[コストを価値に変える─バリューエンジニアリングで解き明かすデータ基盤の真価]
生産性向上を軸に、データ基盤刷新のインパクトを可視化する:第2回
2025年10月17日(金)鄧 虓(Snowflake Value Engineering, Japan & South Korea Lead)
組織にとってデータ基盤は、ビジネスの意思決定や戦略立案、新たな価値創造を支える経営基盤にほかならない。一方で、データ基盤やデータ活用への投資対効果(ROI)の算出は難しく、投資が試験的な段階にとどまり、本格的な活用に至らない組織は少なくない。本連載では、バリューエンジニアリングの方法論と事例に基づいて、データ基盤やデータ活用へのROIを明確化するための考え方や実践的手法を4回にわたって紹介する。第2回となる本稿では、既存のデータ基盤をモダナイゼーションする場合の効果推定のポイントを取り上げる。

第1回で、データ基盤への投資効果を「基盤的効果」と「業務・事業効果」に分類しました。基盤的効果は業務・事業効果の前提となるもので、両者は関連し合って発生します。
ここから、データ基盤への投資の2つのパターンについて見ていきます。それぞれで企画に関与するステークホルダーが異なることが多いため、分けて考えていきます。
1. 既存のデータ基盤をモダナイゼーションする場合
2. 新たな活用方法(ユースケース)を実装する場合
今回はまず、1.のパターンから取り上げます。既存のデータ基盤のモダナイゼーションは、レガシーシステムの技術的制約や運用・管理の高度化を主な動機とし、どちらかと言えばテクノロジー主導のモチベーションが優勢です。プロジェクトの主要なステークホルダーはデータプラットフォーム管理部門やデータエンジニアリング部門で、TCO(総所有コスト)の削減や業務生産性の向上といった基盤的効果が重視されます。
もちろん、最終的なゴールは業務・事業効果であり、業務部門と技術部門が協力して進めるプロジェクトは、それを念頭に立案します。しかし、多くのモダナイゼーションプロジェクトは、少なくとも初期段階では、基盤的効果を狙ってスタートするというのが筆者の実感です。そのため、以下ではデータ基盤をモダナイゼーションすることによって得られる基盤的効果にフォーカスします。
基盤的効果として、TCOの改善、生産性向上、コンプライアンスの向上やデータ漏洩リスクの低減など、さまざまな効果が挙げられますが、ここでは生産性向上に着目します。
生産性向上は、コスト改善の次に大きなウェイトを占め、ボトムアップの改善が主流の日本企業では関心が高いと思います。一方で、PL(損益計算書)やCS(キャッシュフロー計算書)上の数値項目に直接つながらない、いわゆる“ソフト効果”であり、測定に困難を覚える実務担当者も少なくありません。以下で、その定量化に向けたアプローチを示していきます。
●Next:4つのステップによる生産性向上効果の可視化
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