コンピューティング利用の近未来像を紹介するレノボの年次カンファレンス「Lenovo Tech World」が、今年も10月24日と25日の両日、米国テキサス州で開催された。今年のメインテーマは、AIへの社会的な期待の高まりにいち早く呼応した「AI for All」。では、AIは今後、社会にどう浸透していくのか。そこで語られた内容をダイジェストで紹介するとともに、12月5日に東京・港区で開催される「Lenovo Tech World Japan 2023」の見所を解説する。
提供:レノボ・ジャパン合同会社
生成AIの弱点を克服する新たな基盤モデル
「AI for All」の意味するところは、「企業や組織、個人を問わない、あらゆるユーザーのAI活用」である。その実現に向けレノボが必要性を訴えたのが、タイプの異なるAIの基盤モデル(Foundation Model)の活用だ。
背景には、生成AIの活用において現時点の課題と指摘されているデータのセキュリティがある。基盤モデルのうちOpenAIの「ChatGPT」など、クラウド上に一般公開され、誰でもアクセスできるタイプが「パブリック基盤モデル」だが、その最大の弱点は、自社が提供した情報をAIが学習し、第三者への回答に用いることでの情報漏洩リスクだ。ChatGPTの利用を禁ずる企業の多くも、この点を懸念してのことである。
この問題へのレノボの“解”が、クローズドな環境に配備され、企業や組織、個々人のナレッジを追加学習した「プライベート基盤モデル」や「パーソナル基盤モデル」だ。
レノボ・エンタープライズ・ソリューションズ ソリューション推進本部 本部長の早川哲郎氏は、「企業や組織、個人のそれぞれでセキュリティに求めるレベルや処理するデータ量は異なります。その点を踏まえて開発された各基盤モデルの使い分けやカスタマイズ(追加学習)により、アクセスが適切に制御された、あらゆるユーザーの多様かつ高度なAI活用が実現します」と説明する。
レノボでは、ハードウェア面からも新たな基盤モデルの実現を推進する。そこでの具体策が、部門用のエッジサーバーや、個人が利用するスマートフォン/タブレットなど、あらゆるAIの利用シーンに最適化されたハードウェアへの基盤モデルの埋め込みだ。結果、AI処理は各デバイス内で完結し、情報漏洩リスクは格段に低減されることとなる。
あらゆる利用シーンに合致したエッジサーバーを準備
今回のLenovo Tech Worldでは、NVIDIAなどとのパートナーシップの強化も発表された。ただ、レノボでは従来から、「Smarter Technology for All」戦略の下、顧客体験の向上に寄与する技術を各社との協業により自社製品に精力的に取り込んできた。レノボ・ジャパン PC・スマートデバイス事業本部 企画本部 製品企画部 部長の大谷光義氏は、「今回の発表はその延長と位置付けられます。AIの用途が今後、急拡大すると予見される中、当社としてはより多くの選択肢を提示できるよう、AI領域でもレノボは今後、アライアンスを加速させることになります」と解説する。
こうした将来ビジョンの下、レノボが手掛けるデバイスやインフラであるサーバー、サービスは新たな進化を始めている。
大谷氏によると、まずデバイスとインフラ面では、データの分散処理が進む中での「適材適所のAI処理」に向けた、エッジサーバーの製品ラインナップの拡充とさらなる機能強化が柱の1つになるのだという。
クラウドの普及を追い風に企業ではインフラのクラウド集約が一度は進んだが、近年になり現場データのリアルタイム処理に向けた、現場へのインフラの再配備の動きが広がっている。そこでのユースケースはAI活用が多く、エッジサーバーはAI処理と極めて親和性が高いと解説する。
知見やノウハウを提供してAI活用を伴走型で支援
その提供におけるレノボの強みが、製品ラインナップの広範さだ。エッジサーバーは、デバイスから進化したタイプとサーバーから進化したタイプに大別され、レノボのエッジサーバー「ThinkEdge」は両タイプを取り揃える。組み込み型やコンパクト型、さらにHCI向けOSを選択できる製品も用意するなど、製品はバラエティに富む。
