ホームセンター大手のカインズ(本社:埼玉県本庄市)は、海外で生産するプライベートブランド(PB)商品の長期需要予測にAIを適用し、人手で調整を重ねてきた従来のモデルと比べて、予測の誤差を19%改善した。アルゴリズムを自律的に改善可能なAIエージェント「AlphaEvolve」を使い、特徴量やパラメータの組み合わせを自動で試した。グーグル・クラウド・ジャパンが2026年10月30日にブログで事例を公開した。
カインズは、全国に289店舗を展開するホームセンターである。同社は、商品の発注と在庫管理を最適化するため、商品の需要を機械学習で予測するシステムを運用している。2022年6月にミニマムでの運用をスタートし、2024年9月に約200店舗、2025年10月に全店舗に展開した。
用途に応じて、長期と短期の2種類の予測をしている。長期予測は、海外で生産するプライベートブランド(PB)商品の発注に使う。海外生産は調達までのリードタイムが長いため、約1万あるSKUごとに39週先まで予測する。一方、短期予測は、店舗在庫の自動発注に使う。店舗とSKU別に6週先まで予測する。通常時で約190万SKU、繁忙期は最大500万SKUに上る。
需要予測システムの運用を始める前は、長期予測を人手で実施しており、担当者のスキルによって発注精度にばらつきが出ていた。短期予測も表計算ソフトウェアで前年や直近の実績を参考にしたため、季節性商品の立ち上がりを捉えきれず、欠品が発生していた。
構築した需要予測システムはGoogle Cloudの時系列予測機能「Vertex AI Forecasting」を用いている。導入後は、新任の担当者でも一定の精度を担保した発注が可能になり、店舗での欠品が減るなど成果が出た。
しかし、需要予測システムを全店舗に展開した後も、業務部門からは予測精度を高める要望が上がっていた。これを受けて、AIモデルの特徴量と、機械学習におけるアルゴリズムの挙動を制御するハイパーパラメータの調整を手作業で重ねた。しかし、人が考えて調整し、検証を回す方式では、試せる回数に限りがあった。
新商品が既存商品の売上を奪うカニバリゼーションも難題だった。モデルは月1回再学習していたが、新商品の売れ行きが実績に現れるまでにはタイムラグがあり、事前に予測するのは難しい。実績が出始めた後のトレンド変化やカテゴリ内の需要の分散を捉える特徴量の設計も複雑だった。長期モデルは約3年間、人手で段階的に改善してきたが、手詰まりの状況にあった。
これに対してカインズは、アルゴリズムを探索するAIエージェント「AlphaEvolve」を導入し、長期予測モデルを自律的に改善する仕組みを適用した。これにより、予測の誤差を19%改善した。アルゴリズムの探索は数百から数千回に及ぶ。AlphaEvolveはGoogle Cloudが2025年12月に限定公開プレビューとして提供を始め、2026年7月に一般提供した機能であり、カインズはプレビュー版を利用した。
カテゴリ内の需要変化を捉える特徴量を自律的に探索できるようになったため、人手では限界があったカニバリゼーションにともなう需要変動も改善できる可能性が見えてきた。今後は、予測精度が向上したカテゴリにおいて、欠品の削減や在庫水準の最適化が経営に与える効果を測る。
カインズ / Google Cloud / AIエージェント
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