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【書籍発売記念】座談会:最前線から見た「新しい自動化」の未来

2025年3月18日(火)

今回、RPAを活用した自動化への先進的な取り組みを実践されている方や、AIへの知見がある方々に一堂に会していただき、「新しい自動化」の現在と未来をテーマに座談会を実施しました。それぞれの立場で新しい自動化に取り組む皆様に、生成AIが自動化にもたらす変化、そして自動化の未来について、語り合っていただきました。(本文、敬称略)
提供:一般社団法人 次世代RPA・AIコンソーシアム(NRAC)

参加者プロフィール

中外製薬株式会社 デジタルトランスフォーメーションユニット ITソリューション部長 小原 圭介氏
中外製薬は2018年からRPAの導入を推進。さまざまな障害を乗り越え、全社に自動化への取り組みを浸透させ、2023年までの累計で23万5000時間を創出しました。小原氏はITソリューション部長としてデジタル化を推進する環境づくりを支える役割を担い、現在は、生成AIの浸透に向けた取り組みを始めています。
慶應義塾大学大学院 システムデザイン・マネジメント研究科 教授 矢向 高弘氏
慶應義塾大学AIC(AI・高度プログラミングコンソーシアム)の代表・運営委員会委員長を務めています。専門は情報工学で、15年前から自動化の技術に興味を持ちRPAの研究や教育に取り組み始めました。最近は生成AIも含め、学生への教育や自身の研究活動に自動化を活用しています。

 

 

 

 

 

 

 

株式会社エクサウィザーズ チーフAIイノベーター 石山 洸氏
リクルートのAI研究所を設立し、初代所長を務めた後、AIの専門家として介護へのAI応用をはじめとするさまざまな社会課題解決に取り組んできました。直近では生成AIも取り込んだAIソリューションのプラットフォーム提供に注力しています。
一般社団法人Robo Co-op 創業者兼CEO 金 辰泰氏
デジタルで社会課題の解決に貢献したいという思いで、RPAの可能性を信じて独立し、Robo Co-opを設立。難民やシングルマザーなどの背景を持つ方々を対象にRPAや生成AIなどのデジタルスキルの教育を提供することで、多様な人材が就業機会を得て経済的自立を果たし、ありのままに輝ける世界を目指しています。

 

 

 

 

 

 

 

司会進行:一般社団法人次世代RPA・AIコンソーシアム/UiPath株式会社 梶尾 大輔氏

 

 

 

 

 

自動化やAIは土台となり、人はどう生きるかが大切になる

――生成AIとRPAのかけあわせによって、自動化はどう進化していくと思われますか?

小原:生成AIは既に業務でも使うようになっていて、最近社内ではMicrosoft 365のCopilotで議事録を作る人が増えています。そして、自動化の未来ですが、RPAも生成AIも、コモディティ化することを期待しています。そうなれば、使うこと自体がどうというよりも、より本質的な議論が深まったり、仕事の進め方自体が変わったりするのではないでしょうか。スマートフォンのように、誰もがRPAと生成AIを使える民主化を期待したいです。

矢向:教育の現場では、既に採点業務の自動化などは行われています。そこに生成AIによる分析を掛け合わせることで、個人の特性を検出して「どのようにこの学生を育てるか」という指導をよりスペシフィックにできるようになればいいと思います。
 今の大学ではカリキュラムに沿って4年間で学べることと身に付くことが決まっていますが、未来の大学は「大学に入ることで自分のスキル、特性にあわせてここまで成長できます」という多様化をはかる教育ができるといいと思います。個人のスキルをいかに伸ばすかが教育分野では一番大事ですから、目指すところはそこだと思います。

石山:最近の研究者の動向を見ていると、生成AIや自動化は環境に近いというオピニオンを持つ人が増えています。自然環境と対比して、情報環境とでもいいましょうか。
 自然環境を人間はある程度まではコントロールできても、完全にコントロールすることはできません。同様に情報環境も、人間が完全にコントロールはできない中でどう生きるかが大切になってくるのではないでしょうか。AIがどこにでも遍在している、ユビキタス性が自然な社会になるのではないかと思います。

