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100Gbps時代の通信品質支える隠れたデンマークのテクノロジー企業、Napatech

2014年6月12日(木)

クラウドコンピューティングの本格普及を前に、ネットワーク環境は通信速度100Gbps(ビット/秒)の時代を迎えようとしている。ネットワーク機器ベンダー各社が、100Gbps対応機器の開発に力を入れている。その舞台裏で、各社の通信品質の確保を支えているテクノロジー企業が存在する。デンマークに本拠を置くNapatechだ。通信パケットをロスなく取得するための専用カードをOEM(相手先ブランドによる生産)提供している。主要なネットワーク解析システムの多くが、同社の専用カードを使って製品を開発しているという。

 クラウドコンピューティングやモバイル活用、さらにはIoT(Internet of Things:モノのインターネット)など、企業経営や社会活動を支える数々のアプリケーションは、ネットワークとの接続を前提とした仕組みへと急速に変化している。

 新たなアプリケーションの登場を先取るかのように、通信機器ベンダー各社は100Gbps(ビット/秒)対応機器の開発に力を入れ始めた。より大量のデータを、より速くやり取りできるようになれば、クラウドかオンプレミスかの違いを意識することなく、まさにユビキタス(いつでも、どこでも、必要なときに)なサービスの利用環境を構築できる。

 サービスの利用が広がれば広がるほど、ネットワークのQoS(Quality of Service:サービス品質)やセキュリティの確保は、その重要性がますます高まっていく。通信機器ベンダー各社にすれば、製品開発段階から、そうした高品質を確保するためのテストや検証が不可欠だし、実稼働後も、もしもの際には迅速なトラブルシューティングを実施しなければならない。そんなニーズに答える形で、通信トラフィックの解析システムやセキュリティ監視システムなどの開発も進む。

 こうした通信機器業界を挙げての100Gbps対応が進む中で、各社の機器開発を支えるテクノロジー企業の1社が、デンマークに本拠を置くNapatechである。通信データをキャプチャーするための専用カードの専業メーカーで、欧米のトラフィック解析/セキュリティ監視機器ベンダーのほとんどがNapatech製カードを採用しているという。

 そのNapatechがこのほど、通信速度100Gbpsに対応した専用カード「NT100E3-1-PTP」を開発し、機器ベンダーへの提供を開始した。PCI-SIGに準拠しているのが特徴の1つで、汎用サーバーに装着して解析装置や監視装置を開発できる。2014年6月11日から13日に千葉県・幕張で開かれたネットワーク関連製品/技術の展示会「Interop Tokyo 2014」では、同製品を使った100Gbpsのトラフィック解析を世界で初めてデモンストレーションもした。

写真 Napatechが開発した、通信速度100Gbpsに対応した専用カード「NT100E3-1-PTP」。Interop Tokyo 2014の会場では、同製品を使った100Gbpsのトラフィック解析を世界で初めてデモンストレーションした

 100Gbpsで流れるトラフィックのすべてを、1つのパケットロスなしに取得することは実は相当に難しい。従来は一部のトラフィックを監視し通信品質を監視したりしてきたが、近年は可能な限りのデータを取得し、それを解析することで問題の特定や解消に生かすアプローチが一般化しつつある。いわゆるビッグデータ活用の流れだ。

 加えて、トラフィックデータの取得と同時にタイムスタンプを付す必要もあれば、用途によってはフィルタリングやCPUコアへの分配といった処理も必要だ。ここにNT100E3-1-PTPを使えば、解析/監視装置ベンダーは、データを取得するための技術開発に多くの労を費やすことなく、解析や監視のためのソフトウェア技術やノウハウの開発・取得に集中できる。結果、より速い製品開発が可能になるわけだ。

 一般に、高品質な製品を開発するためには、十分な品質を確保できているかどうかを測定するための装置が不可欠だ。100Gbpsの通信速度が確保できていることは、例えば40Gbpsまでしか測定できない装置では証明できない。Napatech製カードを使った測定装置の早期開発が、高速な通信機器の早期開発を支えているといえる。

 逆に、次世代機器の開発に積極的に取り組むメーカーが存在するからこそ、解析/監視装置のニーズも高く、同市場が成立するともいえる。現在、日本市場で流通するネットワーク解析装置やセキュリティ監視装置のほとんどが海外製品だ。通信機器市場で日本企業が存在感が強く示せないのも、こうした開発と解析のプラスのループが働いていないからかもしれない。

 Napatechの製品供給スタイルはOEM(相手先ブランドによる生産)である。採用状況も公開していないため、一般のネットワークユーザーはもとより、最新の解析装置などを使ってネットワークを監視したりトラブルシューティングに携わったりしているネットワーク技術者でも、Napatechの社名には、ピンとこないだろう。

 だが、来たるべき100Gbps時代に向けて、Napatechの社名を頭の片隅にとどめて置くことは、新製品やビジネスモデルを開発したい通信関連機器ベンダーはもとより、高速ネットワークを必要とするユーザー企業にとっても、製品選択をする際に有用なことだろう。
 

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