日本テラデータは2022年3月10日、説明会を開き、同社のビジネス状況や国内外のユーザーのクラウド移行の動向、大規模クラウド上のデータ分析に関する実証テストの結果などについて紹介した。実証テストについては、データドリブン経営の要件を踏まえて設計し、同社のTeradata Vantageを用いて、AWS上で1024ノードのデータ処理の同時実行を確認している。
「アナリティクス企業でありクラウドテクノロジー企業」
近年の米テラデータ(Teradata)の戦略として、データウェアハウス(DWH)専業ベンダーからアナリティクスプラットフォームベンダーへのシフト、そしてオンプレミスソフトウェアやハードウェアのベンダーからクラウドベンダーへのシフトという2つのトランスフォーメーションがある。
後者に関してはシフトの最中にあるが、同社が2022年2月に発表した2021年度の決算では、2020年、2021年と継続してクラウド事業が拡大していることが確認できている。日本テラデータ代表取締役社長の髙橋倫二氏(写真1)は、「DWHアプライアンス製品のベンダーという認知もまだ根強いです。でも実際は、エンタープライズレベルのアナリティクスを実行可能なクラウドプラットフォームを提供する『クラウドテクノロジー企業』となっています」と髙橋氏は強調する。
同社は現在、AWS、Microsoft Azure、Google Cloudなどのパブリッククラウド上で、アナリティクスプラットフォーム「Teradata Vantage」を提供している。その年間平均サブスクリプション収益(ARR)は、2020年末に前年比で2倍、2021年末は同91%増と倍々ゲームで伸びており、約2億米ドルの売り上げを記録している。2022年も同80%増の売り上げ成長を見込んでいる。
「この結果は、全世界的なアナリティクス投資増加の波を当社が捉えており、顧客に選ばれている証だと考えています。既存のユーザーはTeradata Vantageに順次移行しており、加えて新規ユーザーの獲得も順調に進んでいます。また、顧客の側でデータ利用が進むにつれシステム規模が大きくなり、(それに対応したサブスクリプションモデルにより、収益が拡大しています」(髙橋氏)
Vantageプラットフォームは国内外の多数の企業に導入されているが、データ処理の仕組みやデータプラットフォームの名前を明かしたくないところも多い。髙橋氏は公開できる企業の中から世界110社を紹介。そこには製造、金融、流通、通信、製薬などのグローバル企業が含まれる(図1)。
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製品開発と同時にパートナー企業との連携も重視している。前記した3大メガクラウドをはじめ、クラウドAIアナリティクスを推進するDataiku(データイク)、H2O.aiの2社との連携を強化している。
「ユーザーはさまざまなサービスからベストオブブリードを選択し、自社のシステムに取り込もうとしています。そのため当社では、パートナーシップ専門の部署を新設し、人員の強化を図っています」と髙橋氏。メガクラウド3社とは2021年に戦略的な提携を発表しているが、具体的にはアナリティクス分野の統合を強化しているほか、共同マーケティング、販売にも乗り出している。
日本市場のビジネスはどうか。髙橋氏によるとグローバル同様、クラウドの新規顧客の獲得、既存顧客のクラウド移行が共に順調という。3大メガクラウドの日本リージョンでの運用も開始済みである。髙橋氏は、「2020年までは日本のクラウド顧客の大半はAWSでしたが、2021年になるとAzure、GCPを選択する企業も増えてきました」と傾向を説明する。
「当社の顧客の多くは、自社で選定したクラウドの上にデータ基盤を作りたいと考えています。Vantageはその要求に応えるだけでなく、複数のクラウドにまたがったマルチクラウドの運用にも応えます。海外と比べてまだマルチクラウドのニーズは少ないですが、今後増えていくでしょう」(高橋氏)
一方で、特に顧客の個人情報を自社のデータセンターで管理している企業は、クラウドにデータを移行することに対していまだ抵抗が強い。Vantageは自社データセンターとクラウドを組み合わせたハイブリッドクラウド環境に対応し、自社で管理したいデータをクラウドに置かなくても一体で分析できるようにすることで対応する。髙橋氏は、DWHは単に構築だけでなく、いかにビジネス戦略に組み込むかが重要だとして、顧客ごとのニーズに応えながら支援していくとしている。
●Next:データドリブン経営の要件を明らかに─テラデータが行った大規模実証テストの内容
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