:人間が輝くために、自動化が土台として当たり前になって、RPAとAIの違いも見分けがつかなくなると思います。そして自動化が進む中で、人が働くことが必須ではなくなり、「何のために働くのか」「なぜ経済活動が必要なのか」を問う世界になっていくと思います。
 また、文化人類学的に言うと「技術」と「技巧」という概念があって、人間は道具を使いこなす「技巧」を高めないといけない。なのに、スマートフォンという「技術」に多くの人が使われているのが現状です。自動化についてはより意識的に「技巧」を高めることをやらないと、何万人では済まない単位の人たちが一時的に仕事を失ってしまうことは間違いないでしょう。

「人間が助けて欲しいこと」を助けてくれる自動化へ

――さらにもう一段進化した自動化として、生成AIが自律的に手順を考え、RPAに実行させる、エージェンティックオートメーションが注目されています。こうした新しい自動化に対して、どのような期待をされますか。

小原:現状の自動化で課題を感じていることとして、多くのロボットが稼働するようになって、維持していくのに工数がどんどん大きくなっています。そこでエージェンティックオートメーションが、新しいUIにあった形にロボットを自動で修正してくれるとすごく助かりますね。新規のロボットを作るのも、生成AIを利用して自然言語でワークフローの作成や修正ができるようになれば、今は市民開発で対応しきれない高度なロボット開発をパートナーに外注しているコストが抑えられる可能性があります。

矢向:自律的な自動化の第一歩は、「このタイミングで必要になるはずだからやっておく」という、動き出しのタイミングを自分で判断できることかなと思っています。今までのRPAでは、業務のワークフローの中でロボットの動き始めるタイミングを人間が指示を出したり時間を指定したりする、動作開始条件を明確にするなどの方法で明示的に示しています。それを最初の1回だけは指示してもその後は言わなくてもやってくれるようになれば、人間のやりたいことの下準備という役割をしてくれるのではないかと思います。

:今の生成AIはアプリケーションを操作してタスクを実行する方向に進化しています。その先にエージェンティックオートメーションが実現するかもしれません。
 エージェンティックオートメーションは、さまざまなアプリが提供しているAIエージェントを横断的に、接着剤のようにつないでオートメーションを実現してくれるというコンセプトであるべきでしょう。SalesforceやCanvaやSlackなどさまざまなアプリケーションが、製品を使いやすくするためのAIエージェントを入れはじめようとしています。エージェンティックオートメーションはこれらのAIエージェントをつないで、例えば「営業エージェント」としてSalesforceの商談作成エージェントにターゲットと顧客情報と商談を作成させ、提案資料をCanvaのエージェントに依頼して、といったことが可能になるかもしれません。RPAは社内のシステムをつなぐ接着剤だと私は考えていますが、それがより高度になりAIエージェント同士を繋げるようになる進化がエージェンティックオートメーションだと思っています。

石山:OpenAIは2024年7月に、AGI(汎用人工知能)実現に向けた5段階のロードマップを発表しています。今の生成AIはロードマップの第2段階にあたる「推論的AI」ですが、エージェンティックオートメーションはその次の段階の「自律的AI」にあたります。現在の生成AIが生成する成果物を組み合わせて新たな価値を提供するようなエージェントがすでに登場し始めており、それがエージェンティックオートメーションに繋がっていくと感じています。

エージェンティックテクノロジーによる価値の創造と日本が元気になる未来

――エージェンティックオートメーションによって、人間の働き方や、社会はどのように変わると思いますか。

小原:製薬会社の場合、扱っているものが人の命に関わる薬なので、安全性を確認、担保するための規制のクリアに膨大なデータとさまざまな手続きが必要です。大切なことなのですが、規制をクリアするための作業を自動化することで、生産性が向上するしクオリティが上がると思います。

