[「人間中心のAI」で企業変革を加速する─生成AIの進化・活用のこれから]

効率化ツールから自律的パートナーへ─AIが機能する組織インフラの設計方法:第15回

2026年9月18日(金)岡村 悠久(ソウルドアウト 執行役員CAIO)

AI技術は日々進化を遂げ、社会実装が現実の段階に入っているが、多くの企業ではまだ部分的な活用にとどまり、AIに対する脅威感や不安が依然として存在する。「人間中心のAI活用」を推進するためにはどうすればよいか。本連載では、具体的なアプローチを交えながら、企業がAIとどのように向き合い、活用し、未来の成長に役立てていくかを考察していく。第15回は、博報堂DYグループのソウルドアウトが実践する、AIが組織の情報を活用できる業務基盤のつくり方を紹介する。

 

「AIで効率化する」から「AIに働いてもらう」へ

 組織内でAIを使っているのに、思うようにアウトプットの精度が上がらない──。そんな経験を持つ人は少なくないだろう。原因は、AIそのものの能力ではなく、AIに与える「文脈」の不足や、AIが必要な情報を自ら収集できる環境が整っていないことにあるかもしれない。

 AIを活用してチームの仕事の質や効率を高めるために、組織のリーダーは何に取り組むべきなのか。

 筆者が所属するソウルドアウトは、博報堂DYグループで中堅・中小企業やベンチャー企業を対象に、デジタルマーケティングやAI・DX活用を軸とした事業成長・ネットビジネスを支援している。

 その中で筆者は、生成AIを軸とした事業・組織変革推進に責任を持つポジションにある。本稿で紹介するのは、AI関連事業を担う「AIイノベーション本部」が実践する、AIドリブンな業務基盤づくりだ。

 同本部はもともとエンジニア中心の開発組織だったが、生成AIの進化でコンサルティング、BPR、教育、動画制作まで、業務範囲が急速に広がった。しかし人員を同じペースで増やすことは難しい。そこで、「人が担っている仕事をどうAIで効率化するか」ではなく「AIにより働いてもらうには何が必要か」へと問いそのものを変えてみた。仕事の視点を人からAIへ転換する──この発想の転換が、業務基盤づくりの出発点になった。

アウトプットの質は「与える情報」と「背景」で変わる

 AIへの要求のハードルは低いはずなのに、期待どおりのアウトプットを得られないと感じる場面は少なくない。その原因の多くは、AIの能力不足ではなく、判断に必要な文脈(コンテキスト)が十分に共有されていないことにある。

 例えば、社内向けのメール作成をAIに任せても、普段のコミュニケーションとはかけ離れた、取引先向けのような硬い文面が返ってくることがある。宛先の人物や自身との関係性を知らないAIにとっては、無難で丁寧な表現を選ぶほかないからだ。

 それにもかかわらず、私たちは、AIが社内の人間関係や案件の背景を把握しているかのように話しかけ、モデルの精度が上がれば解決すると考えがちだ。もちろん、背景を毎回詳しく説明すれば期待に近い回答は得られるが、業務のたびに人物関係や案件の経緯を一から説明し直すのは現実的ではない。

 そこで発想を変えた。人間が都度説明する手間を減らし、AI自身が必要な情報を能動的に取得できる環境を整える。この発想から、社内に分散していた情報をAIが横断的に扱える環境の整備に着手した。

●Next:AIを組織に根づかせる「情報アーキテクチャ」、安全にAIが働ける業務インフラの設計

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