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社内に眠る情報を「事業価値」へ─シェルパ・アンド・カンパニーが挑む「無形資産AX」

2026年9月30日(水)

シェルパ・アンド・カンパニーは、複雑かつ信頼性が求められる非財務・ESG情報開示分野で培った独自技術をベースに、企業固有の情報や無形資産をAI Ready化し、事業価値へ転換する「Cierpa AX」を打ち出した。企業内に眠る情報を意思決定に使える「Decision Ready」にし、事業価値へと進化させる、同社のAX(AIトランスフォーメーション)の取り組みについて、代表取締役 CEO 杉本 淳氏に伺った。
提供:シェルパ・アンド・カンパニー株式会社

シェルパ・アンド・カンパニー株式会社 代表取締役 CEO 杉本 淳氏

RAG導入済企業にも立ちはだかる壁──社内情報をAIが正しく読めない

 「社名に冠した『シェルパ(Cierpa)』は、ヒマラヤ登山のガイドを行うネパールの少数民族に由来しています。正解のない領域でプロダクトの提供と業務ノウハウの両面から企業の変革を伴走し、支える存在でありたいという理念を込めています」と杉本氏は強調する。現在、多くの企業で生成AIの導入や社内RAGの構築が進んでいる。しかし、情報があってもAIが情報を正しく読めず、実務に活用できないケースが多い。

 企業には、商談記録、図面、契約書、技術文書、仕様書、社内規定、PDF、画像など、膨大な情報が存在している。しかし、それらは必ずしもデータベースとして整理されているわけではない。むしろ、企業活動の中で長年蓄積されてきた価値ある情報ほど、一定のフォーマットを持たない「非定型文書」として残っており、AIが扱える形になっていないのが実情だ。

 表や図、注記が構造化されていないだけでなく、正確な情報か判断するための出典・根拠までも辿ることが難しくなっている。さらに部署ごとに情報が分断されていたり、記述形式が異なっていたりしているケースも少なくない。テキスト抽出だけでは図表が崩れ、画像化はコストが膨らみ、個別開発では保守できない。

 これらの背景から、企業固有の情報資産・無形資産のAI活用が進まず、ひいては本番業務への実装が困難となっているのだ(図1)。

図1:情報資産はあるが、AIが使える状態になっていない
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100社以上の大手企業の「非財務情報」を読み解いて磨かれた技術

 近年、SSBJ(サステナビリティ基準委員会)、CSRD(企業サステナビリティ報告指令)、ISSB(国際サステナビリティ基準審議会)といった国内外の持続可能性に関する情報開示規制が整備され、企業への開示要請は厳格化している。これを受け、企業はこうしたサステナビリティ開示の対象となる人的資本や環境、ガバナンスなどの膨大な非財務情報の集計や調査票対応に追われているのが現状だ。

 「本来なら企業の持続可能性に関する取り組みを戦略的に開示することで中長期的な企業価値につなげるべき情報が、目先の開示に追われて活用しきれていない状況がありました」と杉本氏は語る。

 そこでシェルパ・アンド・カンパニーが提供してきたのが「SmartESG」である。SmartESGは、企業のサステナビリティ情報の収集・分析・開示をオールインワンで支援する統合型のデータプラットフォームだ。現在、SmartESGは大手企業100社以上で導入されており、特にプライム市場に上場する時価総額千億円以上の企業を中心に導入が進んでいる(図2)。

図2:個々のプロセスを支援する機能とともに、その基盤となるデータベースを提供
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 シェルパ・アンド・カンパニーは4年前にAI事業部を立ち上げ、SmartESGの開発とともに、統合報告書や有価証券報告書など、日本語文書の中でもレイアウトや注記、参照関係が複雑で、信頼性が求められる文書を解析するAI技術を磨いてきた。

GENIACに採択。金融業務に特化したAIモデルを自社開発

 SmartESGの開発・提供を通じて蓄積された知見は、日本の国産生成AI開発のさらなる発展にも貢献しようとしている。2026年6月、経済産業省と国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が実施する、国内の生成AIの開発力強化と社会実装を目的とした国家プロジェクト「ポスト5G情報通信システム基盤強化研究開発事業/競争力ある生成AI基盤モデルの開発(GENIAC:Generative AI Accelerator Challenge)」に、同社が第4期事業者として採択されたのだ。

 今回採択された内容は「金融領域における非定型文書解析と根拠生成モデルの開発」をテーマとしたもの。具体的には、金融業務で扱われる統合報告書や有価証券報告書、決算説明資料といった複雑な文書から情報を抽出する文書解析モデルと、その情報が原文のどの記述に基づくものなのかという「根拠」を特定する根拠生成モデルの開発に取り組んでいる。

 「金融市場では、投融資先の大量の公開情報の確認から情報の抽出、点検、投資判断に至るまで一連の業務プロセスを信頼性高く行うための量的課題があります。しかし現在普及している汎用AIの多くは海外製が多く、ハルシネーションのリスクもありAI導入が進みづらい状況にあります。そこで、汎用AIを上回る高精度の独自モデルを自社開発し、実務者の問いに対する回答だけでなく根拠も合わせて提示でき、人間が最終判断を下せる高いガバナンスと信頼性が評価されたと考えています」(杉本氏)

