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“標準業務”を可視化したら188万通りのプロセス─MS&AD、パナソニック、マクニカがAI前提で取り組む業務改革

3社の“プロセスリーダー”が明かす、経営課題に即したプロセス再設計

2026年9月29日(火)大河原 克行(ITジャーナリスト)

大手企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)やAIトランスフォーメーション(AX)において、形骸化した業務プロセスの見直しと刷新は避けて通れない課題だ。プロセスマイニング大手の独Celonis日本法人は2026年7月28日、それをテーマにした国内向け年次ユーザーカンファレンス「Celonis Process Intelligence Day Tokyo 2026」を開催した。その基調講演に、MS&ADインシュアランス グループ ホールディングス(MS&AD)、パナソニック デジタル、マクニカホールディングスの3社が登壇。それぞれの“プロセスリーダー”が、プロセスマイニングを活用した業務変革の戦略と実践について説明した。

「カスタマイズが必要」の7割は不要だった、データが覆した現場の慣習
パナソニック デジタル

 パナソニック デジタルは、パナソニックグループのIT専門子会社である。2026年4月1日にパナソニック インフォメーションシステムズ、パナソニック ソリューションテクノロジー、パナソニック ネットソリューションズのIT関連3社と、事業会社のIT部門の一部を統合して発足した。パナソニックグループの国内IT部門の80%以上の人員が集中しているという。

 同社が重要な役割を担う取り組みの1つに、2021年度から開始したグループ全社の業務変革プロジェクト「PX(Panasonic Transformation)」がある。すでに5年目を迎える活動だ(図4)。

図4:2021年度に始動したPXの歩み。7つの原則の策定を経て、ITの取り組みから全社アジェンダへと位置づけが変わった(出典:パナソニック デジタル)
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 代表取締役 社長執行役員の阿部裕氏(写真2)は、「PXがスタートした当初は、ITのトランスフォーメーションという認識だったが、2023年に役員合宿を行い、PXの7つの原則を策定し、社員に公開してから、コーポレートアジェンダと捉えられるようになった。PXによる変革の主役は現場の社員一人ひとりであり、現場主導の変革を進めている」と説明する。現在は、PXを変革ドライバーに、AI-Driven Transformation、Digital Transformation、Corporate Transformationの3つのカテゴリーに分けて、社内変革を推進しているところだ。

写真2:パナソニック デジタル 代表取締役 社長執行役員の阿部裕氏

 パナソニックグループでは、2022年4月からCelonisを導入。複雑化しているSAPシステムの移行において、可視化するところから活用した。「カスタマイズが必要だと言われた機能の約7割が使われていないことがわかった。これまでは現場からの要望を受け入れて対応していたが、データを基にすることで、必要がないものに対して、カスタマイズは行わないことを徹底することができた」(阿部氏)。

 この成果を基に、SCM、経理、間接部門などにも横展開し、ベストプラクティスを活用した継続的な効果創出、標準化を推進。さらに、プロセス統制につなげ、AIの活用を組み合わせることで、意思決定の精度向上や統制強化を図ることになるという(図5)。

図5:2022年4月に始まったCelonis活用の全体像。システム移行時の可視化に始まり、プロセス改革/標準化、プロセス統制へと適用領域を広げてきた(出典:パナソニック デジタル)
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 阿部氏は、今後の取り組みとして、「現場がAIを活用して改善することが当たり前の世界を実現したい」と語る。具体例の1つが、AIを活用したプロセス変革である。

 調達プロセスにおいて、顧客への納期が順守できないという問題が発生していた。背景には、調達リードタイムの設定が慣習や属人的に行われていたり、納期遅延の原因となる品目の特定が困難であったりという課題があった。パナソニック デジタルはここに着目し、AIによって、過去データから推奨リードタイムを算出し、リードタイムのズレを可視化。さらに、影響が大きい品目を特定することで、解決策を見える化していくことを目指した(図6)。

図6:AIで調達リードタイムの“ズレ”を見える化し、顧客納期の順守につなげる。影響の大きい品目を特定して解決策を示す(出典:パナソニック デジタル)
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 その際、事業会社が活用している「Databricks」との連携も推進。Celonisと双方向でゼロコピー連携ができる特徴を生かし、Celonisでの分析結果を活用して、将来予測モデルを構築できるようにしたという。両製品のデータ連携は、Databricksのデータ共有技術「Delta Sharing」を用いるもので、2025年11月に発表された。

 また、部門ごとの最適化からサプライチェーン全体の最適化へと進化させることを目指し、CelonisのOCPM(Object-Centric Process Mining:オブジェクト中心プロセスマイニング)を用いて、複数のプロセスや、複数のアプリケーションを横断したサプライチェーン全体の可視化にも着手している。阿部氏は「サプライチェーンにおける課題は、いかにキャッシュコンバージョンサイクル(CCC)を短くするかという点である。サプライチェーンを可視化することで、課題を浮き彫りにできると考えている」と説明する。

 さらに、「Microsoft 365 Copilot」や「Microsoft Teams」との連携を進め、現場がAIを活用し、自主的に改善を行う仕組みを定着させたいとも語る。調達リードタイムの改善においては、Celonisのデータから、納期順守に向けて更新すべき品目を特定し、この分析結果を「Microsoft Copilot Studio」と連携。さらに、Teams上で担当者にリードタイムの推奨値を提示することで、改善を加速できると見込んでいる(関連記事:ERP刷新を阻む“カスタマイズの壁”を崩したのは、データが語る“事実”─パナソニック デジタルのプロセスインテリジェンス実践)。

●Next:AIを前提に仕事が自然に回り、新たな価値を生み出す会社へ─マクニカが目指すこれからの経営・事業

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