[調査・レポート]
AIを導入済みの国内企業は3割弱、導入障壁はAI人材や活用ノウハウの不足─MM総研
2022年12月14日(水)IT Leaders編集部
MM総研は2022年12月13日、AI製品・サービスの導入実態に関する調査結果を発表した。回答を得た国内7121社のうち、何らかのAI製品・サービスを導入している企業(AI導入企業)は28.9%、検討中の企業は21.5%で、合わせて50.4%となった。活用用途は「予測」と「バックオフィス業務支援」の2つが多く、「全社導入している」との回答がどちらも2割超だった。
MM総研は、AI分野の製品・サービスに関する国内企業の導入実態を調査した。調査期間は2022年5月28日~31日で、調査対象とした製品・サービスは、ディープラーニング(深層学習)やマシンラーニング(機械学習)を活用した、画像認識、音声認識、データ予測などのシステム、ソフトウェア、クラウドサービス全般である。回答件数は、予備調査が7121社で、本調査が2000社と、合わせて7121社から回答を得ている。
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回答企業7121社のうち、何らかのAI製品・サービスを導入している企業(AI導入企業)は28.9%(2059社)、検討企業は21.5%(1534社)で、両者を合わせると50.4%(3593社)だった(図1、関連記事:2022年、AIを業務に利用している企業は35%、前年よりも13%増加─米IBMのグローバル調査)。
AI活用の用途を、(1)予測、(2)検知・予知保全、(3)レコメンド(商品紹介、パーソナライズなど)、(4)バックオフィス業務支援(人事総務、経理・給与計算、労務管理など)、(5)問い合わせ対応の5つに分けて分析したところ。AI導入企業2059社のうち8割以上が複数の用途でAIを活用していることが分かった。
用途として多かったのは、AIでデータから未来の物事の発生や未来を予測する「予測」と「バックオフィス業務支援」の2つである。これらの導入状況は、「全社導入している」との回答がどちらも2割超だった(図2)。
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農業・林業など第1次産業で予測AIの導入が進む
最もAI活用が先行している「予測」について業種別に見たところ、第1次産業での導入率の高さが目立った。特に、農業・林業(n=57)では約7割が予測AIを導入していると回答しており、他業種と比べて突出している。
具体的な活用事例は、収穫量や木材量の予測、病害や病害虫発生の予測などである。長年の勘や経験に頼っていた予測を自動化し、データに基づいて意思決定をすることで、実際に効果を出した事例が報告されている。
農業・林業に次いで、漁業(n=32)が37.5%、鉱業・採石業・砂利採取業(n=30)が36.7%と続いた。「第1次産業では、人材不足が深刻化するなか、こうした予測業務にAIを積極活用することで生産性を上げていこうとする動きが進んでいる」(MM総研)。
AIシステムの自社開発は全体の1割程度にとどまる
AI製品・サービスには複数の導入形態がある。汎用性が高い「パッケージ型AI」、企業ごとにオーダーメイドでベンダーが開発する「カスタムAI」、ユーザーの自社開発などである。
調査では、AI導入済み企業の導入形態を尋ねたところ、分からないという回答を除くと、「パッケージ型AI」と「カスタムAI」がそれぞれ4~5割を占める。予測用途(n=1492)では、パッケージ型AIの導入率が50.1%と他の用途と比べてやや高い。一方で、自社開発は1割程度にとどまる(図3)。
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自社開発が低い理由を、MM総研は2つ挙げている。1つは、汎用性の高いパッケージが増えていること。農作物の収穫量予測や飲食店の来客数予測のような、特定の業種に特化したパッケージ型AIも出てきており、農業・林業、鉱業・採石業・砂利採取業、宿泊業・飲食サービス業の導入率が他業種に比べて高い。
2つ目は、AI人材の不足である。AI人材として同社は、アルゴリズムの開発スキルを持つエンジニア、AIを活用した製品・サービスを企画する担当者、AIを活用したソフトウェアやシステムの実装スキルを持つエンジニアなどを挙げる。「少なくともAIの基礎的な知識を習得し、特性を理解し、自社の事業に生かせる人材が必要である」(同社)という。
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