[ユーザー事例]
年間約4割のコスト削減、横河電機のCIOが語るFinOps/クラウドコスト最適化の秘訣
2024年11月18日(月)日川 佳三(IT Leaders編集部)
企業のクラウドサービス利用が拡大し続ける中、クラウドコストを可視化・最適化するFinOpsのアプローチが注目を集めている。FinOpsを含むITファイナンス管理・IT投資最適化の方法論「Technology Business Management(TBM)」の普及促進に取り組むTBM Council JapanとTBMプラットフォームベンダーのApptioが2024年8月28日に開催した「Japan TBM Summit 24」の事例セッションに、横河電機CIO/デジタル戦略本部長の舩生幸宏氏が登壇。FinOpsを徹底し、ITリソースの無駄を継続的に省く仕組み・体制づくりに挑む同社の実践を紹介した。
近年、企業のクラウドサービス利用が急速に増している。従量課金制のため、利用状況によってはコストがかさみやすく、従来のITコスト管理手法では対応が困難になりつつある。そうした中で注目を集めているのがFinOps(フィンオプス)、クラウドサービスへの支出の最適化を図る取り組みである。
Apptioは、FinOpsを含めたITファイナンス管理・IT投資最適化の方法論「Technology Business Management(TBM)」を提唱し、それに基づいたITファイナンス管理ツールをクラウド型で提供している。
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Apptioが、TBMの普及促進に取り組むTBM Council Japanと共に開催した「Japan TBM Summit 24」の事例セッションに、横河電機で常務執行役員(CIO)デジタル戦略本部長を務める舩生幸宏氏(写真1)が登壇し、同社の取り組みを説明した。
横河電機は、東京都武蔵野市に本社を置く工業計器・プロセス制御システム専業のグローバル電機メーカーである。事業内容は制御、計測、通信、ライフサイエンスなど多岐にわたる。
近年の同社は、グループ全社を挙げてデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進。生産・製造のデジタル化が導く「スマートマニュファクチャリング」を指向している。舩生氏によると、その過程でデータの管理やAI処理などの需要を背景にOTとITのクラウド化が急速に進み、とりわけクラウドにかかるコストの適正化が大きな課題になっていたという。
業務システムのクラウド化が急速に進み、ITコストを押し上げる
図1は、横河電機のDX/クラウド化の進捗状況だ。社内システムのスリム化・標準化を進める中で、業務システム/アプリケーションのクラウド化が急速に進んでいることがわかる。主な目的はシステム構築のアジャイル化(柔軟化・迅速化)と電力消費量の削減で、2023年度時点で全システムの77%をクラウド化。一方で、クラウドにかかる費用が大きく上昇していた。
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クラウドコストの難点について舩生氏は、「放っておくと販売管理費(SGA)として経費になってしまう。クラウドベンダーからはまとまって請求がくるので中身の詳細が分からない。投資、経費、原価を分類できないと、すべて経費になってしまう。損益計算書(P/L)へのインパクトが大きい」と説明した。
そこで、2022年度にクラウドコストを削減するための「FinOpsチーム」が社内で立ち上がった。IT部門(クラウドインフラ管理者)と業務部門(クラウドコスト管理者)だけだとコスト削減が進まないので、第3の組織としてFinOpsチームが機能するという。このとき、クラウドコストの可視化にApptioを導入している(図2)。
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FinOps──クラウドコストの削減・最適化の定着を図るべく、月1回の会議を開催している。CIO、FinOpsチーム、情報システム部門、業務部門が参加する。「FinOpsの成功には、目標の合意、予算進捗管理、継続的な改善を推進するトップマネジメントの一貫したサポートが不可欠だからだ」(舩生氏)。
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