[コストを価値に変える─バリューエンジニアリングで解き明かすデータ基盤の真価]
データ基盤への投資を阻む「壁」を超えるためのステップ:第1回
2025年5月14日(水)鄧 虓(Snowflake Value Engineering, Japan & South Korea Lead)
組織にとってデータ基盤は、ビジネスの意思決定や戦略立案、新たな価値創造を支える経営基盤にほかならない。一方で、データ基盤やデータ活用への投資対効果(ROI)の算出は難しく、投資が試験的な段階にとどまり、本格的な活用に至らない組織は少なくない。本連載では、バリューエンジニアリングの方法論と事例に基づいて、データ基盤やデータ活用へのROIを明確化するための考え方や実践的手法を4回にわたって紹介する。第1回となる本稿では、データ活用における投資効果の予測や評価が難しい原因と、実務における対策を紹介する。

なぜデータへの投資が“お試し”にとどまるのか
生成AI/大規模言語モデル(LLM)の登場とその後の急速な進化を目の当たりにして、データやAIの活用に世界中の企業が関心を寄せ、データ基盤の導入・刷新の動きが活発化しています。
しかし、関心の高まりとは裏腹に、一部の先進企業を除き、多くはデータ基盤やデータ活用への投資が“お試し段階”にとどまっているのを見受けます。この領域への本格的な投資と実践を阻む課題の1つに、意思決定に資する投資効果の数値化・具体化にあると考えています。
本連載では、データがもたらす価値を理解しながらも大規模な予算の確保に苦労している/今後苦労する可能性があるITリーダーや業務部門の責任者に向け、筆者が所属するSnowflake Value Engineeringチームが、グローバルな顧客接点から得た知見を基に、データ基盤への投資から得られる効果の予測・検証の方法や、その最大化に向けた視点を紹介します。
第1回では、データ活用への投資効果の予測・評価が難しい原因を挙げた後、データ基盤への投資を大きく2つに分類し、各パターンにおける効果を見出す視点や手法を提示します。第2回では、既存のデータ基盤をモダナイゼーションするパターン、第3回では、新たな活用方法(ユースケース)を実装するパターンを取り上げます。第4回では、連載の締めくくりとして、投資効果創出を促進するデータ基盤のアーキテクチャ設計についてコツや注意点を示します。
データ基盤/活用への投資を阻む「壁」
一定規模の企業・組織が、全社レベルでデータやAIの活用を本格化させるには、データの整備、システムの刷新、人材の育成、プロセスの見直しといった種々の取り組みが必要です。それらへの投資は数億円規模に上る場合もあり、経営層や事業部門責任者が意思決定を行うために、プロジェクト実施の必要性や優先度、投資に見合う効果などを明確に示すことが求められます。
一方で、この領域への投資で得られるビジネス上の効果を見通すことは困難で、大規模なデータ活用の推進にあたって「壁」となることが間々あります。
2025年2月に発表された米ガートナーの調査レポートに、こんな洞察があります。「過去12〜18カ月の間、90%以上のデータ/アナリティクス(D&A)リーダーにとっての優先事項は、データによって生み出す価値および成果であり、今後も関心事項であり続ける」。これは、組織にとって、データ/AIへの投資における効果の測定が重要な課題であることを示唆しています。
ガートナーはさらに、「データ関連投資の効果の有無を追跡し測定できている組織は 22% のみである」とも指摘していて、大半の組織においてデータ関連投資がもたらす効果の説明と検証に苦労しているのが実態です。
一方、筆者の組織では、独自の調査に基づき、データ/AI活用における投資効果の予測・評価・モニタリングのメカニズムの構築に成功している先進企業をピックアップし、リストで発表しています。以下では、それらの事例を参考にしつつ、データへの投資効果の予測・評価が難しい原因を考察したうえで、求められるアクションを説明します。
●Next:データへの投資効果はどう測るのか?
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