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「SoEのアプリケーションはこう作る」
~Salesforce Fullforceに価値はあるか?

2015年11月16日(月)田口 潤(IT Leaders編集部)

Systems of Engagment(SoE)に分類されるアプリケーションをどう設計し、開発・運用するか? パッケージソフトはなく、悩ましく、難しい問題だ。SaaS最大手のセールスフォース・ドットコムが、コンサルティング会社などと共同で、そこに一定の解(ソリューション)を提供しようとしている。

 顧客のニーズに柔軟に対応し、顧客個々に最適な提案を行えるようにするにはどうするか。従来の販売管理システムや顧客管理システムを使うだけでは、もう十分ではない。顧客接点は今では営業担当者だけでなく、店舗やWebサイト、コールセンターなどオムニチャネルになっているからだ。必要に応じて新しい顧客接点を構築し、ニーズに応じて素早く改修したり、進化させたりする必要がある。すなわちSystems of Record(SoR)に対するSystems of Engagment(SoE)が必要だ(図1)。 

図1 競争優位獲得に欠かせない「SoE:Systems of Engagemet」の領域の期待とプレッシャー
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 とはいえSoEに取り組むのは必ずしも簡単ではない。そもそも何から始めればいいか、どんな機能モジュールが必要か、拡張性や他のシステムとの連携はどう担保するか、開発・稼働のプラットフォームはどうするか。プラットフォームだけ見てもオンプレミス、IaaS、PaaSと複数の選択肢があり、それぞれ一長一短がある。試行錯誤するにせよ、何らかのガイドラインやフレームワークがないといずれ行き詰まる可能性も大きい…。

 このような状況に解決策を提供するべく、セールスフォース・ドットコム(SFDC)は「Salesforce Fullforce」と呼ぶプログラムを発表した。コンサルティング会社などのパートナー企業と共同で、個々の業種に特化した深い顧客エンゲージメントを可能にするアプリケーションを構築、運用できるようにする。具体的にはSFDCのクラウドサービスをプラットフォームとし、パートナー企業が作ったテンプレートやAppExchange上のアプリケーションからなるソリューションを認定し、提供する(図2)。 

図2 Salesforce Fullforceの概要
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 (1)クラウド上のソリューションであるため、オンプレミスでのシステム構築に比べ早期に利用開始が可能、(2)PaaSであるHerokuなどを利用するのでアプリケーションを改良・発展させることができる、(3)地図サービスなど外部のクラウドサービスやオンプレミスの既存システムと連携する、といった特徴がある。

 と書いてきたが、これだけではイメージを把握しにくいかもしれない。そこで認定ソリューションの具体例を見てみよう。製造業向けにFullforceを提供するデロイトトーマツコンサルティングによれば、製造業は3つの足かせをはめられているという。(1)縦割りに分断された組織とプロセス(変革のスピードを阻害)、(2)保守的な発想と行動(イノベーティブな取り組みを阻害)、(3)レガシーシステムの存在(企業変革のボトルネック)である。

 これをコンサルティングも含めたITの導入・活用で打破しようとするのが「Deloitte Digital Solution for Manufacturing」。図に示したようにシステム化の領域は、コラボレーションやコミュニケーションのChannels、マーケティングから販売、フォローまでのBusiness Process、CRM、Analytics&Collaborationと幅広い。これだけ幅広い機能を、SFDCの純正サービス、AppExchange上のアプリケーションサービス、外部のクラウドサービスなどでカバーする。「足りない部分や新規開発した方がいい機能はPaaS上で新規に作り込む」(同社)。 

図3 デロイトトーマツコンサルティングが提供する「Deloitte Digital Solution for Manufacturing」
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 アクセンチュアが用意するのは「Accenture Insurance Agent Effectiveness Solution」(図4)。保険(生損保)向けに、営業担当者の採用・育成や代理店の業務効率改善をサポートするものだ。「クラウドサービス利用による短期導入や属人的な業務プロセスの標準化がメリット」(同社)。 

図4 アクセンチュアが提供する「Accenture Insurance Agent Effectiveness Solution」
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 今回、これらのほかに不動産業、文教業を含めた4業界向けのソリューションを認定した。「海外では2年前からFullforceを展開しており、すでに43のソリューションがある」(米セールスフォースでエグゼクティブVPを務めるジョン・ウーキー氏)といい、日本でも認定を増やしていく計画だ。ベストかどうかはともかく、SoEのアプリケーションを構築するのに参考になるだろう。

 一方で注意点もある。ある企業のCIOは「話は理解できるし、対象業種の企業にとって利用価値はあると思う」と前置きしながら、「クラウドサービスの利点の1つは、いつでも使い始められ、止めることもできること。しかしFullforceではSFDCのサービスへの依存が高くなり、ベンダーロックインの状況になりかねない点が気になる」と語る。

 特にSaaSの場合、利用者契約数×利用サービス数で費用が決まるだけに、長期にわたって使い続けるなら同じクラウドでもIaaS上で自社開発する方がコストメリットが出る可能性はある。

 

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