矢向:エージェントに頼めることが増えていくというのはとても大事で、人間がどんどん楽をできるようになっていきます。優秀なアシスタントは抽象的な指示でも自分で多くのタスクに分解して実行し、成果物を出してくれます。
 これが進むと、エージェントは「気配り」ができるようになる。それは、何でもかんでもやってくれる、ではなく、「人間がハッピーになるためにはここまでやってくれればいい」という希望や要求をエージェントが推定できるようになるということです。
 人間が得意とすることや楽しいと思っていることにはロボットは手を出さず、面倒だと思うことは先回りしてやってくれる。それを人間が選別するのではなく、エージェントが自律的に判断するようになれば、人間はやりたい仕事だけできる環境になるのではないでしょうか。

:想定されるディストピアな未来シナリオとしては、ブレインマシーンインターフェースが進化して考えるだけでコンピューターに伝わってしまうようになると、何か考えた瞬間にエージェントが先回りしていろいろなことを提案してくる、広告とサジェスチョンが溢れて止まらないようなことが起こりえます。元々人間、95%の時間はマインドレス、自動運転状態で何も考えずに行動していると言いますが、そのような状態では刺激に対して反応するだけで一生が終わってしまうかもしれない。でも私はそんな未来は嫌で、エージェントには人間の更なる問題解決と価値創出を助けて欲しい。

石山:日本企業における喫緊の課題として、インフレに対応した賃上げが求められており、そのためには生産性向上が必要になります。生成AIの活用がおおいに期待されており、特に中小企業が生成AIによってトランスフォーメーションできるか、ということが焦点となります。エージェンティックオートメーションが実現すれば、トランスフォーメーションのための人材を育成するよりは、同じことができる生成AIエージェントを中小企業に実装する方が早いということになります。
 私は、政府は、人材育成やリスキリングよりは、そのような生成AIエージェント、すなわちエージェンティックオートメーションで自律的に動くエージェントを開発して中小企業に無償提供することを次世代の経済政策とすべきだと考えます。中小企業に実装された生成AIエージェントが、自律的にAIを再生産することで投資のレバレッジは高まります。

小原:「失われた30年で日本は世界に遅れをとってしまった」とよくいいますが、新しい技術の使い方や事例がどんどん出てくれば、どんどん生産性が上がると思います。エージェンティックオートメーションで進化した自動化が、あらゆる企業にとって社員が生き生きできるテクノロジーになってくれることを期待しています。

『生成AIがもたらす未来の働き方
11の成功例から見るRPAの現在地とエージェンティックオートメーションの可能性』

著:一般社団法人 次世代RPA・AIコンソーシアム(NRAC) 監修:長谷川康一

2017年に日本に登場したRPA(Robotic Process Automation)は、多くの国内企業に採用され、RPAによる自動化は多くの定型業務の効率化に貢献してきました。特に、働き方改革を推進する大きな流れのなかで、急激なスピードで普及し、「RPA先進国」といわれるまでに普及しました。しかし、全社的に導入している企業はさほど多いわけではなく、企業活動における影響は限定的です。
一方で、2022年に公開されたChatGPT3.5は、生成AIの可能性を世界に知らしめ、国内企業においては、RPAとは異なる文脈での導入が進んでいますが、欧米企業では2020年以降、AIとRPAを中心にさまざまなデジタルテクノロジーを上手く組み合わせて、全社レベルでの自動化を発展させ、よりうまくRPAを使いこなして全社レベルの業務の最適化と生産性の向上を実現する自動化を行っています。
AIをRPAと連携させることで、AIを頭脳として、社内のデータやITアプリケーションをRPAが神経系としてつなぐことで実現する、より人間に近い、擬人化された「新しい自動化」になると考え、その実現のために設立されたのが一般社団法人次世代RPA・AIコンソーシアム(NRAC)です。
本書ではNRACの知見や現場の声をもとに、自動化が、国内での現状を踏まえ、生成AIによってどのように進化するかを考察します。

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