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小田急電鉄、運転士や整備士みずから業務アプリをローコードで内製開発

2024年11月15日(金)日川 佳三(IT Leaders編集部)

小田急電鉄(本社:神奈川県海老名市)は、運転士や整備士などが現場で使う業務アプリケーションを、ローコード開発で内製化している。リスキリングによる人材育成により、運転士や整備士などの、現場を知る担当者みずから開発している。ローコード開発ツール「Claris FileMaker」を提供した米Claris Internationalが2024年11月13日に発表した。

 小田急電鉄はこれまで、業務システムの開発を、外部ベンダーに発注していた。しかし、外部ベンダーは鉄道事業の現場を熟知していないので、要件定義の負荷が大きくなるなど、リリースまでに時間がかかっていた。システムの改修にも時間や追加コストがかかり、システム改善のボトルネックになっていた。

 現場に必要なシステムを内製可能な仕掛けとして、ノーコード・ローコード開発ツール「Claris FileMaker」を、鉄道部門の統一ツールとして採用した。2022年度に内製開発をスタートし、導入から2年で10以上のシステムを稼働させた。リリース後も、現場ユーザーからのフィードバックを反映しながら機能を改善している。

 「使いやすいシステムを、スピード感を持って低コストで従業員が作る。これがより良いシステム構築につながる。コストや業務効率といった数字に表れる部分だけでなく、会社の文化に変化を与えていることが内製化の大きな成果だ」(小田急電鉄)。

 内製開発したアプリケーションの例は、以下の通りである。いずれも現場のエンドユーザーなどが開発した。

  1. 安全コミュニケーションシステム(開発期間は18カ月)
  2. 列車運転情報確認ツール(開発期間は3カ月)
  3. 特急料金検索アプリ(開発期間は3カ月)
  4. 個人貸与工具台帳システム(開発期間は3カ月)

安全コミュニケーションシステム

 (1)「安全コミュニケーションシステム」は、通達・指示類の掲出、ヒヤリハットの共有、報告書の作成など、鉄道運行の安全に関する情報を共有する情報コミュニケーションツールである(画面1)。既存システムのOSサポート切れを機に再開発した。

画面1:「安全コミュニケーションシステム」の報告書入力画面(出典:米Claris International)
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 交通企画部DX推進担当(元運転士)が開発した。3000人の社員が利用する大規模システムのリプレース案件であり、Claris FileMakerを使うのは初めてだったが、パートナー企業の寿商会から内製化の支援を受けて開発した。

 リプレースの効果として、数千万円のシステム更新費用と、年間数百万円の保守費用を削減した。運転士時代の現場経験をもとに報告書をテンプレート化するなど、乗務員の作業負荷も軽減した。

列車運転情報確認ツール

 (2)「列車運転情報確認ツール(通称:れっけん)」は、列車番号などから担当乗務員の行路情報をiPhoneやiPadで確認可能なアプリケーションである(画面2)。運転車両部の運転士が開発した。

画面2:紙のダイヤグラム(左)の情報を集約してiPhoneで検索できるようにした実現した「列車運転情報確認ツール」(右)の画面(出典:米Claris International)
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 以前は、行路情報を表計算ソフトで管理していた。PCからしか閲覧できなかったため、乗務現場には紙のダイヤグラムを持ち込んでいた。

 新システムにより、どこからでも行路情報を確認できるようになった。特に、運行異常などで予定と違う列車を担当する際にも、簡単に調べられるようになった。平常時の作業効率も向上し、年間で合計約2700時間を削減した。

特急料金検索アプリ

 (3)「特急料金検索アプリ」も内製で開発した(画面3)。

画面3:「特急料金検索アプリ」の画面(出典:米Claris International)

 以前は、鉄道料金表と電卓を用いて計算していた。臨時に停車する列車や、地下鉄・JRが関係する料金計算は複雑であるため、ベテラン車掌でも計算に時間がかかるケースがあった。

 アプリケーションの導入により、顧客対応に要する時間が短縮できた。また、英語での表記が可能であるため、画面を見せながら外国人客にも明確に料金を提示できるようになった。

個人貸与工具台帳システム

 (4)「個人貸与工具台帳システム」は、運転車両部車両担当の現業係員が、会社から貸与されている工具を管理するために使うアプリケーションである(画面4)。運転車両部の車両担当が開発した。

画面4:「個人貸与工具台帳システム」のトップ画面と、個人貸与工具の台帳画面(出典:米Claris International)
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 以前は、紙の台帳で管理していた。これを電子化し、iPadで管理できるようにした。ペーパーレス化や管理業務の効率化を達成したほか、職場ごとに異なっていた運用方法を統一できた。

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