半導体やネットワーク機器といった電子部品の専門商社であるマクニカ、近年はサービスロボット、IoT/自動運転ソリューションなどにも取り組んでいる。その同社がAIソリューション事業を拡大・強化するという。キーパーソンは、このたび米Macnicaのリーダーとして招聘された著名なAI専門家、アバカッシュ・チャウハン(Avkash Chauhan)氏だ。
機械や設備の予防保全、不良品が発生する条件の検出、不正な取引の検知と防止、最適な投資ポートフォリオの組成……ビッグデータとAIによって可能になることは、これら典型的なユースケース以外にも実にさまざまある。この領域に大きな期待が集まるゆえんであり、市場調査会社IDC Japanは「国内コグニティブ/AIシステムの市場は2016年以降、平均73.6%のペースで成長し、2021年に2501億900万円になる」と予測している。
しかしAIシステム市場が拡大したとしても、企業がAIで成果を得るのは容易ではない。「AIに不可欠のデータをどうやってそろえるか?」「そもそもどんなデータが必要か?」「 さまざまあるAI技術から何を使うか、例えば機械学習のどれを使うべきか? それでうまくモデルを作れるか?」「ハードウェアやソフトウェアツールはどう準備するか?」など、多くの難題が存在する。要は基本としてなすべきアクションが多く、「ネット企業など一部の例外を除いて、AIによって投資効果を得ている一般企業はまだほとんどない」とも言われる。
そんななか、技術専門商社のマクニカがAIソリューション事業を強化・拡充することを明らかにした。同社は、すでに製造システムのデータをクレンジングして、ストリーミング解析し、可視化・機械学習を行う「FogHorn」というIoTソリューションを提供する。その一方で、ABEJA、ALBERT、クロスコンパス、UEIといった国内AIベンチャーと協業してAIソリューションを提供中だ。今回はそれに加えて、米国の著名なAI専門家であるアバカッシュ・チャウハン(Avkash Chauhan)氏(写真1)をMacnica米国法人に迎え入れ、米国の先端AIソリューションを日本に紹介する体制を整えた。
とすると、商社だけに海外製品の輸入販売を強化するだけかとも思えるが、それだけではない。チャウハン氏は、「AI Adoption for any organization with Rapid Prototyping(ラピッドプロトタイピングによる企業へのAI適用)」という言葉を掲げ、企業からデータの提供を受け、マクニカの専門チームがさまざまなAIツールを選択・適用して有効なモデルを構築するソリューションを提供することが本筋だという。「データサイエンティストがいなくてもAIを活用できるようにする」がうたい文句である。
具体的には、ビッグデータ分析やAI開発における工数の大半を占める、データ整形・加工などの準備(Data Preparation)や特徴量の選択(特徴選択:Feature Selection)、適用モデルの選定、モデル構築といったプロセスを担う(図1)。
「数千以上ある機械学習のアルゴリズムのどれを適用するかによって、モデルの性能や精度は変わる。そこを我々が解決する」とチャウハン氏。前職でバイスプレジデントを務めていた米H2O.aiのオープンソースAIツールや自身が探したツールを使ってこれを実現するという。
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例えば、H2O.aiの「Driverless AI」は、データからモデル作成に必要な特徴量を選択したり変換したり、アルゴリズムを選んだりする機能を備える。市販ツールの中では「DataRobot」(参考記事:機械学習を自動化するDataRobot、育成プログラムなどをセット化した“AI民主化推進パッケージ”)に近いイメージだが、DataRobotにH2Oのアルゴリズムが採用されていることもあり、使う予定はないとしている。
チャウハン氏は、「H2O.ai時代に顧客である多くの企業からたくさんのことを学んだ。マクニカで我々が持つAIソリューションを提供しながら、日本の顧客からも学びたい」と語った。