アイ・ティ・アール(ITR)は2024年11月20日、2025年に企業が注目すべき11のIT戦略テーマを示すレポート「ITR注目トレンド2025」を発表した。経営戦略アップデート、AI駆動型システム革新、インフラ&セキュリティ高度化の3つの観点から、11の戦略テーマに関する解説と予測を示している。
アイ・ティ・アール(ITR)は、2025年に企業が注目すべき11のIT戦略テーマを示すレポート「ITR注目トレンド2025」を発表した。経営戦略アップデート、AI駆動型システム革新、インフラ&セキュリティ高度化の3つの観点から、11の戦略テーマに関する解説と予測を示している(図1)。
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ITRは、3つの観点、11のIT戦略テーマについて以下のように解説している。
経営戦略アップデートの観点
(1)環境変化に即応するビジネス戦略立案
これからの時代は、BANI(Brittle:脆弱、Anxious:不安、NonLinear:非線形、Incomprehensible:不可解)な経営環境を前提として、著しい環境変化に対処しなければならない。企業は、いかに適応力とレジリエンスを備えるかが重要となる。そのためには、環境変化の状況を定常的に捕捉し評価すると共に、その結果を迅速にビジネス戦略に反映するための体制を万全にする必要がある。
(2)AIコンバージェンスを誘発する組織能力の醸成
AIが中核となって多様な技術が融合することで、新たな価値や需要が加速的に生み出されるAIコンバージェンスの時代が到来する。企業はセレンディピティ(Serendipity:幸福な偶然を引き寄せる力)が起こりやすい環境を整備し、コンバージェンスを誘発する組織能力を備えることが求められる。そのためには、DAO(Decentralized Autonomous Organization:分散型自律組織)の考え方を取り入れたクラスタ型組織への転換が有効である。
(3)「責任あるAI」の実践に向けたガバナンス体制の整備
AIの普及拡大に伴い、その社会的・倫理的な課題にも関心が向けられることが想定される。また、世界各国の政府によるAI規制も本格化すると見られる。企業は、AIを安全かつ倫理的に利用するための枠組みを整備すると共に、その枠組みに則ったAIシステムの開発・運用プロセスを実践することにより、各種規制に対応するとともに、社会からの信頼を獲得する努力を行われなければならない。
AI駆動型システム革新の観点
(4)NG-DevOpsによるアプリケーション内製
AIの支援を受けた新世代のDevOps(NG-DevOps)を活用することで、ビジネスに貢献するアプリケーション開発が迅速に行えるようになってきた。企業はこれらの新規テクノロジー/サービスを駆使して、マイクロサービスアーキテクチャにより、アプリケーション開発の構築・試行・運用・フィードバックのループを短サイクルで回し続けなければ、ビジネスで勝ち残れないことを理解すべきである。
(5)AIを使ったデータ分析の「守りの自動化」から「攻めの自動化」への転換
AI/機械学習を使ったデータ分析の自動化への取り組みは、生成AIの登場により加速している。しかし、多くの企業では、作業効率の改善、スキル不足の補完といった現状の課題を個別に解決する「守りの自動化」にとどまっている。自動化の真の恩恵を得るためには、データパイプラインの構築、OI(Operational Intelligence)の実現といったデータ分析の処理プロセスを再構築し、より高度なデータ分析を可能にする「攻めの自動化」が求められる。
(6)AIと接続した業務システムに求められる戦略的インテグレーション
SaaS利用が拡大する業務システムにおいて、AI-Connected SaaS(細分化された業務機能単位でAIを組み込んだサービス)の活用が進むと考えられる。AI活用による業務のパフォーマンス向上には、複数のデータソース、業務システム、言語モデルの最適な流れを構築するデータオーケストレーションが重要な役割を果たす。そのためには、データの統合と一貫性の確保に向けた戦略的インテグレーションが求められ、iPaaS(Integration Platform as a Service)などのツールを積極的に活用すべきである。
(7)AI活用を促進するData Flow Hub基盤の強化
経営・事業活動の目標を達成していくために、企業はこれまで以上に迅速かつ多面的な意思決定によってビジネス課題を解決する必要がある。それには、エンタープライズシステムに装備が進むAI技術の活用が避けて通れない。企業は、AIの情報源となるシステムとデータフローが常に変わりゆくことを前提としつつ、その変化を吸収できるData Flow Hub基盤の構築が必須となる。Data Flow Hub基盤の利用拡大に伴い、データカタログともいわれるメタデータの整備を進めていかねばならない。
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