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「クラウドの前に運用管理方法やツールを刷新すべき」─日本オラクルが運用管理に存在する”ギャップ”を指摘

2013年8月28日(水)田口 潤(IT Leaders編集部)

日本オラクルは2013年8月26日、運用管理ツール「Enterprise Manager12c」の最新版を発表した。クラウド時代を見据えたシステム運用をどうとらえるべきか。説明会で語られたトピックを紹介する。

「過去15年の間に、DBMSから見た企業システムのアーキテクチャは大きく変わりましたが、システム運用の方法はほとんど変わっていません。結果として大きなギャップが生じ、運用コストの高止まりや、性能低下のようなトラブルの多発といった様々な問題につながっています。今こそ運用方法やツールを刷新するべきです」──。

日本オラクルは「クラウド時代の統合運用管理を実現する最新ソリューションに関する説明会」を開催。その席上、同社の三澤智光専務は冒頭のように運用環境刷新の必要性を強調した。オラクルの最新運用ツールを紹介する説明会なので、多少、割り引いて聞く必要はあるが、三澤氏の話に頷かされる面が多かったのは事実だ。どういうことか、エッセンスを紹介しよう。

「DBMSの最適化を手動で実行するのはもう限界」

三澤氏はまず、システムアーキテクチャの変遷を2000年前後のインターネットの時代(i)、2005年以降のグリッドの時代(g)、2012年以降のクラウド(c)の時代に分けて説明した(図1、これはオラクル製品の末尾にあるi、g、cからきている)。インターネットの時代、2000年頃はデータベースの規模はギガバイト、企業が運用するDBサーバーもせいぜい数10台。システムは個別にDBを持ち、ミドルウェアなども個々に異なるサイロ型だった。

 図1 システムアーキテクチャの変遷

2000年代半ば以降にはグリッド、つまり仮想化やシステム統合が進んだ。1つのデータベースはテラバイトの規模になり、ITインフラはサイロ型ではなく、共通基盤になった。三澤氏はこう話す。「特に最近ではデータ規模も大きくなり、例えばExadataのユーザーで1TB以下のデータサイズの企業はほぼ皆無です。DBサーバー数も、1社で1000台を超える企業が出てきています。これからのクラウドの時代にはデータベースはペタバイトの規模になり、DBサーバーも数千台が当たり前になるでしょう」。

DB視点で見たシステムの規模や複雑性は、このように様変わりしている。ところがシステム運用はほとんど変わっておらず、運用管理に使用するツールは仮想化対応などの機能強化はされているが、実施しているのは人手によるチューニングやプロセスの死活監視、ハードウェア(ITインフラ)の使用率監視だという(図2)。「例えばDBMSが使っている物理リソースを監視し、動的にリソースを割り当てることは、ほとんど行われていません。より低いハードウェアのレイヤーで使用率を管理しているだけなのです。テーブルやプロシージャ、ログといったDBに関わる論理オブジェクトも、たいていの場合、システム開発会社から提供されたExcelで管理しているだけでしょう」。

 図2 システム規模や複雑性が変化しても運用は変わっていない

その結果、現実の運用管理と、あるべき運用管理、実施可能な運用管理の間に大きなギャップが生じ、運用管理費用の高止まりや性能に関わるトラブルなどを生んでいるという(図3)。「運用費削減のかけ声の中で運用管理技術者数を減らす、あるいはシステム規模が拡大しているのに増やさない傾向もあります。大規模・複雑化するシステムの中核をなすDBMSを最適に稼働させるには、手動の管理や監視ではもはや限界です」。

 図3 運用が変わらないことで様々なギャップが生じている

世界では1000億円規模の売上げのツール

こうした状況をにらみ、オラクルは2年前にクラウド時代のシステム運用を考慮した運用管理ツール、「Enterprise Manager12c」をリリースしている。OracleDBやExadata、Exalogicなど、同社製品に特化した管理・監視ツールだ。DBから見たリソースの動的管理、バックアップの自動化やリカバリの実行、DB論理オブジェクトの一元管理といった基本的な機能に加えて、既存システムのプライベートクラウドへの移行計画や実施といった「クラウドライフサイクル管理」、システム資源の視点ではなく、業務やビジネス視点による「アプリケーション管理」などが、うたい文句である。当然だが図3で示したギャップは、これですべて埋められるという。

今回の説明会では、これらの機能を強化したバージョンアップ版「リリース3」を発表した。一例がシステム統合後の稼働状況をテストする機能(図4)。これまでは販売管理、人事など個別システムのワークロード(稼働状況)をシミュレートするだけだったが、リリース3では統合後の状態を重ね合わせてシミュレートできるようにした。複数のシステム(DB)をまたがったテストや稼働監視機能である。

 図4 Enterprise Manager12cの新版で強化された機能の1つがテストの効率化である

「Enterprise Manager12cは、欧米のOracleユーザーの要求に応えて開発しました。すでに10億ドル(1000億円)規模の売り上げの製品になっています。しかし日本ではまだ微々たるもの。背景には日本ではシステムの安定稼働が至上命題で、システム運用部門は保守的にならざるを得ないという事情があります。加えて多くのシステムは今もサイロ型の設計で、性能要件を開発部門が担うか運用部門が担うかがあいまいです。海外のユーザーではインフラ担当とアプリ担当が明確に分かれ、かつその間にDB管理者がいて性能要件などを担保しています」(三澤氏)。

このような風土的、組織的な事情はさておいても、「最新のツールを利用することで解決できる問題や課題は多い」というのが三澤氏、つまりオラクルの主張の1つだ。実際、本誌は「8+9月号」でDevOpsを特集した。Enterprise Managerを導入するかどうかはともかく、クラウドファーストの時代をにらみつつ、システム運用管理を見直すべき時なのかも知れない。

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