業務システムのサイロ化が進み、それらにデータは蓄積しているものの、横断的に分析することがままならない──。そうした悩みを抱える企業は少なくない。世のデジタル化が加速する時代を踏まえ、今こそ取り組まなければならないのが「データマネジメント」。いつまでも後回しにすると、競合に一気に差を付けられる可能性がある。
メインフレームからオープンシステム、そしてインターネット/Webへ──。ITの裾野が広がり普及してきた経緯の中で、企業は様々な情報システムを構築してきた。財務会計、生産管理、営業支援など「特定業務の効率化」がさしあたっての目的であり、その観点では大きな成果を上げてきたと言える。
次にテーマとなったのがデータの利活用だ。業務システムに蓄積するデータをじっくり眺めることで実績や変化をとらえることができ、より効率的な手を考える好材料となる。その価値に気付いたユーザーが、熱心にデータを分析するようになり、さらにニーズが高度化・多様化するようになった。あるシステムのデータと、別のシステムのデータを組み合わせて見れば、もっと深い洞察が得られるのでは?という期待である。
サイロ化によってデータを横串にできない現状
しかし、ここに大きな問題が立ちはだかった。1つひとつの業務システムが個別最適化の視点で構築され、複数システムに横串を刺してデータを見るという配慮も設計もないままに乱立してしまったのが今日の姿。いわゆる“サイロ化”である。
株式会社データ総研の吉岡健氏(コンサルティンググループ統括 シニアコンサルタントマネージャ)は「商品情報や顧客情報など、多くのシステムで共通に使われ本来は一元的に管理されるべきデータですらバラバラに実装されたケースは珍しくありません。同じデータであるにもかかわらず、システムによって『顧客』『取引先』と表現が異なっていることも多々あります。結果、データを寄せ集めて、分析の下ごしらえをするだけでも一筋縄ではいかず、多くの手間と時間がかかってしまう現実に多くの企業が悩んでいるのです」と指摘する。
実例を挙げてみよう。店舗販売を中心としていた小売企業が、ネットショップにも参入したところ、思いのほか好業績で一大事業に育った。両方のデータを統合して分析すれば、購買に関わる行動特性を把握でき、顧客一人ひとりにパーソナライズしたキャンペーンやレコメンドなどの施策を打てるはず…。しかし実際には、POSデータとネットの購買履歴データでは、顧客IDの付与方法が違い、販売データの構造も異なるため、そのままでは活用できないという壁に直面してしまった。
製造業では、こんな例がある。その企業は生産工場をグローバルに展開しており、これまでは日本、北米、中国の工場がそれぞれの地域で個別に部品や原材料を調達していた。各工場で同じような製品を製造しているので、共通している部品や材料が少なからずある。集中購買でボリュームディスカウントすれば、製造コストを抑えられるはずだ。そこで各工場の部品購入データを取り寄せ集中購買に切り替える施策を検討しようとしたのだが、そもそもデータ表記に統一ルールがないので、リストに並ぶ部品が同一かどうかを瞬時に特定することができずに頭を抱えてしまった。
データマネジメント実践の具体的ステップとは?
こうした例は枚挙に暇がない。では、どうすればよいのか。データは、うまく活用すれば業務改善や新規ビジネスの創出など、企業の利益に直結する効果をもたらす。企業にとってデータは、人材や原材料などと同様の資産である。資産であれば、管理するのは当然で、「常に品質の高いデータを整理整頓し、目的に応じて取り出しやすい状態にしておく必要があります。それを具現化するための取り組みが『データマネジメント』であり、企業が今後、ITでビジネスをドライブしていくために、絶対に欠かせないものとなります」と吉岡氏は強調する。
IoT(モノのインターネット)やソーシャルメディアなど、企業の周辺には、これまで業務システムで扱ってきた定型データとは異なる、多種多様な新しいタイプのデータが増えており、その勢いは益々加速していくと見られる。データ量が膨大であるほど、「企業ができること」も広がると思いがちだが、足下のデータマネジメントが疎かなままでは、すべての期待が画餅に帰すことを強く認識しておかなけばならない。
また、データ活用以外に、コンプライアンスのためにデータマネジメントが求められるケースもある。「現在は、金融や医薬など特にデータの正しさが求められる業界で先行していますが、対象となる業種は拡大するでしょう。自社は無関係と思っていると、後で慌てることになりかねません」(吉岡氏)。
とはいえ、今までデータマネジメントが後手に回っていた企業は多く、「何から手を付ければいいのか分からない」という声もよく耳にする。一般的なアプローチとしては、以下のステップを踏むことがポイントとなるだろう。
- 【データの可視化】:各事業部がどのようなデータを持っているか、データの現状を定量的・具体的に把握する
- 【データモデルの作成】:必要なデータのあるべき状態を定義する
- 【統合データ基盤の整備】:業務毎・システム毎に散在したデータを横断的に標準化し統合した基盤を整備する。また、その状態が維持できるように管理する仕組みや体制を整える
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それぞれには、有効な方法論やノウハウがある。「当社は、データマネジメントの推進をサポートすると共に、それをベースとしたシステム企画や情報活用に変革をもたらすコンサルティングに力を注いできました。多くの実績を積み上げてきており、企業の実状や目的に沿って全面的に支援する体制を整えています。データ活用に関わる悩みがあれば、何でも相談してほしいですね」と吉岡氏は訴求する。
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3月11日に開催される「データマネジメント2016」において吉岡氏は「経営革新、成長のためのデータマネジメントのポイント」と題するセッションに登壇する。今日のグローバル企業が実践するべきデータマネジメント施策とそのポイントについて、事例と共に解説する予定だ。是非、会場で聴講してほしい。
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