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横浜国立大学と富士通、「富岳」で台風時の竜巻発生を高速に予測する気象シミュレーションに成功

広域の台風と局所の竜巻を1つのシミュレーションで予測

2025年2月12日(水)IT Leaders編集部、日川 佳三

横浜国立大学(本部:神奈川県横浜市)と富士通は2025年2月12日、台風に伴って発生する竜巻を実時間以上の速度で予測する気象シミュレーションに成功したと発表した。スーパーコンピュータ「富岳」で気象シミュレータシステムを実行し、台風全体や進路を含む広範囲な領域を100m以下の高解像度でシミュレートしている。2024年8月に発生した台風10号において、従来4時間後の竜巻発生の予測に11時間以上を要していたのを、約80分で完了したという。

 横浜国立大学と富士通は、台風に伴って発生する竜巻を実時間以上の速度で予測する気象シミュレーションに成功した。従来の仕組みでは、4時間後に竜巻が発生するという予測に11時間以上を要していたが、これを4時間を切る約80分で完了したという。

 両組織は、2024年8月に発生し、九州地方に接近/上陸した台風10号の全体を、富士通・理化学研究所のスーパーコンピュータ「富岳」全体の5%の計算資源に相当する8192ノードでシミュレーションを実行、九州東岸で発生した多数の竜巻を再現した(図1)。

図1:2024年台風10号における台風全域のシミュレーション結果(左:雨量、右:風速)。右図の赤丸は強い渦状の強風が現れた箇所(出典:横浜国立大学、富士通)
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 図2は、九州東岸の20km四方の風や雲の動きを可視化したもので、複数の竜巻が発生している。

図2:2024年台風10号時の竜巻の再現(20km×20km)。赤い部分が竜巻と考えられる強い渦状の強風、白い部分が竜巻上部の渦状の雲。横浜国立大学が気象可視化ツール「VAPOR」を用いて可視化したもの(出典:横浜国立大学、富士通)
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 横浜国立大学と富士通によると、この研究領域では、「日本で発生する竜巻の約2割が台風に伴って発生するが、数百kmに及ぶ台風と、最大で直径数百mの竜巻では1000倍以上も空間的スケールが異なる。そのため予測が難しく、台風全体や台風の進路を含む広範囲な領域を100m以下の高い解像度でシミュレーションする必要があるため、計算量が膨大になる」という課題があった。

 気象シミュレータシステムに、横浜国立大学が開発した「CReSS」を用いた。特徴は、メソスケール(水平方向/範囲:2~2000km)から雲スケール(水平方向/範囲:50~2000m)までを、1つのシミュレーションでカバーすること。竜巻を発生させるスーパーセル積乱雲の形成や発達をシミュレートできるという。

 計算量の課題に対しては、竜巻の予測に必要な精度を維持しつつ必要計算量を大幅に削減したCReSSの軽量モデルを開発している。さらに、富士通の大規模並列処理技術として、富岳のサーバー間ネットワーク構造に適したシミュレーション処理のマッピングや、演算とファイル出力のオーバーラップ実行を適用することで、富岳でのシミュレーション処理時間の短縮を図っている。

 これらにより、大規模な領域にわたる台風と局所的な竜巻の発生を共に予測可能な気象シミュレーションに成功。両組織は、今回の気象シミュレータを研究コミュニティ向けに公開する予定である。

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