「THE IMPACT OF THE INDIVIDUAL ~オープンな対話と変化が導く、真イノベーション~」をテーマとするRED HAT FORUM TOKYO 2017が10月20日に開催された。本イベントでは、企業のイノベーション創出支援に対するレッドハットの戦略が披露されたほか、海外の先進事例やデモ、業種別分科会など具体的なテクノロジー活用に向けたセッションが豊富に用意され、多数の来場者によりどのセッションも賑わいを見せていた。本稿では、米国レッドハット社長兼CEOのジム・ホワイトハースト氏と、上級副社長兼製品・テクノロジー部門社長のポール・コーミア氏が登壇したゼネラルセッションを中心にレポートする。実はこのツートップが同時に来日するのは非常に珍しいことなのだ。それほどまでにレッドハットが強い意気込みで臨んだ今回のイベントから発信されたメッセージをあらためてお伝えしよう。
この数年間のレッドハットの取り組みのすべては
オープンハイブリッドクラウドを実現するためにあった
続いて登壇した米国レッドハット 上級副社長/製品・テクノロジー部門社長のポール・コーミア氏は、ホワイトハースト氏が示したビジョンをさらに深掘りすべく、レッドハットの製品・テクノロジー戦略を紹介した。
現在、劇的な変化が起こっているテクノロジーについて、コーミア氏は「クラウド」「アプリケーション開発プラットフォーム」「マネジメント」の3つを挙げた。インフラがベアメタル(物理マシン)であれ、仮想マシンであれ、あるいはプライベートクラウドやパブリッククラウドであっても、アプリケーションはどこでも自由に動けることが重要だ。そして当然のことながらアプリケーションがどこにあっても、場所を意識することなくデータにアクセスできなければならない。ハイブリッド環境ではこうしたマネジメントが非常に重要となる。
「お客様が強く求めるのは、それぞれの基盤が孤立してテクノロジーのサイロになっては困るということです。ハイブリッドな環境であっても管理は一元化したい、セキュリティ対策もオートメーションも一元的に行いたいと考えます。レッドハットの製品はそれを可能とします。この数年間をかけて行ってきたこと、例えばM&Aにしても新製品の開発にしても、すべてはこのオープンハイブリッドクラウドのビジョンを実現するためにあったといって過言ではりません」とコーミア氏は語る。
そして現在、顧客はハイブリッドに加えてマルチクラウドも指向し始めた。いま使っているクラウドは、例えばAIやビッグデータには強いかもしれない。しかし別のサービスは他のクラウドの機能のほうが優れている場合がある。顧客はアプリケーションを開発する際に、そうしたさまざまなクラウドの強みを“いいところ取り”で使いたいと考えるのだ。また、その場合でも動作環境は変えたくないと望んでいる。
具体的にどうすればこうしたオープンハイブリッドクラウドを実現できるのだろうか。まず重要なのはすべてのフットプリントでLinuxの基盤を持つことだという。
「これによりアプリケーション開発者は、一貫性を持った形でパフォーマンスを得ることができます。システムコールやOSのマネジメント、オペレーションまですべてにLinuxが関連し、中核的な役割を果たします」とコーミア氏は語った。
次にハイブリッドクラウドのインフラと管理だ。先述したように顧客はアプリケーションを異なるフットプリントで動作させる際にも別々に管理するのではなく、一元的に管理したいと考える。「オープンハイブリッドクラウドの世界では、コンピュート、ストレージ、ネットワークといったリソースに対して、どのフットプリントのアプリケーションからも、まったく同じようにアクセスできなくてはなりません。あくまでも1つに見せなければならないのです」とコーミア氏は強調した。
そしてもうひとつ重要なのが、コンテナおよびクラウドネイティブなアプリケーションプラットフォームだ。コンテナそのものはUNIXの世界で20年以上前から使われてきたもので決して新しい技術ではないが、「オープンハイブリッドクラウドの世界で、コンテナこそがキラーアプリケーションになるかもしれません」とコーミア氏は示唆した。
現在のコンテナはLinuxそのものであり、AWS(Amazon Web Services)やMicrosoft Azure、あるいはOpenStackを実装したプライベートクラウドでも、複数のクラウドをまたいで容易に移植して動かすことができる。「すべてのアプリケーションを、どんなフットプリントでも、どこにあっても、ベンダーロックインなしで動かせることが、オープンハイブリッドクラウドの真価なのです」とコーミア氏は訴求した。
新興テクノロジーと位置づける製品群が
前年比伸び率44%の急成長を見せた
最後にレッドハットのグローバルビジネスの状況を、ゼネラルセッションの後に行われたジム・ホワイトハースト氏とポール・コーミア氏の来日記者会見における発表内容からピックアップしておきたい。
ホワイトハースト氏によると、直近の2018年度第2四半期(2017年6~8月)におけるレッドハットのグローバルビジネスは非常に堅調な様子で、かつてないスピードで成長を見せたとのことだ。主力製品であるRed Hat Enterprise Linux(RHEL)も14%の伸びを示しているが、なかでも前年比伸び率44%という著しい成長を見せたのは、レッドハットが新興テクノロジーとして位置づける製品群である。クラウドネイティブアプリケーションを開発・ホスティングするためのコンテナプラットフォーム「OpenShift」、プライベートクラウドを構築するためのデータセンターソフトウェア「OpenStack」、ITプロセスの自動化とガバナンスの集約を実現する「Ansible Automation」の3製品がそれである。
OpenShiftについてはソフトバンクがDevOpsを実践するための社内基盤として導入するほか、i Smart Technologies(iSTC)が製造ラインの遠隔モニタリングシステムに導入するなど、日本企業の間にも導入が加速しているようだ。
さらにホワイトハースト氏は、NTTデータ、レッドハット、Dell EMCの3社協業も発表。大規模かつ高難度のシステムを実現するNTTデータのインテグレーション、グローバルでの販売実績と価格競争力を誇るDell EMCのハードウェアとソフトウェア、最先端テクノロジーへの追従力を高めるレッドハットのオープンイノベーションを融合し、トラディショナルの高い信頼性とデジタルの俊敏性を併せ持った基盤を提供していくという。
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