「当社はPCとサーバーの両技術を長年にわたり蓄積してきました。その知見を基に、今後はGPUなどによる処理能力向上のみならず、『AI for All』の実現に向けて、例えば、街中や建設機械、作業車などの特殊な環境下での利用に耐え得る製品をラインナップに順次、追加していきます」(大谷氏)
一方の、サービスの進化ではLenovo Tech Worldで発表された「Lenovo AIプロフェッショナルサービス」が、今後を展望するうえで大いに参考になるという。
現状、国内のAI技術者は現時点で決して多くはなく、その育成に時間を要すことがAI活用における体制面の課題に挙げられている。Lenovo AIプロフェッショナルサービスはレノボのAIの知見を基に、AI戦略策定のためのワークショップや導入ロードマップの策定、システム設計/導入、運用管理などを引き受け、企業のAI活用を伴走型で包括支援するものだ。
レノボ・ジャパン サービスセールス事業部 サービスプロダクトマーケティング本部 サービスプロダクトマーケティング部 部長の八木下敦氏は、「何事も一から立ち上げるの幅広い知識や経験が必要で、それだけ時間も要します。対して当社は今後、グローバル企業としての培った知見を活かしたプロフェッショナルサービスやマネージドサービスとして、AIをはじめとする企業のコンピューティング施策を支援します。それがひいては、お客様の知見蓄積にもつながるはずです」と力を込める。
“Tech World”が提示するAI活用の在るべき姿
このように、AIによるコンピューティング環境の変化に対応するかたちで、レノボでは戦略や製品の見直しを進めている。そこでの成果、さらに、それが企業のデジタル変革にどう貢献するかを紹介すべく、レノボ・ジャパンとレノボ・エンタープライズ・ソリューションズは12月5日、東京・港区のANAインターコンチネンタルホテルで「Lenovo Tech World Japan 2023」を開催する。内容は次のようになる。
まず、冒頭に行われるのは「AI for ALL~インテリジェントな変革に向けて」と題されたキーノートセッションだ。米国での講演内容を踏襲しつつ、AIにとどまらない多様な切り口から、レノボグループの経営トップがゲストスピーカーとともに同社ソリューションの国内での展開戦略などを、グローバルのAIの最新事例を交えつつ解説する。
その後は、「生成AI」「ハイブリッドワーク」「サステナビリティ」「エッジコンピューティング」「アズ・ア・サービス」の5つサブ・テーマによるブレイクアウトセッションだ。
それらを個々に解説すると、1つ目の「生成AI」での見所は、AI学習を最適化するサーバーと、デジタルツインの実践法の紹介だ。まず前者では、x86サーバーとストレージである「ThinkSystem」を用いた、「管理性」「パフォーマンス」「セキュリティ」などの要件を満たすエッジからクラウドまでのAIに最適化された環境の整備法を、事例を踏まえつつ紹介する。また、後者では、エヌビディアのデジタルツインソリューション「OMNIVERSE」と、レノボのサーバーやワークステーション、AR/VRなどの多岐にわたる製品を組み合わせた、最先端事例に基づく現時点でのデジタルツインの現実解を提示する。
「AIは膨大な計算を必要とし、大量の電力消費を伴います。その対応に寄与し、DCのPUEの改善にも大きく貢献する水冷サーバー技術『Lenovo Neptune』を解説するセッションも用意しています」(早川氏)
日本企業に合致した職場の在り方をレノボが提案
2つ目の「ハイブリッドワーク」でのポイントが、働く場所が多様化する中で今の日本企業に合致した働く環境の在り方に対してレノボからの提案である。オフィスの内外、フリーアドレスや固定席の活用方法など、働く場のハイブリッド化が進む中、遠隔地とオフィスをシームレスに繋ぐ方法や、そのために採用すべき技術をパートナー企業とともに議論し、併せて、最新のThinkPadや周辺機器を用いつつ、最新技術がコラボレーションやセキュリティ、サステナビリティ、さらに生産性向上にどれほど貢献するかも紹介する。
