NECは2021年5月6日、入退場ゲートでの顔認証のような、時系列データをリアルタイムに分析するケースにおいて、以前よりも高速に正誤を判定できるAI技術を開発したと発表した。あらかじめ設定した固定フレーム数の画像を蓄積するまで待たずに、データを取得しながら同時に分析していく仕組み。信頼度が得られたタイミングでデータの収集を打ち切ることができ、判定に要する時間を短くできる。
NECは、入退場ゲートでの顔認証のような、時系列データをリアルタイムに分析するケースにおいて、以前よりも高速に正誤を判定できるAI技術を開発した。データの蓄積を待たずに、データを取得しながら同時に分析していくことで、判定までの時間を高速化する仕組みである(図1)。
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一般的に、顔認証やサイバー攻撃の検知・分析を行うAI分析エンジンは、あらかじめ設定した量のデータをすべて取得してから分析する。例えば、顔認証を活用した入退場ゲートでは、複数フレームの画像を連続して撮影してデータを蓄積してから、これらを総合的に判断して個人を認証する。
これに対し、今回開発した技術は、データを取得しながら同時に分析していくという手法を採る。ユーザーが望む信頼度(もっともらしさ)が得られたタイミングで、データの収集を打ち切る。これにより、判定に要する時間を短くできる。既存の手法と同等の精度を維持しながら処理スピードを最大で20倍に高速化できるとしている(図2)。
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同技術は、必要な情報が集まり次第直ちに解答する「早押しクイズ」のような、複雑な意思決定を行う際にみられる脳活動の知見を応用して開発した。
この考え方を採用した逐次確率比検定(SPRT)は従来、主に製造分野の品質管理で使われてきた。しかし、必要となるデータなどの前提条件が厳しいため、これまで幅広い領域に適用することは困難だったという。
NECは今回、SPRTを適用する上で必要なデータの制約条件を緩和し、幅広い用途に実装できるようにする技術を開発。「統計的判断の尺度を高速かつ頑強に推定する新たな損失関数と、損失関数を特定するディープニューラルネットワーク構造を、脳神経科学などの学際的知見に基づき設計してアルゴリズムとした」(NEC)。
NECは同技術について、NECの顔認証AIエンジン「NeoFace」への実装を目指している。また、不正通信などサイバー攻撃の検知・分析の速度・精度の向上をはじめ、時系列データを活用する領域全般への適用を検討している。