[コストを価値に変える─バリューエンジニアリングで解き明かすデータ基盤の真価]

投資効果の解像度を上げる─攻めのデータ活用に踏み切るためのロジック:第3回

2026年2月20日(金)鄧 虓(Snowflake Value Engineering, Japan & South Korea Lead)

組織にとってデータ基盤は、ビジネスの意思決定や戦略立案、新たな価値創造を支える経営基盤にほかならない。一方で、データ基盤やデータ活用への投資対効果(ROI)の算出は難しく、投資が試験的な段階にとどまり、本格的な活用に至らない組織は少なくない。本連載では、バリューエンジニアリングの方法論と事例に基づいて、データ基盤やデータ活用へのROIを明確化するための考え方や実践的手法を4回にわたって紹介する。第3回となる本稿では、新たなデータ活用のユースケースを実装する場合の効果推定のアプローチを、具体的な事例と一般化されたフレームワークを用いて解説する。

"攻め"のデータ基盤投資を阻む障壁を乗り越えるには

 前回(第2回)では、既存のデータ基盤をモダナイゼーションする場合、つまり「守り」や「足場固め」の投資における効果測定について解説しました。そこでの主眼は、レガシーシステムの刷新によるデータエンジニアリングやシステム運用の「生産性向上」にあり、将来的に回避できる増員コストや削減できる保守工数を「みなし効果」として定量化するアプローチを紹介しました。

 第3回となる今回は、よりビジネスの最前線に近い「攻め」の投資、すなわち「新たなデータの活用方法(ユースケース)を実装する場合」に焦点を当てます。

 昨今はAIブームを背景に、データ活用の事例は枚挙に暇がありません。その内容も、「製造現場から得られるIoTデータの解析を通じた歩留まりの改善」「AIによるグローバルサプライチェーンの最適化」「製品の稼働データを活用したアフターサービスの強化」など多岐にわたります。これらの取り組みはコスト削減だけでなく、売上拡大や競争力強化に直結するポジティブな取り組みとして、経営層や事業部門から大きな期待が寄せられています。

 しかし、いざ具体的な投資承認のフェーズになると、多くのプロジェクトリーダーが厚い壁に直面します。「そのシステムを入れたら便利になるのは分かるが、業績の向上につながるのか」「投資回収に何年かかるのか」といった問いに対し、明確な財務ロジックで答えられない場合があるのです。その結果、野心的なプロジェクトが頓挫したり、予算規模を縮小した小規模なPoC(概念実証)止まりになってしまったりするケースが後を絶ちません。

 なぜ、新しいデータ活用施策の効果説明はこれほどまでに難しいのでしょうか。その最大の原因は、データ活用が業務プロセスやビジネス成果に与える影響を測る際の「解像度」が粗いことにあります。特に業務部門が関与しないデータ活用の検討において、こうした傾向は顕著です。

 どの業務が、データ活用によってどのように、どの程度変わるか。本稿では、この解像度を高め、投資効果を納得感のあるロジックで定量化するためのフレームワークと実践例を紹介します。

写真1:データ活用によって、どの業務が、どのように、どの程度変わるか。データ活用が業務プロセスやビジネス成果に与える影響を測る際の「解像度」を高めることが投資効果の最大化につながる(写真:Getty Images)

●Next:データ活用の効果を「深さ」と「広さ」で立体的に捉える

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