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[デジタルビジネス時代の到来]

今こそICTでビジネスに機動力を!
「消耗戦」と「機動戦」の両面を意識せよ

【特別対談】 野中郁次郎氏 × 富士通キーパーソン

2015年3月20日(金)

予兆や変化を素早く察知し、情報や知識を駆使して先手を打つ――企業には今、こんな“機動力”が求められる。経営環境や顧客ニーズ、競合他社の戦略、調達する資材や商品の価格、生産設備の状況など、企業を取り巻くあらゆることが時々刻々と変化するからだ。では機動力は、どうすれば得られるのか? 知識創造経営理論の創始者にして世界的権威であり、「知識機動力経営」の提唱者でもある野中郁次郎 一橋大学名誉教授と、富士通の香川進吾 執行役員、中村記章 デジタルビジネスプラットフォーム事業本部 副本部長が語り合った。重要な論点は3つある。意思決定プロセスを「PDCA」から「OODA」に転換させる、人材・組織力を強化する、バックボーンとしての情報システムを整備する、である。(進行役はIT Leaders編集主幹、田口 潤)。

「消耗戦と機動戦」、「SoRとSoE」の間にあるアナロジー

野中 消耗戦とは、つまり正面戦です。昔ながらの戦い方と言ってもいい。必要となるのは兵力と兵站(へいたん)力です。敵に比べて、軍事力が圧倒的に劣っていれば戦いを避けるし、勝っていればそれを生かします。従来の企業経営は、この消耗戦が主だと考えていいでしょう。一方の機動戦は、OODAループで説明したように、観察をもとに兵力を移動したり、兵力を集中させたりを迅速に行うことで、敵の弱みを突き、戦意をくじく。先ほどお話したように、戦力は多少劣っていたとしても機動力で上回れば不利を払拭できます。

対談の進行役を務めたインプレス IT Leaders 編集主幹の田口 潤

田口 兵器が高度に発達する以前の戦争はどちらかと言えば消耗戦が主体、兵器や偵察能力が進化した近代戦は機動戦主体といった捉え方をしてもいいでしょうか?

野中 その通りです。近代では、状況の変化に応じて消耗戦と機動戦を使い分けることも多くあります。社会や経済、技術が高度に発達した現代の企業において、知識機動力が求められる理由でもあります。

中村 今の話は企業情報システムの分野で最近提唱されるようになった、SoR(Systems of Record)とSoE(Systems of Engagement)という考え方に似ていますね。SoRは「記録のシステム」と訳されますが、実際には業務や事業を遂行するためのシステム、具体的には販売管理、生産管理や会計などの基幹業務システムのことです。日々の業務を正確に、効率良く実行するためのシステムです。何が起きたか、何を行ったかをデータとして入力し、必要なシステムに受け渡して業務を処理します。それはデータの記録そのものなので、記録のシステムと呼ばれます。

野中 もう1つのSoEというのは、どんなシステムですか?

中村 Eはエンゲージメントの略で、社内外の人やモノ、コトに関与していくシステムです。Webやモバイルのサービス、それから機械や設備、それらの集大成としての交通やエネルギーなどのインフラの状態や動きをモニタリングし、最適化するようなシステムが具体的な例です。ICTの低価格化やデバイスの小型化に伴って最近、構築が本格的に始まったので、具体例はまだ多くありません。

田口 ICTを使った機械の制御とは違いますよね。

中村 説明は難しいのですが、違います。スマートデバイスを持った人やICT化されたモノと、必要に応じて双方向でやりとりします。相手の状況に合わせて、こちらのやるべきことをきめ細かく変えていくこともしますからエンゲージメント、つまり“関与”なんです。関与するわけですから、例えば顧客との関係は一方通行では済みません。機動力や機動戦、あるいはOODAループといったお話を伺っていると、SoEと同じだと確信しました。

野中 なるほど。少し抽象的な話をしますと、消耗戦は統合的、中央集権的、競争的、指示的、標準化といった特性があります。これに対し機動戦は、対照的に分散的、分離的、協働的、適応性、独自性です(表1)。私はICTにはそれほど詳しくありませんが、確かにSoRとSoEの関係と似ていますね。

