受発注や在庫・商品管理といったサプライチェーン領域では、いまなお、FAX、メール、電話を介した業務や、人間による確認・判断・入力が数多く残されている。さらに現場の状況を見渡すと、ルール化されていない領域も多く、取引先ごとの「作法」や過去の履歴を踏まえた判断など、人間の暗黙知に依存している場面も多い。このようなサプライチェーン領域における非効率な業務プロセスを、AIの力で変革するスタートアップがリチェルカだ。次世代の基幹システム「Agentic ERP」である「RECERQA」の提供により、サプライチェーンマネジメント(SCM)の効率化と高度化を支援する。
提供:株式会社リチェルカ
株式会社リチェルカ 代表取締役CEO 梅田 祥太朗氏ERPを提案する側だったからこそ気づいた、現場が抱える課題
リチェルカで代表取締役CEOを務める梅田 祥太朗氏は、みずほ銀行、国産ERP企業のワークスアプリケーションズ、AIスタートアップなどを経て、投資先支援やスタートアップ経営を経験してきた人物だ。2022年にリチェルカを創業したきっかけについて、梅田氏は次のように振り返る。
「もともと、起業を志していたわけではありません。しかし、BtoB事業の立ち上げを担うCOOとして参画した企業がBtoBから撤退し、BtoCへと大きく方向転換したことが、大きな転機となりました。BtoB領域のビジネスに携わり続けたかったことと、そして自分自身が納得できる事業運営を行うためには、自らが代表となって事業を推進する必要があると考えたのです。また、その企業で共に働いてきたメンバーの雇用を守りたい、という責任もあり、起業に踏み切りました」(梅田氏)
そうしたリチェルカがサプライチェーン領域をビジネスのターゲットに定めたのは、梅田氏が2022年に事業承継した、イタリア製オートバイの輸⼊業を営む「うえさか貿易」での経験があった。
これまでもERPを提案する側として、数多くの企業のデジタル化を支援してきた梅田氏だったが、いざ現場に入ると、想像以上にアナログな業務が行われていることを目の当たりにしたという。
「イタリアからバイクや部品を仕入れ、国内に在庫を持ち、販売する。業務そのものはシンプルですが、実際には多くの苦労に直面しました。受注は紙や電話、メールが中心で、品番が不明な状態でやりとりをする必要があり、在庫コントロールも感覚的で、属人的な業務に溢れていました」と、梅田氏は語る(図1)。
図1:卸業は想像以上にアナログ業務が常態化拡大画像表示
このような課題解決にデジタルの力を活用しようと考えた梅田氏だが、そのための最適なシステムがないことにも気づく。
「会計や人事の領域と異なり、受発注領域は会社ごとに商習慣が異なるため非常に業務が複雑です。そのため、SCM領域のシステムは各企業に合うシステムが存在しておらず、“消極的な選択肢”、を取らざるを得ませんでした。結果として、システムで解決をするのではなく人力の業務が残り続けたり、個社ごとのカスタマイズが前提になることで、コストが肥大化せざるを得ませんでした。これらの課題を解決できるソリューションが必要だと実感したのです」(梅田氏)
こうした「自身の経験と、業務を知っているからこそ見えた課題を解決したい」という強い想いと、これまでの経験が結び付き、梅田氏は2023年1月、リチェルカとしての事業の運営に乗り出す。
複雑な操作と属人化が、SCMの自動化を阻む
もとより梅田氏が従来型ERPに感じていた課題は、高額な導入・運用コストだけではない。万人が簡単に扱えない「操作の複雑さ」だ。
「チャットやECアプリなどのコンシューマー向けサービスは、マニュアルを読まずとも誰もが直感的に使えるものです。ところがERPはマニュアルを熟読し、特定のコードを覚え、入力ルールを理解しなければなりません。BtoCの領域で当たり前となっている、利用者の知識や習熟度を問わず直感的に使えるUI/UXが、ERPでは実現されていないと常々感じていました」(梅田氏)
その結果、「業務を回すために、多くの人々がシステムを操作しなければならない」という構造がいまもなお残っている。事務担当者が日々、システムの操作に忙殺されているのが現状ではないだろうか。
加えて、サプライチェーン業務では、取引先ごとに応じた柔軟な対応が求められる場面が少なくない。商社・卸売業の場合、仕入れ先ごとに発注方法が、また、得意先ごとに注文方法が異なる。デジタル化されているケースもあれば、先のうえさか貿易の事業承継当初の例のように、電話やFAXなど依然としてアナログで行われているケースも多い。メーカーと得意先が増えれば増えるほど、業務パターンも膨大なものになってしまうのだ。
