アシストは2013年12月10日、その事業を分離・独立させた新会社、のれん（勝田誠社長）を設立と発表。2014年1月に、最新版「NOREN6」を発売することも明らかにした。
Webビジネスを実施しているかどうかとは関係なく、今や企業に欠かせないITツールの1つがCMSだろう。より正確にはWCM（Web Contents Management）とも呼ばれるCMSは、商用製品やオープンソースソフトウェア（OSS）がせめぎ合う、競争の激しい分野だ。代表的なものとして、商用製品では、Movable Type(シックス・アパート）、 SITE PUBLIS（ミックスネットワーク）、TeamSite（オートノミー）、DBPS（パナソニックソリューションテクノロジー）、HeartCore（ジゾン）、Sitecore（サイトコア）、OSSでは、WordPressやDrupalといったソフトが挙げられる。
そんな中で大手の一角を占めるのが、アシストが2002年10月から販売しているCMS「NOREN」だ（名称は、Webサイトは「企業の顔＝のれん」から付けたという）。同社は12月10日、その事業を分離・独立させた新会社、のれん（勝田誠社長）を設立と発表。2014年1月に、最新版「NOREN6」を発売することも明らかにした。
新会社を設立したのは、意思決定のスピードを速めてCMSに対する顧客ニーズの多様化や販売パートナーの要望に対応しやすくするため。NORENは韓国I-ON COMMUNICATIONS開発／販売する「ICS」のOEMだが、新会社の資本金は3000万円でアシストが全額出資する。勝田社長は「開発元のI-ON社や販売パートナーと連携を密にし、2016年末までに売上高10億円を目指す」と語る。それに向け、これまでリーチできなかった中規模以下の企業向けの特定ライセンスを用意したり、クラウドサービスでの利用を可能にしたりする計画だ。I-ON社のオ ヂェチョル社長は「韓国でのシェアは7割。日本でも5割以上を」と、新会社に期待を寄せる。
NOREN6は、大幅な機能強化を施した。「顧客の声を聞いて合計100の新機能を実装した」（同社）。ぴったり「100の機能」は違和感がある。これはある種の宣伝文句と捉えるべきだが、いずれにしてもかなり大幅な機能強化だ。例えば、登録や配信などのNORENを構成するモジュールを複数のサーバーに分散配置できるようにした（これまでは同一サーバーにインストールする必要があった）。また、利用者の行動に伴って表示内容を変える動的表示機能や(図1）、スマホからコンテンツを登録する機能などを追加した。
もう一つ、見逃せないのが「NOREN6はコンテンツ管理システム（CMS)から、コンテンツ管理プラットフォーム（CMP)へとポジショニングを変える」という点（図2）。Webで配信するコンテンツだけを管理するCMSから、そのほかの関連情報－－利用者の購入履歴や製品の製造／流通状況ーーを含めた、広範囲なコンテンツを管理する基盤に変わっていく。バックエンドの情報システムと密に連携するようになるのは必然。
ともすれば営業／マーケティングや広報部門のためのといった捉え方になりがちのCMSだが、そうではなくなりつつあるわけだ。余談になるが、Webマーケティングの領域ではこれらとは別に、データマネジメント・プラットフォーム（DMP）という概念が普及しつつある。狭義には利用者のアクセス履歴管理とそれに基づく広告配信先の管理を行うプラットフォームだが、これにしても在庫管理、販売管理など既存システムと連携する。
マスターデータ管理とモバイルデバイス管理という、「2つのMDM」が示すように、IT分野では次々に3文字略語が出てくる。2つのMDMのように明らかに異なるものならまだましだが、CMS、CMP、DMP、あるいはDWHなどはデータや情報をハンドリングする点で近接する。混乱しないように注意したい。
なおNOREN6の販売開始は1月24日、一般出荷は3月の予定。稼働OSはWindows、Linux、UNIXで、価格は144万円(レンタル版)から、となっている。
