LegalOn Technologiesは2024年4月9日、法務管理クラウドサービス「LegalOn Cloud」を発表した。同年4月15日から提供開始する。契約書の作成・締結から締結後の管理、法務相談やリサーチなど、法務担当者の多岐にわたる業務を、AIを活用して包括的に支援する。同日に開いた発表会では、同社の事業戦略や森・濱田松本法律事務所との業務提携などについて説明した。
LegalOn Technologiesの「LegalOn Cloud」は、企業の法務担当者の業務領域全体をカバーする複数の機能を備えたクラウドサービスである。AIを活用し、案件管理から契約書の作成・締結、契約締結後の管理、法務相談やリサーチといった各業務の高度化や、負担軽減による迅速化を図る。2024年4月15日に提供開始予定で、すでに200社での導入が決定している。
LegalOn Technologiesは2017年4月に創業し、リーガルテック関連サービスを開発・提供している。2022年12月に社名をLegalForceから現在のものに変更。AI契約レビューサービス「LegalForce」やAI契約管理システム「Legal Forceキャビネ」といったサービスを展開し、グローバルでの導入社数は延べ5000社であるという(関連記事:人手不足で多忙の法務部門を救う「リーガルテック」、最新動向と活用事例)。
法務部門の業務効率化を妨げる問題とは
2020年以降のコロナ禍に伴うテレワークの導入や定着を追い風に、リーガルテック(LegalTech)関連サービスの利用が広がっている。市場には、電子契約やCLM(Contract Lifecycle Management:契約ライフサイクル管理)、リーガルリサーチといった領域で多数のサービスが存在する。同社によれば、2023年10月時点で、国内企業における電子契約サービスの導入は約8割に達するという。
一方で、こうしたサービスの導入後も、法務担当者の業務効率化には課題が残っている。同社が行った、国内企業の法務組織/部門を対象にした調査では、4割以上の企業で業務の効率化・時間短縮や人手不足の解消を課題に挙げているほか、業務の属人化を解消できていない企業も3割近くに上る(図1)。
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業務効率化が進まない原因について、LegalOn Technologies 執行役員 CPOの谷口昌仁氏(写真1)は企業の法務組織が抱える3つの問題を指摘した。
まず、法務組織の多くが、複数のリーガルテックサービスを利用し、サービス間の連携を手作業で行っていることを挙げた。法務関連業務は多岐にわたり、それぞれの専門性や難易度も高い。担当者は各業務に特化したサービスを複数契約するが、提供事業者は異なる場合が多い。その場合、サービス間の情報を手作業で連携せざるをえず、手間がかかっているという。
また、法務案件に関連する情報が相互に紐づけられていないことも問題であるとした。例えば契約締結までに、調印済みの契約書やドラフト、業務部門や顧問弁護士とのやり取り、参考にした過去の契約書など、多くの情報が発生する。こうした関連情報が相互に関連づけされずに分散しているため、必要な場合はそれぞれ調べなくてはならなくなるという。
さらに、法務の対象業務には多くの前提知識が必要とされる。法務担当者が案件の論点を洗い出すためには、過去の類似案件や法令、ガイドラインなどに関する知識を基に確認や調査を行う必要があるが、法務担当者の業務は多岐にわたり、しかも複雑化しており、必要な情報を素早く見つけることが容易でないという問題がある。
法務関連業務全体をカバーするプラットフォーム
谷口氏は上述した3つの問題の解消に向け、3つのコンセプトからLegalOn Cloudを開発したとして、それらを説明した。
コンセプトの1つが、単一のプラットフォームで法務・契約業務すべてをサポートすることだ。LegalOn Cloudは契約業務に限らず、法務担当者の業務全般を包括的に支援する機能群を用意する。これらが利用するサービスごとに情報が分断されている状況を改善するという(図2)。
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機能は順次リリースする予定だ。2024年4月のサービス開始時点では、案件に関するやり取りや情報の管理を行う「ワークマネジメントサービス」、契約書の審査や作成を行う「レビューサービス」を提供。契約締結の経緯や取引のリスクを管理する「コントラクトマネジメントサービス」は同年夏頃に、「電子契約サービス」と「リサーチサービス」は同年中に提供を予定している。
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