このような課題の解決に向けて、RPAやAI-OCRの活用も進められている。しかし、それらが解決できる業務はほんの一部分だ。
「例えば、外食店から『ビールを10ケース』とだけ注文が来たとしましょう。それは、どのメーカーの商品なのか、どの商品コードなのか、注文書には一切記載されていません。対して担当者は、過去の注文履歴に基づき『この店なら、このメーカーだ』と判断するなど、属人化した対応を行っていました。このように、現場では担当者の“暗黙知”に頼らざるを得ない場面が散見されています」(梅田氏)
人の判断が介在しなければならないのでは、たとえ自動化を行ったとしても、業務全体の自律化に至らない。そうした状況に風穴を開けようとしているのが、リチェルカである。
「大手ベンダーが長年提供してきたERPに対し、従来は開発人員や蓄積された技術、実績の差からスタートアップが挑むのは困難でした。しかしAIによって『ソフトウェア開発には多くの時間と人手が必要』という前提が崩れ、市場参入の余地が生まれました。また、私たちは、これまでの経験から深い業務知識も持っています。これらを強みにERP業界を変えていきたいと考えています」と、梅田氏は強調する。
データと暗黙知をAIにつなぐ、独自技術基盤「Quattro」
同社が「Agentic ERP(AIネイティブな基幹システム)」と呼ぶ「RECERQA」は、SCM領域に特化したERPだ(図2)。
図2:SCMに特化したERP「RECERQA」の概要拡大画像表示
最大の特長は、LLMを組み込んだAIエージェントが「人間の判断が残る領域」を担うことにある。すなわち、企業内に蓄積された暗黙知を理解し、円滑なサプライチェーン業務を遂行するのだ。
そのために開発された独自の技術基盤が「Quattro」である。この技術基盤の中軸となるものが、データを構造化する「QUON(RECERQA Unified Ontology Normalizer)」、取引先や業界固有の暗黙知、およびルールをAIの手順書へと変換する「QRAFT(RECERQA Rules And Flow Templates)」だ(図3)。それぞれの特長について見ていこう。
図3:RECERQA独自の技術基盤「Quattro」拡大画像表示
QUONはあらゆる形式のデータを、AIが扱いやすい形に変換・蓄積するデータ層だ。日常業務の中で発生する多くのデータを漏れなく正規化し、データベースに蓄積する。
梅田氏は、「そもそもデータが欠損していたり、誤っていたりしたならば、AIを正しく稼働させることはできません。QUONは企業が求める形式にデータを変換し、蓄え続けるための仕組みです。この2年間、私たちはこの研究開発に注力してきました」と説明する。
QRAFTは業界・企業固有のルールを、AIが扱う⼿順書(AOP)へと変換‧保持するレイヤーだ。
「データが大量にあっても、AIが一度に処理できるコンテキストには限界があります。対してQRAFTは、AI向けのマニュアルを保持する層です。『取引先を確認し、この項目を見てデータベースを参照し、入力内容を判断する』といった手順に従って、AIが自律的に業務を遂行する仕組みを提供します」(梅田氏)
例えば、FAXで注文が届いた場合、高精度なAI-OCRが文字起こしを行った後、過去の受注履歴から「最も確からしい品番を引き当て在庫を確保し、納期を伝える」といった一連の業務をQRAFTから呼び出し、Agentが実行するといったような使い方だ。
「営業事務担当者が今まで手打ちして確定させていたルーティンワークを、AIが自律して実行できる点が従来のERPとRECERQAの決定的な違いです。AOPも固定ではなく、人間が訂正することによって差分を認識し、自動更新します。このような人間のフィードバックにより個人の暗黙知が自動で整備され、組織の資産として活かせるようになります」と、梅田氏はその優位性を強調する。
受発注からマスターデータ管理まで、AIがもたらすSCM変革
RECERQAは、図4に示すように、「引合い対応」から「納品」まで、サプライチェーンにおける一連の業務の変革を支援するため、各工程に特化した複数のAIエージェントを展開している。
図4:あらゆる受発注プロセスをカバーする業務特化エージェントを提供拡大画像表示
「例えば、納品消込エージェントでは、発注した商品が正しく納品されたかを確認し、その後の請求を受けて買掛金を起こす一連の業務を自動化します。ある医療機器業界の企業では、同エージェントを利用し納品消込の業務量を約7割削減できました」(梅田氏)
このほかにもリチェルカは、PIM(商品情報管理)とDAM(デジタルアセット管理)を兼ね備えたMDM(マスターデータ管理)を行う「RECERQA Hub」も提供している。
