生成AIの業務活用が進む一方、PoC止まりで成果が上がらない企業は少なくない。その背景には、未だ解消されない「2025年の崖」に加え、技術以前の業務プロセスやナレッジマネジメントの不全がある。それらが整わないままでAIの導入を進めれば、既存の不整合が増幅され、事業を脅かすリスクを招きかねない。AIの真価を引き出すには、社内知の言語化・構造化と適切なガードレールの設置、そして業務プロセス自体の根本的な再設計が不可欠だ。本稿では、生成AI活用を阻む構造的課題と、真のDXを実現するためのヒントを示す。
業務への生成AIの適用が進み、組織知(ナレッジ)を移植したAIエージェントやレガシーシステム刷新への期待が高まっている。しかし、PoC(Proof of Concept:概念実証)どまりで「成果が上がらない」と嘆いているケースも少なくない。その背景には、「2025年の崖」と同じ課題が潜んでいるのではないか。
経済産業省が「DXレポート~ITシステム『2025年の崖』の克服とDXの本格的な展開~」を公表したのは2018年9月だった。その後、DX(デジタルトランスフォーメーション)はすっかりバズワード化し、2025年の崖問題はどこかに行ってしまった感がある。
これに対して経産省が2025年5月に公表した「DXの現在地とレガシーシステム脱却に向けて」(レガシーシステムモダン化委員会総括レポート)によると、2024年度の調査で「レガシーシステム」が残存しているのは全産業で61%、大企業は74%にのぼる(図1)。2025年の崖問題は全く解決していない、ということだ。
同レポートは「レガシーシステム」を目の敵にしているように見えるが、必ずしもそうではない。その背後には、複数の異なるITシステムの連鎖が社会・経済の安心・安全・安定のリスク要因にならないか、という懸念が見え隠れしている。
図1:レガシーシステムの残存状況(出典:経済産業省)拡大画像表示
SCS評価制度にも通底する視点
それを受けてではないだろうが、最近のランサムウェアによるシステム障害を念頭に「サイバーセキュリティ問題こそ『2025年の崖』ではないか」という見方がある。システムの接合点およびエンドポイント(端末)が、クラウド/AI時代の脆弱性を顕在化している、というのだ。その視点はサプライチェーンのセキュリティ強化を目指す「サプライチェーン強化に向けたセキュリティ対策評価制度(SCS評価制度)」にも通底する。
その一方、「生成AIは『2025年の崖』問題の特効薬だ」という人もいる。旧世代言語のプログラムを大規模言語モデル(LLM)に読み込ませると、AIがロジックを解読し、最新の設計書や処理フローを自動生成してくれる。情報管理/IT部門に集中する負荷を分散し、業務の現場主導でDXを加速させることができるというのだ。
そこに生成AIないしAIエージェントを適用したり、現場にフィジカルAIが配置されれば、生産性ははるかに向上する。労働生産性が上がり、それが給与に反映される好循環が始まり、万々歳というわけだ。
もちろんAIのハルシネーション(事実と異なる回答を生成する現象)という問題はある。ツールに依存する自動化が進むと、現場のビジネスパーソンがシステムの指示通りにキーを打つオペレータになってしまうというリスクもある。だからこそHITL(Human-in-the-Loop:人間の適切な確認・判断・承認をプロセスの要所に組み込む設計)が重要になってくる。
●Next:AI活用とDX推進に共通する課題
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2025年の崖 / 経済産業省 / ネオス / ナレッジマネジメント / AIエージェント
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