[事例ニュース]
イオンリテール、データ活用基盤を「Cloud Run」で内製開発、サーバーレスコンテナでインフラ管理を不要に
2024年9月25日(水)日川 佳三(IT Leaders編集部)
イオンリテール(本社:千葉県千葉市)がデータ活用基盤の内製開発・運用に取り組んでいる。非エンジニアで結成したデータ基盤開発チームが、Google Cloudのサーバーレスコンテナ実行環境「Cloud Run」を用いて、クラウド上にデータ活用基盤を構築。サーバーレスコンテナ環境により、ITインフラ管理作業から解放され、仮想マシンによる構築と比較したアプリケーション開発のシミュレーションでは、開発工数を3分の1に、運用コストを5分の1に削減する効果を算出している。2024年9月25日、グーグル・クラウド・ジャパンの説明会にプロジェクトのキーパーソンが登壇し、取り組みの内容を説明した。
非エンジニアで結成したデータ基盤開発チーム
イオンリテールは、会員データや売上データを蓄積・分析するため、クラウド上にデータ活用基盤「データマネジメントプラットフォーム」を構築し、運用を始めている。
業務知識を持つ非エンジニアを育成して2022年5月にデータ基盤開発チームを立ち上げ、グーグル・クラウド・ジャパンの支援を得ながら内製開発で同プラットフォームを構築している。現在、チームメンバー13人の体制で、LTV(顧客生涯価値)を最大化するため、顧客ニーズの分析や需要予測などの取り組みを進めている(図1)。
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取り組みの最初のステップでは、データを可視化し、だれでもデータを分析可能な環境を構築してエンドユーザーに提供する。「Looker Studio」などのBIツール、Pythonでスクラッチ開発したダッシュボード、ダウンロードして活用可能なデータなどを用意する。
システム面では、サーバー管理に時間を取られることを避けるため、アプリケーションの動作環境として、サーバーレスコンテナ実行環境の「Cloud Run」を導入した。ミドルウェアの整備やOSのアップデートといったサーバー管理が不要な環境を整えている。また、「サービスの未使用時は課金されないこと、アクセス負荷が増えた際には自動で処理性能を拡張できること」(同社)もCloud Runのメリットとして挙げている。
工数/コスト試算でCloud Runの開発効率化の効果を測る
表1は、イオンリテールによる、生成AIのチャットボットを開発して本稼働させるまでの開発工数のシミュレーションである。従来のVM(仮想マシン)による開発と比較した、Cloud Runによる開発効率化の効果を測るために実施した。
環境構築から開発、デプロイ、運用時の性能拡張、監視までのトータルで見ると、Cloud Runによる開発は、VMによる開発と比べて、アプリケーション開発工数が3分の1に、運用コストが5分の1に減るという。このうち、環境構築フェーズに要する時間は、Cloud Runによる構築が8時間、VMによる構築が32時間と算出している。
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●Next:Cloud RunとVMの開発コスト比較
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