「働き方とともに会議室の利用の在り方も確実に変化しつつあります。そこで、従来からの会議室のコンセプトを刷新するソリューションとして、オフィス家具大手のイトーキ様が新たに開発した会議室用の机を中心に弊社製品やその他のパートナー様が有する周辺機器を組み合わせご披露します」(大谷氏)
3つ目の「サステナビリティ」に関しては、製品への再生由来素材の採用など、レノボとしてのESGの取り組みとともに、CO2オフセット・サービスやアセット・リカバリー・サービスなど、レノボが提供する環境に寄与するサービスなどについて、ユーザーの声を交えつつ解説する。
4つ目の「エッジコンピューティング」では、「エッジでのAIワークロードの効率管理」を狙いにエヌビディアやヴイエムウェアと共同で提供する、高密度GPUプラットフォーム「Lenovo ThinkSystem生成AIソリューション」を紹介する。
「『Lenovo ThinkSystem生成AIソリューション』は、中堅企業から大企業までで活用を見込める、ターンキー型ソリューションです。従量課金型サービスとしても利用でき、その強みを生かしたAIのエッジへの展開法も提示します」(早川氏)
AI活用やDXに向けた貴重かつ有益な情報源
5つ目の「アズ・ア・サービス」の柱となるのが、機器を購入することなく、オンプレミスや希望する場所で、レノボのデータセンター用のハードウェアやサービスが利用可能な、消費電力に基づくサブスクリプションベースの販売形態である「Lenovo TruScale」だ。その具体的なメリットや利用シーンについてユーザー事例などを基に個別具体的に紹介する。併せて、システム部門のDXへの注力を支援するレノボの新マネージドサービス「Digital Workplace Solutions(DWS)」を紹介するセッションも用意する。
「デジタル活用で企業が直面することの多い運用を中心とした課題への対応を支援するサービスを提供するDWSの利用を通じ、システム部門は作業負担を抜本的に軽減できます。セッションでは、多くの要望が寄せられていた統合エンドポイント管理やMDRなどのサービスなども紹介します」(八木下氏)
ここまでの説明の通り、Lenovo Tech World Japanの各セッションには、AI利用が本格化する中で理解しておくべき情報がふんだんに盛り込まれている。しかも、インフラからデバイス、さらにサービスまでの情報を一度に得られるのも、本イベントの大きな魅力であり特徴だ。
デジタル、さらにAI活用による他社との抜本差別化に向け、Lenovo Tech World Japanはまたとない情報収集の場となりそうだ。
ハイブリッドワークに適したレノボ「ThinkPad」シリーズ
高い堅牢性と使い勝手の良さで長年モバイルワーカーの高い支持を得てきたレノボの「ThinkPad」。その代名詞とも言える「ThinkPad X1」シリーズの最新モデル「ThinkPad X1 Carbon Gen 11」は、第13世代インテル® Core® プロセッサーによるハイパフォーマンス、軽量化・スリム化とアスペクト比16:10の14型画面を両立させた一台だ。このほかにもレノボでは、ユーザーのニーズに応える多彩案ラインアップを提供しているが、特にハイブリッドワークで効果を発揮するのが、「インテル® vPro® テクノロジー」対応CPU搭載モデルだ。このテクノロジーはリモート管理機能やセキュリティ機能を強化するものであり、リモートからOSのパッチ適用を実施したり、ファームウェアに対するマルウェアをブロックしたりすることができる。ハイブリッドワーク環境下でのセキュリティ強化に資するものと言えるだろう。
●お問い合わせ先
レノボ・ジャパン合同会社
URL :https://www.lenovojp.com/business/