オープンソースソフトウェアは今、コスト削減の手段としてだけではなく、イノベーションを推進するための原動力との認識が広がっている。企業がオープンソース導入を進めていることの指標の1つが、オープンソース専業の米Red Hatの業績だ。同社の業績は好調で、オープンソース専業として初めて20億ドル企業になった。次の目標に掲げる売上高50億ドルに向けて、どのような成長戦略を描いているのか。Red Hatオペレーションの上級副社長で、CFO(最高財務責任者)を兼ねるフランク・カルデローニ氏に聞いた。
コミュニティの広がりがオープンソースの可能性を広げる
ただ誤解のないように申し上げておきたいのですが、こうしたオープンソースによる成功事例はRed Hatだけの力によるものではありません。パートナー企業やコミュニティの貢献あってこそです。コミュニティが広がれば広がるほど、オープンソースの可能性も広がっていくのです。
―最近は多くのIT ベンダーがオープンソースコミュニティへの貢献度を競うようになってきています。先行者とはいえRed Hatが差別化を図り続けるのは難しくなるのではありませんか。
いえ、決してそのようなことはありません。理由は大きく2つあります。1つはフルスタックの強みです。多くのITベンダーの中でも、オープンソースの幅広い製品やサービスのポートフォリオを取り揃えているのはRed Hatだけです。
Red Hatは、無料でも利用できるオープンソースを有料で提供するという道を選ぶことで長期的な利益を得るだけでなく、テクノロジーに再投資し、エンジニアの数を増やし、イノベーションを促進してきたのです。ですので、Red Hatと付き合っていれば、既存のオープンソース製品やサービスに対する満足が得られるだけでなく、将来の“あるべき姿”へも牽引してくれるという安心感を顧客に持っていただいていると自負しています。
もう1つは全面的なサポートの提供です。当社のトレーニングサービスやコンサルティングサービスでは、問題解決や新しいテクノロジーの採用時に必要なエンジニアリングスキルを提供します。そもそもRed Hatの全製品はサブスプリプション(購読)型で提供しており、アップデートやパッチはもちろん、新しいリリースについても追加料金なしで導入できるので契約期間を通じて最新テクノロジーに追随できます。
―CEOのジム・ホワイトハースト氏は、「次の目標は50億ドルだ」と公言されていますが、この目標を達成するためにCFOとしては、どのようにRed Hatの舵を取りっていくお考えでしょうか。
ジムは楽観的な人ですから、CFOとしては「大風呂敷を広げたな。実行するのはこっちなのに」と思わないわけではありません(笑)。ただ、ソフトウェアの市場規模は2016年に500億ドルと言われ、今後もIoT(Internet of Things:モノのインターネット)の普及などにより、さらに拡大していくことを考えると、50億ドルという数字は決して過大な目標ではありません。
自らオープンソースを活用し
イノベーションのショーケースになる
現在の市場シェア拡大のペースを今後も続けられれば、十分に達成可能です。そのためにも、常に市場を先読みし、顧客ニーズをキャッチアップしながら、長期的な計画を立てポートフォリオの最適化に注力しています。
―CFOとしてデータを最も活用されていると思いますが、ITの利用者として、これからのITには、どんな期待をお持ちですか。
変化に対して、よりフレキシブル(柔軟)に対応できることですね。Red Hat自身がイノベーションを起している会社ですから、柔軟性は、とても重要です。
そのために当社では2つのことを実践しています。1つは、Red Hatのエンジニアが新たに開発したテクノロジーを自社のIT環境で試してみることです。テクノロジーが経営やビジネスにどんな効果をもたらすかを自ら検証しています。
もう1つは、オープンな環境の追求です。自社製品だけでなく、他社が開発したオープンソースも積極的に採用し、可能な限りオープンソースを利用しています。これらの取り組みでRed Hat自らが常にイノベーションの先頭を走ることで、顧客にとってのショーケースでありたいと考えています。
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