既存環境に「文書解析レイヤー」を追加し、AI分析を意思決定に繋げる「Cierpa AX」

 そして、このシェルパ・アンド・カンパニーが強みとする文書解析や根拠生成といったAI技術を情報開示関連部門のみならず、全社の「無形資産」の読み解きに展開したものが「Cierpa AX」だ。 Cierpa AXは、社内に眠る企業固有の情報を“AI Ready化”することで、事業価値へ転換することを可能にするものだ(図3)。

図3:シェルパの提供する無形資産AX「Cierpa AX」
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 「Cierpa AXは、マニュアルや品質記録、顧客対応履歴など、企業の無形資産である社内文書を自社開発の文書解析技術で構造化し、本番業務への実装からPL(損益計算書)や財務領域の改善まで、一貫して支援するAXの伴走型サービスです」と杉本氏は強調する。

 「汎用AIでは読み解きが難しい情報を、Cierpa AXはLLMに受け渡す前にAI Ready化します。さらに、情報を抽出するだけでなく、その文書の根拠情報がどこにあるのかまで判別します。これにより、AIが利用できる状態にした情報を担当者や経営層が意思決定に活用し、実際の業務プロセスへ組み込めるようになります」(杉本氏)

 ここが、Cierpa AXと単なる文書管理や生成AIエージェントの導入支援との大きな違いである。既存の社内RAGやシステムを置き換えるのではなく、その前段階に「文書解析レイヤー」としてCierpa AXを組み込むことで、既存環境を活かしながら高度なAI活用を可能にするのだ(図4)。

図4:既存環境に、文書解析レイヤーとして「Cierpa AX」を組み込む
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 企業の独自環境へのAI実装を支援している点も、Cierpa AXの特長である。

 近年、地政学的なリスクも考慮し、自国内でのデータやインフラ、人材等を用いて自律的なAIの運用・開発を行う「ソブリンAI」がにわかに注目を集めている。事実、企業が保有する知的財産や機密情報を、海外製の「パブリックLLM」に展開することに慎重な企業は少なくない。

 Cierpa AXでは、企業自身の環境にAIを実装することを支援している。高精度なAI活用を自社内で利用可能にすることで、既存RAGや社内システムを置き換えず、企業の既存環境に文書解析レイヤーとして組み込める。

 「汎用的なAIの使い方のように、すべてのデータを無制限にLLMへ投入するわけではありません。特定の業務や目的に合わせてインプットからアウトプットまでを絞り込むことができるため、トークンコストも管理しやすくなると考えています」と、杉本氏は語る。

  Cierpa AXはシステム提供にとどまらない、コンサルティングとAI実装・運用設計を一体で提供する伴走体制を用意している。

 「非構造化データをAIで扱える状態にするには、データをどう整理するのか、どの業務で使うのか、どこまでを自動化するのかといった設計が必要になります。私たちはBPOによるデータ取り込みやコンサルティングも行っており、AI、BPO、コンサルティングを組み合わせて、顧客が業務に実装していけるよう、支援する体制を整えています」(杉本氏)

Cierpa AXの4つのユースケース例

 Cierpa AXは大手アセットマネジメント会社や製造業をはじめとする先進企業で検討が進められており、主に4つのユースケースを想定している。

①事業資産AX

 製造業などで、技術文書、仕様書、社内規程などを解析、構造化する。過去の設計資産の検索や再利用が瞬時に行えるようになり、重複開発の防止や開発サイクルの短縮を実現してコスト削減と製品競争力の強化に貢献する。

②顧客接点AX

 顧客からの声や商談記録、応対履歴を解析、売上を生む情報資産へと転換する。

③金融・保険AX

 金融機関や保険業界における複雑な約款、審査基準書、商談記録などの定性テキストを分析し、契約における潜在的リスクや法令違反の兆候を検知して監査業務を高度化する。商談テキストから成約パターンの抽出や解約の予兆検出を行う。

④議決権行使AI

 株主総会の招集通知、有価証券報告書、過去の行使実績や対話記録を横断的に解析し、判断材料となる該当箇所の記述やその根拠をピンポイントで抽出・提示する。投資家は膨大な書類の精読作業から解放され、判断プロセスを大幅に効率化できる。

現在のCIOに求められる、情報資産の価値化

 今日の企業において、社内に眠る情報資産や非財務データをいかに事業価値へと転換していくかは、CIOをはじめとする経営幹部に課された最重要命題だ。

 「PLに表れない情報をいかに価値へと転換していくか、Cierpa AXを通じてそのデファクトスタンダードを作っていきたい」と、杉本氏は意欲を見せる。

 「私たちが創業以来扱ってきた非財務情報には、財務諸表には直接表れないものの、企業の持続的な競争力やリスク耐性を左右し、市場や投資家が評価する無形資産そのものともいえる情報が数多く含まれています。Cierpa AXの推進は、当社のミッションである『非財務情報のポテンシャルを開放する。』ことにもつながります。無形資産にアプローチすることで利益を生み出し、事業価値・企業価値の向上につなげていく。その先に、我々が掲げるビジョン『利益とサステナビリティの融合』があると考えています。社内に眠っている無形資産や情報資産にアプローチすることで “攻めのAX”を実現し、業務効率化にとどまらず、事業価値・企業価値の向上のための支援に尽力していきます」(杉本氏)


●お問い合わせ先

シェルパ・アンド・カンパニー株式会社

URL:https://cierpa.co.jp/

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