[海外動向]

“第3のOS/ミドルウェア”狙う米Pivotal、PaaS基盤の統合製品を発表

2013年11月13日(水)志度 昌宏(DIGITAL X編集長)

米Pivotalが2013年11月12日(現地時間)、PaaS(Platform as a Service)環境を構築するためのソフト群「Pivotal One」を発表した。この新製品で何を狙い、利用企業は何が実現できるようになるのか。本発表を前に、アジア太平洋地域で初めて開催した自社イベント「Pivotal Summit」での発言なども紹介しながら、同社の狙いを探る。

写真1 アジア地域初の自社イベント「Asia Pacific Pivotal Summit」に登壇したポール・マリッツCEO
写真1 アジア地域初の自社イベント「Asia Pacific Pivotal Summit」
に登壇したポール・マリッツCEO

 「デジタルの価値が高まっている。情報を中心とした新たなビジネスモデルを構築する時代の始まりだ」──。

 米Pivotalのポール・マリッツCEO(最高経営責任者)は、企業が置かれる環境をこう指摘する。そのためには、「クラウドを前提に、多種多様なデータを扱える第3のプラットフォームが必要だ」(同)と強調する。

 Pivotalは、プロプライエタリなメインフレームなどを第1世代、クライアント/サーバーおよびWebサーバーなどを第2世代としたうえで、これらに続くクラウドベースの仕組みを第3世代に位置付ける。当然、11月12日に発表した「Pivotal One」が、第3のプラットフォームだというわけだ。

IaaS束ねるOS提供を狙う

 Pivotalは、米VMwareのCEOだったマリッツ氏がスピンアウトし、2013年4月に立ち上げた会社である。米EMCやVMwareが買収していたソフト群を引き継ぎ、これらの統合を進める。具体的には、PaaS(Platform as a Service)環境を構築するためのOSS(オープンソースソフトウェア)の「Cloud Foundry」や、超並列処理型データベースの「Greenplum」、リアルタイムグリッド用ソフトの「GenFire」、Javaフレームワークの「Spring」などである(図1)。

図1:米Pivotalが計画するPaaS(Platform as a Service)環境。
形式が異なる種々のデータを格納し、そこへの自由なアクセス環境を提供する

 Pivotal Oneの基本的な考え方は、Amazon Web Services(AWS)やOpen StackといったIaaS(Infrastructure as a Service)をベースに、業務データから文書、ソーシャルネットへの書き込み、センサーデータまで、多種多様なデータを蓄積。そのビッグデータを自由に分析・加工できるようにすることで、新しいビジネスモデルのためのアプリケーションを構築するというものだ。

 IaaS市場では、AWSが一つの基準になり、米Microsoftなどが覇権争いを続けている。だが、Pivotalからみれば、「IaaSは半導体技術の進展などでさらに低価格化が進むハードウェア群に過ぎない」(マリッツCEO)。「それらIaaSを束ねるPivotal CFは、第3世代のOSであり、Pivotal HDなどのデータ・マネジメント層は第3世代のミドルウェアになる」(同)という。

事業のサービス化狙う米GEも参画

写真2:出資もするGE(General Electric)のジョナサン・バロンCSO(Chief Strategy Officer)
写真2:出資もする
GEのジョナサン・バロンCSO
写真3:Cloud Foundryを使っているNTTコミュニケーションズの栗原秀樹クラウド・サービス担当VP
写真3:Cloud Foundryを使う
NTTコミュニケーションズ
クラウド・サービス担当VPの
栗原秀樹氏
 
写真4:ビッグデータを活用するシンガポールStarhubのモック・パク・ラムCIO(Chief Information Officer)
写真4:ビッグデータを活用する
シンガポールStarhubのモック
・パク・ラムCIO

 マリッツCEOはMicrosoft時代、OS/2やWindows NTという“第2世代”のOS開発を陣頭指揮してきた。かつての成功同様に、Pivotalは第3のOSの座を狙えるのだろうか。

 援軍はある。その一つが、米GE(General Electric)による出資である。Pivotalの設立準備基金、約1000億ドルの10%に当たる約100億ドルをGEが出資する。そのGEがPivotalに期待するのは、同社が推進する「Industrial Internet」を実現するためのプラットフォームである。

 Industrial Internetは、センサーデータを活用するInternet of Things(IoT:モノのインターネット)のGE版。航空機や列車などのエンジンなどの稼働状況をモニターし、機械を販売するのではなく、その機械が動作している時間や、機械によって得られた価値、例えば航空機の飛行時間などに応じて対価を得るサービス化を指向する。

 シンガポールで開かれた「Asia Pacific Pivotal Summit 2013」に登壇したGEのCSO(Chief Strategy Officer)であるジョナサン・バロン氏は、「産業系データは他の2倍の速度で増える。この大量データをリアルタイムに処理できるプラットフォームが必要になる。GEではこれまで事業別にシステムが分かれていたが、今後はこれらの統合も進めたい」と、Pivotalに期待を込める(写真2)。

 もう一つの援軍は、Cloud FoundryやGreenplumといったPivotal Oneの構成要素のそれぞれが既に導入実績を持つことだ。例えば、Cloud Foundryは、日本でもNTTコミュニケーションズが採用し、企業向けPaaSとしての提供を始めている(写真3)。Greenplum はシンガポールの大手キャリアであるstarhubが、各種サービスの利用状況などの分析に利用する(写真4)。またCloud Foundryの開発推進に向けては、米IBMのほか、独SAPも、この10月23日に参画することを表明した。

 ただし、買収製品がPivotal Oneで、どこまで統合が図られているかは、今後の検証を待つ必要がある。GreenplumやGenFireを扱ってきたシステムインテグレータの幹部は「個々の製品レベルは把握しているが、全体としてどう統合されていくかは未知数だ」と話す。

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