すでに存在している業務の効率を高めたり、合理化・省力化したりするためのシステム群を、ここでは「Systems of Record」と呼ぶ。デジタルビジネス時代を迎える上で、この領域のシステムに求められるアーキテクチャとは、どのようなのかを解説する。
ビジネスプロセス管理を実装可能にする
それだけではない。システム連携を疎結合にして外部から呼び出し可能なサービスにすれば、必要に応じて新しい業務プロセスを構成しやすくなる。というのも、現行のシステムは販売管理や生産管理、会計管理など個々の業務を遂行するように作られている。例えば、発注者の与信と受注を別システムで管理しているため、担当者は複数のシステムを使いこなす必要がある。システム間で共有すべきデータは担当者がExcelを使って受け渡しているようなケースだ。
ここにビジネスプロセスマネジメント(BPM)と呼ばれる手法/ツールを適用すれば、受注入力時には、まず与信管理のシステムを呼び出し、次に受注管理のシステムを呼び出すプロセスを実装できる。実際には複数のシステムが稼働しているが、担当者から見れば、あたかも1つのシステムであるかのように構成できるのだ。そうなれば、システムの操作に不慣れな社員でも業務を遂行できるだけでなく、今後増えると見られる取引先や消費者による直接的なシステム利用に対応可能なことは、容易に想像できるだろう。
疎結合のためのデータ統合基盤を
重要になる点の第3が、データの整備である。顧客データ、製品データ、部品データ、社員データなどの、いわゆるマスターデータを、きちんと整備し、整合性を持った形で維持している企業は意外に少ない。ある事業部門と別の事業部門が別々に顧客マスターを保有するとか、顧客マスターは統一していたとしても「(株)富士通」「富士通(株)」、あるいは単に「富士通」などと複数の名称が存在するようなケースが意外に多いのだ。
実際、日本データマネジメント・コンソーシアムという団体の調査によると、一元管理している企業の割合は社員マスターが75.6%、取引先マスターでは56.3%、製品や商品マスターは50.0%に留まっている。
それでも日々の業務処理においては大した問題は生じない。だが、業務の結果として蓄積された取引データを分析し、何らかの結果を得ようとする場合には大きな問題になり得る。そこでマスターデータを棚卸しし、整理し、その上で理想的には、すべてのシステムから共通に使えるデータ統合基盤を設けることが求められる。意外に見過ごされがちだが、システムが提供する価値という観点で見たとき、データをどう整備するかは最も重要と言えるものである。
いうまでもなく、こうした姿(アーキテクチャ)を実現するのは容易ではない。強い決意や時間、費用が必要だ。だが繰り返しになるが、経営・事業をドライブする情報システムが足かせとなっては本末転倒。システムが抱える問題を先送りしても、いいことは何もない。すぐにでも着手すべきだ。
【筆者】
前田 高光
富士通 デジタルビジネスプラットフォーム事業本部 ビジネスプラットフォームサービス統括部 シニアマネージャー
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