多くの企業が直面する「スキルを持つ人材の不足」─データマネジメントの活動実態:第3回
2024年4月2日(火)愛甲 峻(IT Leaders編集部)
データをビジネス価値に変えるための継続的な活動であるデータマネジメント。デジタルトランスフォーメーション(DX)の推進やデータドリブン経営に向けて最重要課題の1つとなっている。2023年12月刊行の調査レポート『データマネジメントの実態と最新動向2024』(インプレス刊)では、データ品質やマスターデータ管理、データ連携/統合、推進体制/人材育成など、多様な観点から国内企業の取り組みの実態を明らかにした。本連載では、3回にわたって調査結果の一部を紹介し、課題から浮かび上がるデータマネジメント活動のあり方を考察する。
第2回:「データ基盤」の構築に高いハードル、過半数が“人材/スキル不足”─データマネジメントの活動実態では、メタデータの整備やデータ基盤の状況など、データの分析・活用に関連する領域における企業の取り組みの現状や課題を分析した。最終回となる今回は、データマネジメントを担う組織・人材の状況や、そこから見えてくる課題を中心に取り上げたい。
CDO(最高データ責任者)の設置率は2割未満
企業がデータを資産として効率的に活用していくためには、データに関する全体方針や戦略の策定、体制構築、ルールや手順の確立、データ活用の機運醸成などを組織横断的に実施する必要がある。その役割を担うのが、データマネジメントの全責任者であるCDO(Chief Data Officer:最高データ責任者)である。
図1は、CDOの任命状況を問うた結果である。「CDOが任命されている」は7.5%、「CIO(Chief Information Officer:最高情報責任者)あるいはCDO(Chief Digital Officer:デジタル推進責任者)が兼務している」が8.6%となり、両者を合わせても2割を下回っている。
CIOやCDO(デジタル推進責任者)などによるCDO(最高データ責任者)の兼任は、情報システムやDXといった他の領域の優先事項と争うため、データへの注力が薄まるという問題点が指摘されている。専任が望ましいと言えるが、多くの企業では兼任での設置にも至っていない状況がうかがえる。
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組織・人材の最大の課題は「スキルを持つ人材の不足」
データマネジメントの責任者であるCDOの任命状況は、現状では限定的であるとわかった。それでは、データマネジメントの各施策を進める組織や人材の状況はどうだろうか。
図2はデータマネジメントを担う組織の状況について聞いた結果である。最も多いのが「業務部門や情シス部門が日常業務として担っている」であり、全体の67.3%を占めた。一方で、「データマネジメントを専門とする部署(チーム)」が担う場合は2割に満たない。
上記に関連して、データマネジメントに取り組む人材・組織に関する課題を問うた結果が図3である。「データマネジメントのスキルを持った人材がいない」が53.8%で最多である。その他の課題として、「データマネジメント専任の組織やチームを作れない」が47.4%、「予算が確保しにくい」が37.6%で続いている。
最大の課題である「スキルを持った人材の不足」の原因として、データマネジメントをIT部門の業務として位置づけ、もっぱらIT部門から人材を捻出していることが考えられる。たとえデータマネジメントのスキルを備えた人材がIT部門にいても、システム導入や改修といった他のプロジェクトが優先され、データマネジメントに工数を割けないという状況が想定される。また、データマネジメントには事業に関するナレッジが必要だが、多くの企業で事業部門の関与が不足していることもうかがえる。
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