[ユーザー事例]
ITコスト可視化が業務部門との対話を深め、的確な意思決定を可能に─みずほFG
2024年9月4日(水)日川 佳三(IT Leaders編集部)
ITファイナンス管理・IT投資最適化の方法論である「Technology Business Management(TBM)」。その普及を担うTBM Council JapanとTBMプラットフォームベンダーのApptioは2024年8月28日、年次イベント「Japan TBM Summit 24」を開催した。そのユーザー事例セッションに、みずほフィナンシャルグループ 取締役兼執行役 グループCIOの金澤光洋氏が登壇。TBMに基づいたITコスト構造の可視化により、業務部門との対話を深め、的確な意思決定を可能にした取り組みを紹介した。
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ITファイナンス管理・IT投資最適化の方法論である「Technology Business Management(TBM)」。その普及を担うコミュニティ組織のTBM Council JapanとTBMプラットフォームベンダーのApptioは2024年8月28日、東京都内で年次イベント「Japan TBM Summit 24」を開催した。
同イベントのユーザー事例セッションに、みずほフィナンシャルグループで取締役兼執行役 グループCIOを務める金澤光洋氏(写真1)が登壇し、TBMに基づいたITコスト構造の可視化の取り組みを紹介した。。
「なぜITには多額のコストがかかるのか」は業務部門には分かりにくい
みずほフィナンシャルグループは、2022年12月にApptioのTBMサービスを導入し、ITシステムにかかるコストの可視化プロジェクトを推進。これにより、業務部門とIT部門の会話が深まり、IT投資の意思決定が的確に、かつやりやすくなったという。
「事業にはITが不可欠だが、なぜITにはこれほどのお金がかかるのかが業務部門からは分かりにくい。コスト構造を可視化することが重要だ」(金澤氏)。
最初の取り組みとして、Apptioを用いて全社のアプリケーションのコスト構造(ソフトウェア、ハードウェア、人件費など)を可視化した。アプリケーションごとに、どの階層に、どれだけのコストがかかっているかが分かるようになった。「利用頻度が低く重要でもないアプリケーションが高価なインフラに乗っているといった状況も把握できるようになった」(金澤氏)という。
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その後、ITシステムのプロジェクト管理にも、ApptioによるTBMの方法論を適用。走っているプロジェクトの数、個々のプロジェクトのステータス、関与している担当者、プロジェクトの目的(「売上を伸ばす案件」か「現状の業務を効率化する案件」かなど)などを把握できるようになった。
今後は投資・経費シミュレーションにも取り組む。「稼働済みのシステムの維持費が今後どう推移するか、現在開発中のシステム案件や、開発を要望しているシステム案件を将来維持するのにどのくらいのコストがかかるのかなどを、業務部門みずからシミュレーションできるようにする。そうなると、投資におのずと優先順位が付き、システムの更改・廃止をいつにするかといった意思決定が的確に行えるようになる」(金澤氏)。
ベストプラクティスに基いてITファイナンスを高度化
Apptioを導入する以前のみずほフィナンシャルグループでは、役員からの「ITのコストを可視化してほしい」といった要求に応じて、IT部門がつどExcel資料を作成していた。そのうえで、「別の、こういう切り口で、3年くらい時系列で並べてほしい」といった追加の要求に手作業で応えてきたという(図2)。
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その時々のタイミングで資料を作ることはできる。しかしながら、過去に作った資料を現在のデータで作り直すといった際に、どのようなデータを使ってどのように資料を作ったのかを忘れているため、一から作り直すといった手間が発生していた、と金澤氏は振り返る。
●Next:「財務分析において、何をどう見るかの論争に時間をかけたくなかった」
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