[市場動向]

自律化するAIのリスクをどう防ぐ?「Trusted Data Fabric」が実装する次世代ガバナンス─NTTドコモビジネス

日本IBMとの協業で構築するAI活用の「ガードレール」

2026年10月29日(木)神 幸葉(IT Leaders編集部)

企業において自ら計画・行動するAIエージェントの導入が進む中、予期せぬリスクを防ぐための行動制御やガバナンスの確保が急務となっている。こうした課題の解決に向け、NTTドコモビジネスと日本IBMは2026年10月7日、AIガバナンス領域における協業基本合意書を締結した。NTTドコモビジネスは、企業が安心してデータを連携しAIを活用できる基盤構想「Trusted Data Fabric」を推進しており、その中核を担うAIガバナンス領域において日本IBMと協業する。

自律化するAIエージェントと企業のジレンマ

 企業においてAIが単なる対話型のツールから、自ら計画し行動する「AIエージェント」へと進化する中、その行動制御やガバナンスの欠如が新たな課題として浮上している。

 NTTドコモビジネス 執行役員/ビジネスソリューション本部 ソーシャルイノベーション部長の福田亜希子氏(写真1)は、セキュリティ侵害などの事故につながりかねない現状のAI活用のリスクを次のように指摘した。「AIが単に質問に答える時代から、自律的に行動するようになりつつある一方で、AIがどの範囲まで行動してよいのか、その制御に関する対策は不十分なのが現状だ」

写真1:NTTドコモビジネス 執行役員/ビジネスソリューション本部 ソーシャルイノベーション部長 福田亜希子氏

 多くの企業はリスク回避のため、AIがアクセスできるデータを公開情報に限定するなど、安全側に倒した運用を行っている。福田氏は「価値あるデータほどAIに使わせられない状況は、AIの効果を限定的にしてしまっている。この方法では本来のビジネス価値を創出できない」と語った。

 このジレンマを解消するため、NTTドコモビジネスは企業や組織が安心してAIエージェントを活用できる環境の実現を目指す「Trusted Data Fabric」構想を発表した。

 同構想は、AIの判断と行動を統制する「Trusted AI」、検証できる身元と委任を与える「Trusted Identity」、機微なデータを守ったまま使う「Trusted Data Access」という3つのトラストで構成する。2025年度に発表した「AI Centric ICT プラットフォーム」の上層に位置づけ、2026年度末から27年度に向けて段階的にリリースしていく予定だ(図1)。NTTが開発した純国産LLM(大規模言語モデル)「tsuzumi」をはじめとするさまざまなサービスとともに、企業のAI活用を加速させる。

図1:Trusuted Data Fabric構想の全体像(出典:NTTドコモビジネス)
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 NTTドコモビジネスは、スマートシティ、金融、医療といった社会インフラ領域において、企業や業界の垣根を越えた安全なデータ連携とAI活用の取り組みを進めており、Trusted Data Fabricはこれらの取り組みをさらに推進する基盤となるという(図2)。

図2:AIとデータ活用の基盤として、取り組みを加速(出典:NTTドコモビジネス)
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日本IBMとの協業で目指すAIガバナンス領域の強化

 Trusted Data Fabricの構想発表と同時に、NTTドコモビジネスと日本IBMは2026年10月7日、AIを法令や社内規程に沿って適切に管理・運用するAIガバナンス領域における協業に関する基本合意書の締結を発表した。

 同協業はTrusted Data FabricにおけるTrusted AI、特にAIガバナンスに焦点を当てている。企業においてAIエージェントがいつ・どのように利用されているかを把握し、継続的に管理・監査できる仕組みの確立が急務であるためだ。

 日本IBM 理事 データ・プラットフォーム事業部長の佐藤隆子氏(写真2)によると、「AIエージェントを作ること自体は非常に簡単になったが、本番運用、特に既存システムとの統合やモニタリング、予想外のリスクへの対応、継続的な改善を誰がどう進めていくかという運用統制が企業の課題になっている」という。

写真2:日本IBM 理事 データ・プラットフォーム事業部長 佐藤隆子氏

 同氏はこの現状に対し、次のように語った。「企業がAIを利用する際のガバナンスは、ブレーキだけでなく、社員が安心してAIを使うためのガードレールの設置を目的にすべきだ。リスクの高いものを中心に対策するリスクベースアプローチ、開発から運用までのライフサイクル全体をカバーするガバナンス、そして技術や法規制の変化への素早い対応が必要になる」(図3)。

図3:企業が目指すべきAIガバナンスの方向性(出典:日本IBM)
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●Next:AI活用を加速させる「ガードレール」、AI Design Officeが支援するAX

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