「SAP ERP 6.0(ECC 6.0)」保守サポート終了が2027年に迫っている。多くの企業は、新しいSAP環境へ移行するか、他のERPソリューションへ切り替えるかという重要な決断を求められているだろう。このシステム変革をビジネスの飛躍に変えるために、最優先で検討すべき課題が「データのサイロ化の回避」と「データ統合基盤の構築」だ。
2025年3月7日に開催された「データマネジメント2025」(主催:日本データマネジメント・コンソーシアム〈JDMC〉、インプレス)のセッションに、Stibo Systemsの小島純氏が登壇。SAPのデータと社内の各種システム/SaaSのデータの連携を促進させ、全社レベルのデータ統合基盤を構築するために欠かせない「MDM(Master Data Management:マスターデータ管理)」の役割と、同社が提供するMDMソリューションについて解説した。
提供:Stibo Systems株式会社
2027年のSAP ECCのサポート終了を契機にデータ連携基盤の強化を推進
SAP ERP 6.0(ECC 6.0)のサポートが2027年末に終了する「SAP 2027年問題」を目前に控え、移行準備からシステム改修、延長サポートへの対応、そして、アドオン機能や業務プロセスの移行等に取り組んでいる企業は少なくない。
「そうしたなかで、現在のSAP環境を新環境に移行させて完了させるのではなく、変革の契機として捉えています。例えば、運用コストの削減、業務効率化や生産性向上、データ連携の強化など、DX推進のチャンスとして考えているのです」と、Stibo Systemsの小島純氏は強調する。

では、SAP 2027問題を契機にデータ基盤を見直そうとした場合、どのような仕組みが必要となるのか。
データ連携という観点から現状のERP環境を俯瞰してみると、ERPを中心として、さまざまなデータソースからデータを受け取り、処理をする構成になっている(図1)。

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だが、さまざまな障壁によってERPが必要なシステムすべてと連携できていないのが実情だろう。
そこで重要な役割を担うのが、MDM(Master Data Management:マスターデータ管理)だ。MDMは、業務に必要なデータを集め、「マスター」となるデータを格納する。それを必要なシステムに連携し、関連するすべてのシステムに正しいデータを、必要なタイミングで供給する仕組みである。
MDMの導入により、ERPの改修が基本的には不要になる。結果、「必要なデータを、必要なタイミングで連携・確認・分析し、そこから得られた知見を経営判断に活用できる」という、データドリブン経営の実現に一歩近づくことになる。
SAPの製品ポートフォリオには、マスターデータガバナンスをはじめ、データプロファイリングやデータクオリティ、サプライヤーオンボーディングといった機能群が別ツールとして提供されている。一方Stibo Systemsはそれらの機能をすべて自社開発によるパッケージ製品として包含、展開している。
「データ視点で見た場合、ほとんどの領域を当社のMDMソリューションでカバーできています。SAP MDGで管理していたマスターデータを、すべてStibo Systems MDMに移行し、全社統合データ基盤を構築、運用している企業も多くあります。事実、当社の顧客の約70%は、SAPユーザー企業です」(小島氏)。
マスターデータ管理をStibo Systems MDMに移行、データ整備に係るワークフローとビジネスプロセスを10分の1に
小島氏は、Stibo Systems MDMを活用したSAPとの連携事例を紹介した。
1つ目が、米国に本社を構えるヘルスケア製品の製造企業、Halyard Health社の事例である。同社は地域ごとに複数のERPシステムを導入、運用していたが、各ERP間で正確なデータのやり取りが行われておらず、結果、トレーサビリティや承認ワークフローが連携されていないという課題が生じていた。
この課題解決に向けてHalyard Health社は、製品情報をはじめとしたさまざまなデータを各地域に点在するERPから抽出し、それらをStibo Systems MDMに集約・統合した。その結果、データ管理を加速させ、将来的にオンラインeコマースに注力するための基盤を構築できた(図2)。

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2つ目がドイツの自動車Tier-1サプライヤーにおける導入事例である。同社は、SAP ECCからS/4HANAへの移行と同時に、Stibo Systems MDMの稼働を開始させている(図3)。
「この事例で特筆すべき点は、データ整備に係るワークフローとビジネスプロセスをStibo Systems MDMの練度を高めたことで、10分の1にまで削減したことです。これにより、当初10年間のスケジュールで計画していたプロジェクトを、6年にまで短縮できました」(小島氏)。
加えて、プロジェクトに関わる人員を15%削減できほか、トータルコストについても22%削減されるとの見込みだという。

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データの可視化によってもたらされる価値の提供をMDMによって実現
データをいかに可視化させられるかが、データそのものの価値、それらのデータから得られる価値を決定する。データにより生み出される効果は業務効率の向上や優れた顧客体験の提供などいくつもあるが、MDMは、これらを実現する統合データ基盤となるものだ(図4)。

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「MDMは、これらを価値の提供を実現する統合データ基盤となるものです。そして、 Stibo Systems MDM は、『マルチドメインシングルプラットフォーム』『ローコーディング』『SaaS』『オープンプラットフォーム』という4つの特徴を有しています。これらの特徴に基づき、あらゆるマスターデータを単一のプラットフォームで管理するとともに、統一化された操作性とUIを持つシステム環境をSaaS形式で提供しています」。
「これにより、自社の事業戦略に適合したプラットフォームの活用と展開を、迅速かつ効率的に進められます。加えて、設定ベースで導入運用が可能なため、エンジニアではない、実務担当者が事業戦略やビジネス環境のニーズを踏まえ、有用となるデータを考え、継続的に作り続けられるようになります」(小島氏)。
さらに、小島氏は、Stibo Systems MDMの仕組みについて概念図を用いながら説明した。
複数のデータソースとデータの配信先が存在する中で、Stibo Systems MDMはその中間に位置する。商品から取引先、顧客、サプライチェーン、従業員など、あらゆるデータドメインから創出されるデータを単独のプラットフォームで一元管理する。同時に複数のシステムやチャネルに対して鮮度、品質、信頼性を確保しながら提供する(図5)。

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Stibo Systems MDM の“Best of Breed”により多くのメリットが享受可能に
Stibo Systems MDMが提供する最大のメリットは、“Best of Breed”の実現である。「企業が描くデータ活用の将来像は千差万別であり、選択すべきツールも変わってきます。また、ツールの選択は時代の変化も大きく影響するでしょう。
対してStibo Systems MDM導入によってもたらされるBest of Breedは、『マルチドメインによるデータの一元管理』『360°ビューの実現』『柔軟なシステム連携』『DXのベースプットフォーム』といった数々のメリットを提供します(図6)」(小島氏)。

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SAPでマスターデータを管理するには、「いくつかの解決策の選択肢があること」を認識するとともに、「SAPで管理すべき領域を確認すること」「マスターデータとの連携先についても十分考慮し、どのシステムとの連携が必要なのかしっかり見定めること」が求められると小島氏は訴える。
「これらの要件を念頭に置いたうえで、MDMを実現するための最適なソリューションを選択していかなければなりません。そして、適切なソリューションを選ぶポイントは、『Best of Breedを実現していること』『時代や社会の変化に柔軟に対応可能であること』『運用の容易性を実現していること』などが挙げられます。これらの要件を満たすものが、Stibo System MDMであり、新しいSAP環境へ移行リスクを抑制するとともに、適切なMDM環境の構築により、“実のあるデータ活用”を実現できるようになります」と小島氏は力を込めた。

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