームワークが普及すれば、2026年末までに攻撃までの時間はさらに短縮されるだろう。私たちは現在、圧倒的なスピードの脅威と対峙している」(マンキー氏)

●Next:サイバー脅威に対する最新プロダクトと技術イノベーション、AI時代に求められるリスクマネジメント

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