「データ基盤」の構築に高いハードル、過半数が“人材/スキル不足”─データマネジメントの活動実態:第2回
2024年3月19日(火)愛甲 峻(IT Leaders編集部)
データをビジネス価値に変えるための継続的な活動であるデータマネジメント。デジタルトランスフォーメーション(DX)の推進やデータドリブン経営に向けて最重要課題の1つとなっている。2023年12月刊行の調査レポート『データマネジメントの実態と最新動向2024』(インプレス刊)では、データ品質やマスターデータ管理、データ連携/統合、推進体制/人材育成など、多様な観点から国内企業の取り組みの実態を明らかにした。本連載では、3回にわたって調査結果の一部を紹介し、課題から浮かび上がるデータマネジメント活動のあり方を考察する。
第1回:効果への期待は高くも、取り組みは道半ば─データマネジメントの活動実態では、データマネジメントの中心的な活動であるマスターデータマネジメント(MDM)やデータ品質の維持・管理などについて、企業の取り組み実態や課題を分析した。今回は、メタデータの整備やデータ基盤の状況など、データの分析・活用に関連する領域を中心に取り上げたい。
IT/デジタルが社会全体に浸透し、企業のデータ活用を巡る環境はかつてから大きく変化した。なかでも、2010年代に入って顕著になった「ビッグデータ=データの種類・量・生成頻度の増大」のトレンドは、データマネジメントの手法に大きな影響を及ぼすことになった。
データの種類に関しては、業務システムが扱う定型的なデータに加えて、ビジネス文書や画像、SNSといった多種多様な非定型データ、IoTシステムでセンサーネットワークが収集するデータ、そして各種オープンデータなど分析・活用対象は実に多岐にわたる。こうしたさまざまなデータをビジネス価値に転換し、経営・ビジネスの意思決定に役立てていくことは、デジタルトランスフォーメーション(DX)の推進において、業種や規模を問わず最重要課題の1つとなっている。
図1は、企業がデータ分析のために収集・使用しているデータの種類を聞いた結果である。「販売や生産、会計など定型的な業務データ」が70.3%で最多となり、「自社サイトのアクセスや購買履歴などWebデータ」「ファイルやメールなどの非定型の業務データ」が続く。一方で、「SNSのデータやオープンデータ、POSデータなど社外のデータ」は、わずか10.2%にとどまる。多くの企業では、自社のデータの分析・活用は進んでいるが、社外のデータの活用にまでは至っていないことがうかがえる。
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メタデータの効果は認識しつつも、未整備が6割以上
データマネジメントにおいて、データ分析・活用と深く関わる領域の1つが、データの所在や内容を示すメタデータの整備である。その活動はデータの管理や発見を容易にし、データ活用の円滑化に資するものだ。メタデータやそれを管理するデータカタログは、自社データの資産台帳と位置づけられる。
図2はメタデータに期待する効果を問うた結果である。「データ分析・活用がし易くなる」が55.3%で最多で、「マスターデータマネジメント(MDM)が容易になる」「システムの構築・保守を効率化できる」が3割程度で並んでいる。
一方で、メタデータの整備状況を聞いたのが図3だ。「整備していない」が63.5%で最多であり、「全社レベルで整備している」は7.1%にとどまっている。メタデータの効果は認識しながらも、大半の企業ではその整備が進んでいないことがうかがえる。
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メタデータは、データの定義などを示すシステムメタデータと、事業部門にとって必要なデータの意味などを示すビジネスメタデータに分類される。後者の整備には事業部門のナレッジが必要となる。
前回も触れたように、データマネジメントは長年システム運用・保守と混同され、IT部門の業務と見なされてきた。メタデータの整備が進んでいないことの一因として、事業部門の巻き込みが不十分であることが推察される。
●Next:「データ基盤」の構築・運用のハードルは何か
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