[事例ニュース]
第一生命とNRI、顧客接点/コミュニケーション環境としてのメタバースの有用性を検証
2024年2月26日(月)IT Leaders編集部
第一生命保険(本社:東京都千代田区)は、野村総合研究所(NRI)と共同で、保険会社がメタバースを顧客コミュニケーションに活用する検証の結果を発表した。2023年10月~同年11月に実施し、メタバースを通じて新たな顧客層にアプローチ可能で、保険加入や資産形成などの相談への展開が期待できることを確認したという。NRIが2024年2月22日に発表した。
第一生命保険(本社:東京都千代田区)は、野村総合研究所(NRI)と共同で、保険会社がメタバースを顧客コミュニケーションに活用する検証を実施した。
第一生命は、「メタバースの利用がこれまでの『世間の注目を集める』段階から『実際のビジネスにおける活用と展開を追求する』段階へと移行しつつある」と捉え、その有用性を確かめる目的で検証に取り組んだ(画面1)。
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表1は、事前に実施したアンケート調査の結果である。2023年8月25日~同年8月30日の期間で、国内の18歳~69歳(有効回答数3981人、性・年代で均等割り付け)を調査対象に、属性、ライフデザインへの意識と行動、保険に関する行動、投資に関する行動、メタバースの利用について尋ねている。
事前調査の結果から、メタバースの利用者は担当者に相談したい意向が高い一方、相談のための面談に至るケースは少ないことが分かった。ここから第一生命は、「メタバースへの利用意向が高く、現在保険未加入である層は、メタバースを通じて保険会社が新たに接点を作れる可能性を持った潜在顧客層である」との仮説を立てた。
分類 | 調査結果 | |
---|---|---|
メタバース利用者数 |
国内のメタバース利用者4は全体の4.7% |
|
金融機関への相談意向 | 全体 |
全体の19.7%がメタバース上の「お金やライフプランの相談」を、15.4%がメタバース上の「保険相談・契約」を利用したいと回答 |
メタバース利用者 |
利用者の41.5%がメタバース上の「お金やライフプランの相談」を、39.9%が「保険相談・契約」を利用したいと回答 |
検証では、潜在顧客層への効果を検証するため、メタバース空間上に仮想の商談スペース「バーチャル人生設計ワールド」を構築し、事前アンケートの参加者の一部に体験してもらった。同スペースは、メタバース構築ツール「cluster」7を用いて、NRIネットコムがUI/UXデザインを担当した。
バーチャル人生設計ワールド内では、第一生命経済研究所が開発した、ライフイベントを疑似体験するすごろくゲーム「ライフデザイン3.0ゲーム」のメタバース版を操作できる。参加者は、ゲームを通じて、「健康」「お金」「つながり」という、人生における3つの資産について考え、働き方や生き方をみずから選択し、やり直しや方向転換をしながら、各種の人生を疑似体験していく。また、参加者はワールド内をアバターで動き回りながら相互にコミュニケーションがとれる。
ライフデザインへの積極性、性別、年代などの属性が多様となるように選んだ24人の参加者(潜在顧客層14人を含む)に、バーチャル人生設計ワールドを実際に体験してもらった後、満足度や体験前後での意識変化などをアンケートで尋ねた。
項目 | 回答者数(24人) | |
---|---|---|
潜在顧客層(14人) | その他(10人) | |
自分の生き方や働き方を考える意欲や関心(ライフデザイン意識)が高まった | 14人 | 9人 |
ゆとりをもって働ける経済的な余裕を確保したいという考えに変化があった | 13人 | 8人 |
今後、メタバース上の「将来の資産のシミュレーション」「お金やライフプランの相談」「保険相談」のいずれかを利用したい | 13人 | 6人 |
表2はその結果である。ほかには、以下のことも確認している。
- 18人が保険やライフデザインに関する情報に関心を持ち、そのうちの12人がワールド内のリンクから、関連情報を紹介する外部サイトを実際に訪問した。
- 14人が「メタバース上のアバターは話しかけやすい」、12人は「メタバース上では対面では言いづらい話題も話せる」と感じた。
検証の結果、メタバースによる体験を通じて、新たな顧客層に対する教育・啓蒙効果が確認できたとしている。「参加者におけるメタバース上の相談意向も高く、事前アンケートで判明した潜在顧客層に対して保険会社がメタバース上でアプローチすることで、保険加入や資産形成に対する相談への展開が期待できる」(第一生命)
第一生命とNRIは今後、メタバース空間におけるライフイベント体験などの人生シミュレーション環境の提供、参加者の行動変化分析、アバターや生成系AIを活用した金融に関連するコンサルティングサービスや金融商品の販売などを行うことを視野に入れている。