2017年3月31日、Red Hat Enterprise Linux(RHEL)4の「延長サポート」(ELS:Extended Lifecycle Support)が終了する。あわせて同日、RHEL 5の「通常サポート」も終了する。何もせずにそのまま放置してしまった場合、セキュリティ上の問題をはじめ重大なリスクにさらされる可能性があるだけに注意が必要だ。社内システムにRHEL 4またはRHEL 5が残っているならば、早急にRHEL 7への移行準備を開始しなければならない。
2017年3月31日以降の利用には重大なリスクが伴う
Red Hat Enterprise Linux(RHEL)は、全世界の企業においてミッションクリティカルなシステムにも採用されている高性能かつ高信頼なOSS(オープンソースソフトウェア)ベースのOSである。ただ、ひとつ注意してほしいことがある。「RHEL 4」または「RHEL 5」といった古いバージョンを使い続けていないだろうか? ──それらの「サポート切れ」が迫っているのである。
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2017年3月31日、RHEL 4について、これまで提供されてきた延長サポートが終了する。サブスクリプション契約を結んでいる限り、以降も使うこと自体は可能だが、大きなリスクが伴うことを覚悟しなければならない。仮に致命的なセキュリティの脆弱性が発覚したとしても、レッドハットからは一切の修正が提供されないのだ。一刻も早く最新バージョンのRHEL 7またはRHEL 6への移行準備を始める必要がある。
また、RHEL 5についても通常サポートが終了する。こちらもそのまま放置するとRHEL 4と同様にレッドハットから修正が提供されなくなる。したがって、やはりRHEL 7またはRHEL 6への移行準備を始めるのが望ましい。スケジュール的に移行が困難な場合には、最低限の対策として延長サポート(ELS:Extended Lifecycle Support)を手配することができる。RHEL 5の延長サポートは、2017年3月の通常サポートの終了時点から3年間にわたって提供される予定だ。その期間に移行準備を進めれば、当面のリスクを回避することができる。ただし、延長サポートでサポートされるマイナーバージョンは5.11のみとなるため注意が必要だ。
パートナーの移行サポートを利用するのが得策
まずやるべきことは、資産管理システムまたは管理台帳に基づき既存のシステムの棚卸を行い、使用しているRHELのバージョンをしっかり確認することだ。そして、RHEL 4またはRHEL 5が見つかったならば、早急に移行計画を策定する必要がある。
率直なところ、RHEL 4やRHEL 5と最新バージョンのRHEL 7では約10年間の技術の進化による大きな差異があるため、移行は決して簡単とは言えない。OSを全面的に入れ替えた上で、アプリケーションの実行モジュールについても再ビルドならびに検証が必要となるケースがあるだろう。場合によってはソースコードの修正が必要となる。利用目的や現状のシステムにもよるが非常に負担の重い作業となるため、すべて自社でまかなうのではなく、レッドハットのパートナー各社が準備を進めている移行サポートを利用するのが現実的であり得策といえよう。
最新バージョンへの移行で享受できるメリットも大きい。RHEL 7に移行すれば、最新ハードウェアの能力を最大限に活用しつつ、パフォーマンスを大幅に向上させることができる。KVMを利用することで、サーバーを仮想化することも可能となる。ちなみにRHEL 7は仮想マシン上で稼働させるOSとしても卓越したパフォーマンスを発揮する。そのほかにもRed Hat Identity Managementによるアカウントの統合管理、OpenSCAPによるセキュリティ監査の自動化など、最新のIT環境を容易に実現できる。
OSのサポート終了など製品ライフサイクルの節目は、時代やテクノロジーの変化に合わせてIT基盤を計画的かつ合理的に洗練させていくロードマップを描くチャンスだ。安定稼働を続けてきたから、できればそのままにしておきたいという保守的で一時的な考えにとらわれることなく、先々を見据えたIT基盤の近代化と最適化を急ぎたい。その地道な取り組みの積み重ねが、これからのビジネスをしっかりと支え、競争力を維持・強化することに結実するのである。
レッドハットは、RHEL各製品のライフサイクルやサポート終了に伴う注意喚起、パートナーによる支援サービスなどの最新情報を特設サイト(http://jp-redhat.com/rhel4-eol/)で公開している。この機会に詳細をチェックし、いち早くアクションを起こすことをお勧めする。