「ある食品卸企業では、従来の基幹システムにおいて、システム上の制約から20項目程度しか管理できなかった情報を、RECERQA Hubによって100項目以上を管理できるようになりました。そうした情報も手入力で行うことなく、増やせるようになっています」(梅田氏)
さらにリチェルカはSCMに関する企業の負荷を抑制するためのBPOサービス「AI-BPO」も展開している。
「AIの対応範囲が広がるにつれ、人の仕事は、例えば『郵便物を受け取って開封し、スキャンしてPDF化する』といったラストワンマイルの物理的作業だけが残るようになります。『そのためだけに人を残しますか?』――この課題をBPOとして引き受け、その後の処理をAIエージェントにつなぐサービスです」と梅田氏は説明する。
既存ERPを残し、AIエージェントを部分導入
企業がいきなり基幹システムを全面刷新するのは容易なことではない。ERPのリプレースには、システムそのものだけでなく、業務プロセスや取引先との関係まで変わる可能性がある。したがって、万が一ERPの稼働が上手くいかなかった場合、ビジネスがストップするという巨大なリスクが生じるからだ。
そこでリチェルカは、既存ERPを残したまま、特定の業務だけをAIエージェントに置き換える導入方法も用意している。これにより、既存の物流システムを使い続けながら、インターフェースを変えたり、その前段の業務をAIで効率化したりすることが可能となる。
「既存のERPや物流の仕組みはそのまま活かしつつ、フロントのインターフェースや入力・前処理の部分だけをAIエージェントで効率化することも可能です。既存ERPを残して受発注エージェントなどの部分導入を行う場合ならば、最短3ヶ月ほどで本番運用を実現できます」(梅田氏)
AIがルーティン業務を担い、人間は判断と交渉に注力
Agentic ERPによってルーティン業務をAIが行うようになれば、現場で働く人々の役割も変わる。梅田氏は「ルーティンワークそのものは、今後なくなっていく」と見る。
そして、人間は営業や交渉、コミュニケーションなど、人間だからこそ価値を発揮できる仕事へ移っていく。
「例えば調達購買では、仕入先との価格交渉があります。長年付き合いのある相手には『今回は値引きしてほしい』と交渉したり、相手の要望を踏まえて条件を調整したりする。こうした仕事は、単純な処理とは異なる人間同士の関係性を伴うものであり、そうした場面で人の力が発揮されるようになります」(梅田氏)
また、AIが判断できない案件を監督することも、人が担う領域となるだろう。梅田氏がイメージするのは、コールセンターのスーパーバイザーに近い役割だ。人間がAIを補助するのではなく、AIが仕事をし、人間がその仕事を監督する。「このような世界は早ければ2、3年以内には到来するのではないでしょうか」と、梅田氏は語る。
シリーズAで17億円を調達、AIでSCMを次のステージへ
2026年4月、リチェルカはプロダクトの本格的な市場展開や事業拡大を目指す資金調達フェーズである「シリーズAラウンド」にて17億円を調達、これにより累計調達額は20億円を超えている。
「これまでの2年間は、データレイヤーのQUONを中心に、OCR、Excel、メールなどさまざまな情報から正しいデータを蓄積する基盤づくりに注力してきました。今後は、その上に業務そのものを担う機能を広げ、顧客業務をエンドツーエンドでカバーしていく計画です」と梅田氏は説明する。
そしてリチェルカは、プロダクトを作るエンジニアだけでなく、顧客の業務を整理し、あるべき姿を描けるコンサルタント、大規模なERPを提案できる営業人材など、各領域で高い専門性を持つ人材を獲得していく考えだ。
「さらに今年6月にはNIPPON EXPRESSホールディングスと資本業務提携を行いました。同グループが持つ陸海空を支える物流ネットワークと私たちのデジタル技術を融合させ、出荷指示からデリバリーまで一気通貫でカバーするサービス開発を進めています」(梅田氏)
AIの進化によって技術そのものが民主化するなか、企業に求められるのは、いかに早くその技術を業務へ取り込めるかである。そうした中で、リチェルカが最も重要視していることは「スピード」である。リチェルカのミッションは「AIの社会実装を通じて、今までの"できない"を解決する」ことにある。最後に梅田氏は「リチェルカは受発注やERPの複雑な課題に対して圧倒的なスピード感と高品質で解決してまいります。業務変革を目指す企業の皆様はぜひ一度、お声がけください」と締めくくった。

●お問い合わせ先

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