表1 消耗戦と機動戦の比較
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香川 多くの企業がモバイルやIoT、ビッグデータなどを上手く活用していく必要に迫られています。しかしこれまでの業務系システム、SoRを機能強化して、それらを活用しようとしても、費用と時間がかかる。活用する利点は分かっても、システム全体の中でどう位置づければいいのか、例えば単に販売管理システムをモバイル対応にすればいいのか、そんな疑問がありました。それが消耗戦と機動戦、OODAループといった考え方を使って、ある種の補助線を引くとSoR、SoEの位置づけが鮮明になりますね。富士通も半歩先をいけるような機動力と最先端のICT活用をもって、お客様からの期待に応えていかなければなりません。

田口 なるほど。ただもう少しだけ整理させて下さい。OODAループでは機動戦に軸が置かれています。実際にはそれだけではなく、消耗戦もあると?

機動力あふれるビジネスについて熱い議論が繰り広げられた

野中 おっしゃる通りです。キーポイントは、プロジェクトを走らせながら、前線部隊が常に現場で起きている状況を分析し行動しつつ、敵の弱点を見つけたら、ここぞとばかりに組織全体のリソースを集中して組織的に前線をバックアップできるような体制を築きあげることです。つまり、機動戦と消耗戦は連続したダイナミックな関係であり、両者のタイムリーなバランスを考慮して全体を最適化する、両方に対応できるダイナミック・フラクタル組織が必要となります。

中村 SoRとSoEも別々のシステム群に見えますが、裏側では相互に連携して総合力を発揮できるようにします。そのためにもOODAループの概念をICTに反映させ、SoEの領域でしっかりと観察、情勢判断しながらも、SoRとの両輪でビジネスを回していくことが不可欠です。そうした循環を顧客である企業が実現できる取り組みを、富士通は進めています。

香川 適切な意思決定、判断をするための道具として、今後、ICTはますます有効となります。今日のお話の中で、企業がICTをより上手く活用できる基盤やソリューションを提供していく、それによって知識機動力経営を可能にするのが、私たちのミッションであると改めて認識しました。富士通も絶えず新しい技術を社内で実践し続けるとともに、形式知化されたICT活用を社会に広げていきたいと考えます。

野中 これからの企業には暗黙知と形式知の相互作用のスパイラルアップにより、知識を持続的に創造していくことが求められます。そうした中では、グループや取引先など他社を巻き込んだエコシステムを構築していくことも必要となるでしょう。その中では、企業とだけではなく、地域経済や社会活動との関係を築き、それを広げて行くことも大事です。そうした様々なコミュニティにおける「共創」を通じて、日本全体の知を豊かにしていく。そうした役割を富士通に期待しています。


●野中 郁次郎氏
一橋大学 名誉教授、早稲田大学 特命教授

知識創造経営理論の生みの親として世界的に広く知られている。1995年に英語で発表された『知識創造企業』は、1996年に日本語版が出版されたほか、全12か国語に翻訳され、今も増刷を重ねている。その理論は現在も進化を続けており、著作は多数に及ぶ。2013年11月には、最も影響のある経営思想家50人を選ぶThinkers50のLifetime Achievement Award(生涯業績賞、功労賞)を受賞


●香川 進吾氏
富士通 執行役員
インテグレーションサービス部門 ネットワークサービス事業本部長 兼 ネットワークサービス事業本部 映像ネットワークサービス事業部長

1981年富士通株式会社入社。主にネットワークサービスビジネスに従事。デジタルビジネス時代の到来に向け、「お客様、社会との共創に取り組みながら、豊かな(見たい)未来を創造するインテグレーションサービス」をコンセプトに、お客様、社会と積極的にコミュニケーションを図っている

 


●中村 記章氏
富士通
デジタルビジネスプラットフォーム事業本部 副本部長

1987年、富士通に入社。官公庁担当SEとしてシステム開発・運用に従事。2009年、クラウドアーキテクト室長に就任しクラウド時代の新技術開発整備や人材育成などを担う。その後、共通技術部門にて最新技術の標準化や、既存資産のモダナイゼーション技術などのフィールド部門への指導と普及活動を推進。2014年12月より現職
 

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